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日本農民新聞 2020年3月15日号

2020年3月15日

このひと

 

農業における災害対応・防疫

 

参議院議員
農林水産大臣政務官
藤木眞也 氏

 

 東日本大震災から9年、熊本地震から4年目となる。その後も台風や集中豪雨など自然災害に見舞われ、CSF(豚熱)の発生など生産者、農業現場を苦しめる災害が続く。農政をはじめ農協など農業団体では、できる限りの対策を講じ、農業生産基盤の復旧・復興に努めてきたが、これからも発生するであろう自然災害にどのように備えと支援が必要なのか。自らも熊本県の水田・畜産経営農家であり、農協組合長も務めた藤木眞也参議院議員(農林水産大臣政務官)に聞いた。


 

復旧・復興進むも対処すべき課題も

まず地元、熊本地震から4年、今の状況は?

 復旧への取り組みは、概ね完了に近づいてきたように思われる。避難された方々の9割近くは自宅に戻っていると聞く。農地に関しても大体の復旧は終わったが、まだ、パイプラインの整備等が多少残っている。
 とはいっても、県民のシンボルである熊本城はまだ復旧途次にあり、みんなの心の片隅にモヤモヤ感を抱えているのではないか。お城本体は今年秋に一般公開できる予定だが、石垣の復旧は何十年もかかると言われている。
 全体に、一定の落ち着きは戻ってきたと思うが、被災から経営困難が続いている農業者もあり、まだまだ対処すべき課題は残っており、知事が目指す創造的復興にはまだ期間が必要だと受け止めている。

 

被災地の出荷に農協のネットワークを

農協系統の果たすべきと思われた役割は?

 地震のとき大きな問題となったのが、たとえ翌日から農作物が出荷できても、選果施設等が被害を受け出荷できないことだった。これは、私にとって大きな教訓となった。
 地震のあと他県の農協を訪問したが、「なんでうちに持ってこなかったのか」とよく言われた。「うちの選果場はその時期空いていたのだから」と。ある農協管内で災害が起きて施設等が機能しなくなったとき、この野菜ならこの時期この農協なら受入れ可能だというような、ネットワークを活かしたマッピングを日頃からつくっておく必要があるのではないか。一時期、施設の修理が終わるまでの間の出荷先が確保できることは、農家にとって大きなメリットになる。これが農協組織の強みだ。通常時でも少し振り分けることが出来るような体制を農協組織全体でつくることが大事で、全国連にもお願いしているところだ。

 

収入保険を入りやすい仕組みに

その後も自然災害が多発する中で、農政の取り組みは?

 昨年の台風15・19号でも千葉県などで停電が続き、農作物自体の被害はもとより選果施設等が稼働できなくなった状況をみると、熊本の教訓が活かされていないと感じた。
 一昨年も立て続けに自然災害が起きたが、台風によっては激甚災害指定とそうではない災害があった。農家の被害は同じでも、これによりあとの支援体制が全く違ってくる。同じ農協管内でもこっちの被災者は9割補助、こっちはなにもないというような状況が起こった。
 激甚であろうがなかろうが、一定の形を決めて助成できるよう制度をつくるべきだと訴え、園芸施設共済の補償基準等、農業共済制度の見直しに至った。
 しかし、より強力なセーフティネットである収入保険への加入はまだまだ少ない状況で、より入りやすい仕組みに改訂していくことが我々の仕事だと思っている。災害に遭われたときに少しでも復興のお手伝いができる体制を整備しておくべきだ。
 私自身、何度も災害に泣かされてきた。立ち直るまでに精神的にキツイのに、お金までキツイという状況に陥らないように、安心して農業が続けられるように、農林水産省としても頑張っていきたい。

 

ワクチン接種で一定の落ち着き

CSF(豚熱)の流行も防疫面での大きな災害といえるが。

 発生当初は、国と県と現場の繋がりが上手くいかず苦労した。特に、家畜伝染病予防法の建てつけが、国にあまり権限がなく県頼みの面が多く歯がゆい点もあった。農家の防疫管理への意識がマチマチで地域によっても差があり、家伝法そのものを変えていく必要があった。
 ちょうど私が政務官に就任したとき関東でもCSFが発生した。一大産地で感染が拡大したら大変なことになると、省内の対策本部でワクチン接種の方向を打ち出し、接種へ順次シフトしていった。当事者のみなさんには、大変なご心配ご苦労をおかけしたが、一定の落ち着きがでてきたと思っている。ASF(アフリカ豚熱)の対策は後手後手に回っている感が否めないが、見えない敵との戦いに、農水省もいろいろな面で予防原則に立った対応が必要だ。

 

自己改革へ取り組み続ける農協へ

農協組織への期待は?

 私は農協にお世話になって成長できたという気持ちで農業を営んできたし、息子たちもそういう気持ちで取り組んでいる。農協は決して百点満点ではない。だからこそ百点の農協にしたいと組合長(JAかみましき)にもなった。百点に向けて自己改革には当然取り組むべきだし、取り組み続けるべきだと思う。
 個々には弱い農家の取りまとめ役としての農協は、農家のみなさんにとって大事な組織だ。最近地方に行けば、農協は本来業務以上にたくさんの業務を担っている。そうした事実が地域のみなさんに伝わっていない部分もある。私たちもそこを上手く伝えていかなければならない。地方創生と簡単に言うが、この地方創生に、農協には大きな役割を果たしてもらわなければならない、とこの立場になって思う。
 去年の台風災害のあとも農協の全国連団体と相談し、農水省だけではやれない部分を手伝ってもらえたのは、本当にありがたかった。そうした力を農協組織はもっている。
 農家の立場からも、しっかり自己の改革を進めてもらうことを期待している。

 

家族農業は政策の1丁目1番地

これからの日本農業へ。

 今、次期の食料・農業・農村基本計画が策定の大詰めを迎えているが、このなかで、家族経営や中山間地農業をいかに維持していくか、明確に打ち出していく必要があると思う。家族経営が農業政策の一丁目一番地でなければならないという気持ちを、官僚のみなさんにも訴え続けている。
 日本は人口減少国に変わった。それ故に農業もこれまで通りや現状維持ではなく、矛先を変えていくことが大事だ。生活スタイルも風土も相当変わってきている。農業も時代の変化に合わせて変わっていかなければならない。例えば、カット野菜が急激に伸びているのはなぜか。消費世帯の台所が農業の現場にまだまだ見えていない面がある。農協も含めて情報をしっかりとって仕事をしなければ、間違った方向に頑張ってしまうとも限らない。そうした情報をしっかり農家のみなさんに繋いでいくもの私たちの役割だ。


 

〈本号の主な内容〉

■このひと
 農業における災害対応・防疫
 参議院議員
 農林水産大臣政務官
 藤木眞也 氏

■令和2年産米をめぐるJA全農の対応
 JA全農 米穀生産集荷対策部 部長 栗原竜也 氏
 JA全農 米穀部       部長 山本貞郎 氏

■岐阜県内に見る JAファーマーズ・マーケットの現状
 JAいび川 よってみーな 池田
 JAめぐみの とれった広場 関店/加工事業所
 JAぎふ おんさい広場 鷺山店

■第62回 全国家の光大会

■JA共済 JAの事務負荷軽減に向けた取り組み

■水稲除草剤の上手な使い方
 日本植物調節剤研究協会 技術部技術第一課 係長
 半田浩二 氏

■JAバンク 優績JA表彰・功労者表彰

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