日本農業の発展と農業経営の安定、農村・地域振興、安心・安全な食料の安定供給の視点にこだわった報道を追求します。

日本農民新聞 2026年9月25日号

2026年9月25日

〈本号の主な内容〉

■第2次高市改造内閣の新農林水産大臣に
 簗和生 氏

■このひと
 今後の農政の取組み方向
 農林水産省
 農林水産事務次官
 長井俊彦 氏

■今年2026年は女性農業従事者の国際年

 農林水産省 大臣官房審議官(兼経営局) 岩間浩 氏

 ㈱農林中金総合研究所 常務取締役 重頭ユカリ 氏

 JA全国女性組織協議会 会長 西川久美 氏

 東京農業大学 国際食料情報学部 教授 原珠里 氏

■行友弥の食農再論「給食の『ありよう』を考える」


このひと

 

 

今後の農政の取組み方向

 

 

農林水産省
農林水産事務次官
長井俊彦 氏

 

 新たな食料・農業・農村基本計画の実施2年目に入り、食料安全保障の強化に向けて9年度からは新たな水田政策もスタートする。流動する内外情勢の中で、農林水産行政はどのように推進されるのか。8月に農林水産事務次官に就任した長井俊彦氏に、取組みの背景とポイントを聞いた。

着実に政策実行 働きやすい環境づくりへ

■まずは就任の抱負から。

 農林水産省としては2024年に改正された食料・農業・農村基本法に基づき昨年策定した基本計画を踏まえ、政策を展開しているところであり、それを着実に実行する。大事なことは、これまでの施策を受け継ぎつつ発展させ、成果を一つ一つ積み上げていくことだ。職員が働きやすい環境づくりに努め、省全体が組織として最大限に機能を発揮できるよう、特に若い職員がやりがいを持って働けるよう、力を尽くしたい。

■その基本計画の進捗状況と課題については。

 今回の基本計画ではKPIを策定し、毎年検証していくことになっている。KPIの達成に向けては、輸出など意欲的な目標を掲げた中でも、一定程度進捗しているものもあれば、食料自給率など進捗が難しい課題もある。品目別の生産額や生産性については、その年の天候や景気の変動等の影響もある。KPI上の課題に関しては、しっかりと検証したうえで、来年に向けて改めて達成すべく取り組んでいくことになる。

 そういう意味で、省内の各担当が毎年、基本計画のKPIに立ち返りながら政策の推進に努めるのは、これまでにないことだ。KPIが進んでいない場合も、どうすべきかを制度面、予算面など様々な観点から考え、変えるべきものは変えていく。「猫の目行政」といった批判を浴びないよう、きちんと説明責任を果たすことが重要だと考えている。

食料安全保障へ農地を集約 生産システム維持が大前提

■現下の課題認識は。

 熊本地震など相次ぐ自然災害による被害への対応等、緊急性の高い課題については、迅速的確に取り組む。その上で、何といっても令和9年度からの水田政策の見直しが最重要課題だ。予算編成のあり方も変わってきている中で、コメの問題には引き続ききめ細かな対処が必要になる。

 また、水産に関しては来年、新たな基本計画を策定すべく作業を進める。林業については今年6月に策定した新たな森林・林業基本計画に基づき、政策を着実に遂行していく。■食料安全保障にむけた一番のポイントは。

 まずは国内生産をしっかりと維持・拡大していくことだ。農地と担い手の確保が肝要になる。農地がなければ農作物を生産しようもない。そのためには、使いやすく、生産性が上がるように、農地の集約を一層進める必要がある。集約が進んでいけば、企業等の外部参入も含め後継の担い手は出てくるはずだ。農地を守り、生産システムをきちんと維持していくことが大前提となる。また、資材に関しても、代替物資を含め国内で調達できるものはきちんと確保しなければならない。

新たな予算編成方針に対応 これからが本番

■来年度の予算獲得に向けては。

 他省庁もそうだが、従来は政策的経費に関し、補正予算で相当多くの手当てを行っており、当初予算は義務的な経費が大きな部分を占めていた。これが来年度は予算要求の考え方が変わり、政策的経費についても当初予算で措置する新たな編成方針が示された。

 これまで、ともすれば補正頼みの予算措置になっていたところを、当初予算の折衝段階から政策の実行に要する予算がきちんと反映されるようにしなければならない。概算要求の段階で政策的経費を含む全体像を見通すのはなかなか難しいが、水田政策、農業構造転換集中対策、食料品の消費税減税への対応など概算決定の段階ではしっかり措置していきたい。

 概算要求は提出したが、「事項要求」など12月までの当初予算案の編成過程で、財務省に対し従来以上にきちんと説明していく。その意味では、予算獲得に向けてこれからが本番であり、いま本格的なスタートを切ったところだ。

構造転換へ現場の合意形成を 「地域計画」ブラッシュアップを

■農業構造転換集中対策を進めているが。

 改正基本法の理念に基づき、初動5年間で農業の構造転換を集中的に推し進めている。カントリーエレベーターや選果場、食肉センターなど共同利用施設やため池・水利施設などの老朽化の問題がある。これに対処するため予算手当てもしているところだが、大事なのは、現場の関係者が皆で話し合いをし、地域の将来の見通しを共有したうえで進めることだ。事業の実施に時間を要するので、前提となる合意形成が早い時期に行われることが望ましい。

 地域計画(地域農業経営基盤強化促進計画)もそれらの基盤となるものであり、各地で策定されたものをブラッシュアップしてほしい。現状を踏まえて、将来どうしていくのかという見直し作業を、繰り返し重ねることが大事になる。

地域のインフラ・組織を持つ JAの役割がカギ

■JAグループへの期待を。

 JAは、農家はもちろん、様々な地域インフラに関わっている。例えば地域計画の策定も、共同利用施設の整備も、JAが中心になって動いていただかないと現実には進まない。作物ごとの生産部会といった組織を備えているJAが核にならなければ、基盤整備や施設の再編、人手の確保など何ごとも推進するのは難しい。

 また、地域振興の面で、農業者が商工会など他の産業に従事する住民に関わろうとする際、間に入ってつなぐ役割も含めて、JAグループには大いに期待している。

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