気象庁の異常気象分析検討会(*)はこのほど、2019年12月~2020年2月(20年冬)、日本に記録的な暖冬をもたらした大規模な大気の流れについて要因を分析、見解をまとめた。20年冬は全国的に高温となり、日本の冬平均気温偏差は+1・66℃で、冬として1898年冬(1897年12月~1898年2月)の統計開始以降最も高い記録を更新。降雪量は全国的にかなり少なく、北日本日本海側と東日本日本海側では1962年冬(1961年12月~1962年2月)の統計開始以降最も少ない記録を更新した。
発表では、20年冬は、シベリア高気圧及びアリューシャン低気圧がともに冬を通して平年よりも弱かったことから、冬型の気圧配置となる日が少なく、日本付近への寒気の流入が平均して弱くなった。このような状況をもたらした大規模な大気の流れの特徴とその要因は、▼大気上層を流れる偏西風が日本付近で北に蛇行し続けた。この偏西風(亜熱帯ジェット気流)の蛇行の一因として、熱帯域の積雲対流活動がインドネシア付近で不活発だったため、中国南部付近で亜熱帯ジェット気流が南に蛇行したことが影響したと考えられる、▼1月以降、正の北極振動が卓越し、ユーラシア大陸北部では寒帯前線ジェット気流が明瞭化するとともに、ヨーロッパからシベリア東部にかけての広い範囲で寒気の蓄積が弱まった。この影響で、日本付近への寒気の流入が弱かったものと考えられる、▼偏西風の蛇行や正の北極振動による影響に加えて、地球温暖化に伴う全球的な気温の上昇傾向が続いていること、さらに北半球中緯度域で全体的に対流圏の気温が著しく高かったことも、今回の記録的な暖冬の背景にあったと考えられる、としている。
「異常気象分析検討会」は、平成18年豪雪のような社会経済に大きな影響を与える異常気象が発生した場合に、大学・研究機関等の専門家の協力を得て、異常気象に関する最新の科学的知見に基づく分析検討を行い、その発生要因等に関する見解を迅速に公表することを目的としており、気象庁が平成19年6月から運営。気象庁では、検討会の分析結果と各種データを総合分析し、専門家の助言に基づく気象庁の見解として速やかに公表している。