日本農業の発展と農業経営の安定、農村・地域振興、安心・安全な食料の安定供給の視点にこだわった報道を追求します。

日本農民新聞 2019年9月5日号

2019年9月13日

全国農業青年クラブ連絡協議会(4Hクラブ=全協) 会長 首藤元嘉 氏このひと

 

4Hクラブの活動と日本農業のこれから

 

全国農業青年クラブ連絡協議会(4Hクラブ=全協)
会長
首藤元嘉 氏

 

 全国農業青年クラブ連絡協議会(4Hクラブ=全協)の7月2日の通常総会で首藤元嘉会長、金子健斗・宮本健一副会長の新体制が発足した。首藤新会長に、4Hクラブの活動のポイントと、自らの経営を踏まえてのこれからの日本農業への思いを聞いた。


 

農業のど真ん中にいるプレーヤー

4Hクラブとの出会いとこれまでの活動の思い出は?

 平成24年就農した時に、同時期に就農した仲間から地元に青年農業者の集まりがあると聞いて入会した。そこからあれよあれよという間に、県の役員になり全協の役員になって、足掛け7年が過ぎた。
 県会長を務めていた平成29年に、各県持ち回りで毎年開催される「全国農業青年交換大会」が愛媛県で開催されることになり、長期間準備に奔走した。そのときの仲間とは、今も付き合いを続けており貴重な財産となっている。
 全協では理事1年、副会長1年を務めたが、「青年農業者は農業のど真ん中にいるプレーヤー、農業の未来の主役は自分達だ」と痛烈に思うようになった。これまで地方にいて、農政や最新の農業技術は自分には縁遠い世界に感じていた。どこか自分の知らない世界でつくられ降りてくるものに思われた。ところが全国段階にきて、これらは自分達のためにつくられていることがよくわかるようになった。同時にそういう施策や技術をつくっている行政の方々、メーカーの方々が我々青年農業者にかける強い期待を感じるようになった。

 

「清流無間断」不断の努力を

会長就任の抱負は?

 4Hクラブの今年度の活動テーマは「清流無間断(清流間断なし) ~活動するものは常に新鮮なり~」。「清流無間断、碧樹不曾凋(せいりゅうかんだんなく、へきじゅかつてしぼまず)」という禅語から引用した。清らかな水は絶え間なく流れ、青々とした木の緑は衰えることない。活動するものは常に新鮮である。清らかな水も木々の緑も日々の努力の上に成り立っている。不断の努力修業が大切であることを忘れてはならない。
 青年農業者の減少伴って組織の弱体化が懸念されるなか、もう一度結束力を高め活性化していきたい。近年では他団体や企業など外部との連携も広がりつつあるが、4Hクラブの何よりの強みであり魅力である「碧樹のごとく青々としたフレッシュさ」を内外に伝えていく。

 

4Hクラブの今年度の具体的な取組みは?

 全協に全県が加盟できるよう4Hクラブ全体で連携を強化していきたい。そのためにも、根幹であるプロジェクト活動をより一層推進していく。プロジェクト活動は、経営課題や生産技術向上、農業を取り巻く地域課題の解決に向けた取組みで、毎年「全国青年農業者会議」で発表会を行っている。発表することで同じような課題をもっている仲間の解決にもつながり、日本の農業技術を高めてきた歴史をもつと自負している。この活動を見直し充実させることで、4Hクラブに加入しているメリットを実感してもらえるようにしたい。
 全協の業務の見える化やWebツールを使って道府県連会長の意見を広く聴くことの出来る仕組みもつくっていきたい。
 ホームページやフェイスブックなどを活用した広報を推進するとともに、農水省との意見交換や日本農業法人協会等との連携、全農の生産資材コスト低減に向けた資材事業研究会への参加など、関係機関との連携強化にも取り組んでいく。4Hクラブは多くの企業から協賛をいただいている。今後は企業のみなさんとタッグを組んだ活動も検討していきたい。企業が開発した技術等を我々のプロジェクト活動に組み込めたならば、より活動の幅が広がっていくのではないか。

 

しっかりした国の農業戦略を

日本の農業、農政に感じることは?

 今の日本の農業は、種・農薬・肥料の3大資材が全部外国から入っている。カロリー自給率は過去最低の37%に落ちたが、その数字すら疑問に思う。
 化成肥料原料の大半は輸入で、有機肥料も外国産の飼料で育った家畜の糞尿が原料では輸入由来の資材と言っても言い過ぎではない。
 種も種苗法の改正で育成権が認められた品種の自家増殖が原則禁止となった。日本で研究開発された優良品種の海外流出を防ぐことが背景にあるだろうが、その範囲が在来種や固定種にまで自家採種禁止が及ぶのではないかと懸念している。私は全圃場農薬・肥料不使用の自然栽培で主に米と大豆を作っているが、自家採種で種子を繋いでいる。穀物は種子そのものであり、そこだけは守ってもらいたい。
 さらに、TPPやFTA等の自由貿易協定で、遺伝子組換え作物(GMO)の輸入が進むことを心配している。アメリカでは穀物を“戦略物資”と言っている。日本も大豆を戦略的作物と言っているが、もう少ししっかりした国の戦略が必要ではないか。

 

自然栽培面積拡大で地域の未来に貢献

自身の経営のスタンスを。

 愛媛県西条市で米、大豆を中心に5~6㏊自然栽培で経営している。市のなかで自然栽培の耕作面積では一番大きい。ブランド名は「土と暮らす」。この6月「(株)維里(いさと)」として法人化した。働いてくれる人に社会保障をつけるためと、地域の担い手としての覚悟をかたちにするためが、その背景にあった。集落で40代の農家は自分ひとり。農地を守っていくためにも経営が継続できる体制をつくっておきたかった。
 西条市は豊かな水源に恵まれているが、最近農業の過剰施肥による地下水の汚染が進んでいる。このままでは日本の地下水が飲料水として使えなくなることが懸念されている。自然栽培を普及することはこの問題の解決につながる。土地を増やし自然栽培面積を拡大することで、地域の未来に貢献したい。

 

活動の相乗作用で農業を元気に

4Hの仲間へのメッセージを。

 4Hの活動が相乗作用になって、日本の農業の未来をより明るく強く元気にしていきたい。4Hクラブの盛り上がりが、日本の農業の盛り上がりとなるよう、しっかり会長職を務めていきたい。


 

〈本号の主な内容〉

■このひと 4Hクラブの活動と日本農業これから
 全国農業青年クラブ連絡協議会
(4Hクラブ=全協)会長
 首藤元嘉 氏

■JA全農におけるIT活用の現状と今後
 JA全農 IT推進部部 小畑俊哉 部長

■JA共済におけるIT活用の現状と今後
 JA共済連 IT企画部 村井雄一 部長

■JAバンクにおけるIT活用の現状と今後
 農林中央金庫 IT統括部 半場雄二 部長

蔦谷栄一の異見私見「おれたちの直売所」

【第2部】実りの秋を迎えて
 米の生産・集荷・検査・保管・流通

■令和元年産米の検査・保管にあたって
 JA全農 米穀生産集荷対策部 栗原竜也 部長

■令和元年度 米のカントリーエレベーター
 品質事故防止強化月間=8月1日~10月31日

■秋の農作業安全確認運動=9~10月

■JA全農が取り組む
 業務用米の契約栽培、多収米の提案

■令和元年産米の検査にあたって
 農林水産省 政策統括官付穀物課 米麦流通加工対策室
 上原健一 室長

■令和元年産米に対する検査への期待
 全国米穀販売事業共済協同組合
 業務部 加瀬栄 部長

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