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竹中工務店、千葉大、東京理科大が宇宙空間での「食」の基礎研究を実施

2019年12月11日

低圧環境下での袋型培養技術による植物の生物状態を確認

 竹中工務店、千葉大、東京理科大は、宇宙空間での長期滞在に必要な「食」の要素技術に関する基礎研究〔第1弾〕の研究結果を公表、「低圧環境下における袋型培養技術を活用した宇宙農場システムの基礎的試験を行い、その成立性を確認した」ことを明らかにした。

 将来の宇宙空間で人間が長期滞在するための「衣・食・住」技術のうち、「食」に焦点を当て、宇宙空間での自給自足を実現することを目的としたもの。国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)宇宙探査イノベーションハブに採択された「袋型培養技術を活用した病害虫フリーでかつ緊急時バックアップも可能な農場システムの研究」として、JAXA、キリンホールディングス、千葉大、東京理科大スペース・コロニー研究センターと産学連携で実施した。

 共同研究では、ビタミンC源としてのレタスの植物体、炭水化物源となるジャガイモの種イモ、タンパク質源となるダイズ苗を試験作物の対象として実証的確認を行った。これらの作物を生産するために、キリンホールディングスが開発した、小規模な密閉袋の中で植物体を増殖させることができる袋型培養技術を活用した。また、宇宙環境で地球と同等の気圧にするための加圧による様々な負荷を極力低減するため、低圧環境下での生育可能性の実験を千葉大の低圧植物育成チャンバーで実施、実験後には、栄養成分評価、物質収支評価(目標とする栄養成分を生産するために必要な培養液成分量を分析評価)、低圧栽培の成立性などの基礎的確認を行った。宇宙農場システムに袋型培養技術を組み込むことで、居住フェーズに合わせた小ロット栽培とウイルスフリー苗供給の両機能を兼ね備える安心な農場システム構築の可能性を確認できたという。栽培設備において常圧までの加圧が不要となることで、宇宙に構築する施設の構造体を簡素化でき、建設資材の低減が見込まれる。

 研究ではさらに、これらの実験結果を用いて、少人数が生活するために必要な栄養成分を生産できる農場システムの規模を試算し、月面農場モデルのイメージを作成。農場は近年発見された溶岩洞の利用を想定して月面内部に設置、低圧区には袋型培養を利用した栽培エリア、常圧区には滞在者の居住エリアを想定してる。

 1980年頃から、アメリカ航空宇宙局(NASA)等が作物栽培の可能性に関する様々な研究を行った結果、国際宇宙ステーションでの実証実験により、宇宙空間でレタス等を栽培できることが確認されている。2025年頃に建造される「月軌道Gateway計画」が公式に発表される中、日本においても、近年JAXAに月面農場ワーキンググループを設置、幅広い専門分野の有識者が招集され研究が進められている。

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