全国農協観光協会(田波俊明会長)は15日、東京・千代田区の一ツ橋ホールで「第31回民俗芸能と農村生活を考える会」を開催した。今回は長野県松本市奈川地区(旧奈川村)の紹介と、明治末から伝承されている「奈川獅子」を公演した。民俗芸能愛好家など250名が来場した。
奈川地区は松本市の最西端で岐阜県と接し、周囲を2千m級の山々に囲まれた渓谷地帯で、野麦峠から流れる奈川に沿って標高1200mの地域に14の集落が点在する。9~10月にかけて1万羽以上ともいわれる「タカの渡り」が見られるほか、夏~秋に産卵のため奈川を遡上するサクラマスを観察できる魚道も設けられている。地域の特産品は、奈川地区固有品種のそば「奈川在来」、そのそば小分けにして山菜・きのこ・青菜などを入れた汁で温めて食べる「とうじそば」、信州伝統野菜に指定されている紅色の「保平蕪」、標高が高い地域でなければ実がならない「花豆」などがあり、古くから栽培する「えごま」は健康に良い油や調味料として商品化を行っている。
奈川地域は、野麦街道(鰤街道)を通じて富山・飛騨と関わりがあり、奈川獅子も富山出身の横井市蔵氏により明治44年に当地に伝わった。以来毎年、村の田畑を荒らす獅子と、それを退治する狩人の格闘の物語を激しい動きで演じる舞が、氏神様の天宮大明神の祭礼で奉納されている。地域の寄合渡町会全体が保存会になり活動してきたが、子供の減少により他町会からの参加、小中学校の女の子の参加と対象を広げ継承を行っている。
公演は獅子舞と獅子頭を被らない手踊りの2つが行われ、「ぎおんばやし」「きよもり」「よしざき」「ししごろし」と舞は徐々に激しさを増し、討ち取った獅子が息を吹き返す「きりかえし」、とどめを刺す「なぎなた」と続く勇壮な演舞に会場から大きな拍手が送られた。