この9月下旬にニューヨークの国連本部で開かれた気候変動問題に関するサミットは「気候行動サミット」と称する。国連事務総長は「美しい演説ではなく具体的行動を」と呼び掛けており、その思いをもろに出した名称が掲げられた。
これに日本からは小泉環境大臣が出席したが、22日の関連会合に出席した際、記者団に「スピード感を持って、できることは全部やる。日本は本気だということを伝えるべく動きたい」と抱負を述べ、また記者会見では「政治には非常に多くの問題があり、時には退屈だ。気候変動のような大きな問題は楽しく、クールで、セクシーに取り組むべきだ」と語ったことが報じられている。国連事務総長の思いとは真逆の、魂が入っていない抽象的発言を羅列するばかりで、品がないだけでなくまったくの意味不明。失笑を買うのも当然であり、正直、こちらが恥ずかしくて仕方がない。
そんな中で姿勢を正されることになったのが、23日のサミット冒頭に登場したグレタ・トゥーンベリさんのスピーチだ。グレタさんはスウェーデンの16歳の女子高校生で、気候変動を加速させた大人たちとの世代間の不公正をただすために昨年夏に一人で始めた「学校ストライキ」は、ソーシャルメディア等をとおして世界中に広がった。世界で一斉展開した先の9月20日の学校ストライキには400万人以上が参加したと伝えられている。
そのグレタさんは、新聞報道によれば、怒りに声を震わせて「人々は困窮し、死にひんし、生態系は崩壊している。それでもあなたたちはお金と、永続的な経済成長という『おとぎ話』を語っている。よくもそんなことが・・・」、続いて「あなたたちは空虚な言葉で私の夢を奪った」と語り、そして「世界は立ち上がった。あなたたちが望もうと、望むまいと変化は訪れる」と述べてスピーチを締めくくった。
グレタさんのスピーチは「会場を沈黙させた」「グレタさんの訴えはサミットに出席する首脳らに鋭く突き刺さった」とある。新聞は「グレタさんが求めるのは、気候変動対策の国際的枠組み『パリ協定』が掲げる目標を達成するため、世界中の国が根本的な政策転換を進めることだ。産業革命前からの地球の平均気温の上昇幅を1・5度に抑える協定の努力目標を達成するには、各国が掲げる温室効果ガスの削減目標を積み重ねても到底及ばないことが分かっているためだ」と解説する。
グレタさんの発言は国の問題でもあるが、地球に生きて活動する一人一人に向けられている。気候変動、温室効果ガスは地球が抱える構造問題の象徴であり、将来世代にツケを残さない社会構造、生き方が切実に求められていると理解すべきだ。我々は何にどう取り組むか。その柱こそが持続可能で環境にやさしい農業への取組であり、食料の安定供給の確保ではないか。未来のためにも、持続的で生物多様性に富み、景観にすぐれ、豊かな実りをもたらしてくれる農業を地域農業として振興・展開していく取組みこそが最大課題となる。
(農的社会デザイン研究所代表)
日本農民新聞 2019年10月5日号掲載