日本農業の発展と農業経営の安定、農村・地域振興、安心・安全な食料の安定供給の視点にこだわった報道を追求します。

日本農民新聞 2026年8月25日号

2026年8月25日

〈本号の主な内容〉

■このひと
 JA観光事業の新たな取組み
 ㈱農協観光 代表取締役会長
 (一社)全国農協観光協会 代表理事会長
 村本佳宜 氏

■JA全農 第50回通常総代会開く
 新会長に吉見氏、新副会長に篠原・麻生両氏
 JA全農 令和7年度事業

■〈行友弥の食農再論〉小さな声に耳をすませて


このひと

 

JA観光事業の新たな取組み

 

㈱農協観光 代表取締役会長
(一社)全国農協観光協会 代表理事会長
村本佳宜 氏

 

 

 ㈱農協観光の代表取締役会長、(一社)全国農協観光協会の代表理事会長に6月、村本佳宜・JA奈良中央会代表理事会長が選任された。物価高騰や円安など旅行業界を取り巻く環境が揺れ動く中で、JAグループの観光事業にはどのような役割が求められるのか。新たな取組みと、事業にかける思いについて村本氏に聞いた。

 

地域で必要とされる存在に 熊本地震の被害対応へ全力

■7月28日に発生した最大震度7の令和8年熊本地震では、大きな被害が出た。

 10年前の熊本地震の際、私は地元JAから支援隊長として現地に派遣された。今回、被害の大きかった宇城市にあるJA熊本経済連の選果場で、メロンの箱詰めやプチトマトの選別に従事した。宿泊場所の山鹿市からバスで約1時間かかる場所で、バスの車窓から被災家屋が活断層上に連なっている様子を、まざまざと見た。今回も1日も早い復旧・復興を願うばかりだ。被害に応じた対処を、農協観光だけでなくJAグループ全体で総力を挙げて行わなければならない。

■農協観光会長に就任しての抱負を。

 JAの総合事業において、観光事業は各事業を結び付けるきっかけになるものだと思う。JA観光事業の目的も地域の活性化、第1次産業の振興にある。当社は地域社会から真に必要とされる存在となるべく、社員一丸となって取組んでまいりたい。

 旅行というのは不思議なもので、一緒に旅をすると相手の人間性がよくわかることがある。これは仕事の仲間と行く場合でも、観光に出かけた先でたまたま出会った人の場合でも言える。旅先で知り合ったのがきっかけとなり、友達になることもある。

 そういう意味で、観光は人と人を結び付ける事業でもある。これはJAの組合員の間でも言えることだが、準組合員を含むJAのファンづくりにもつながる考え方だと思う。

「農」をキーワードに体験や食育、農福連携、労働力応援を推進

■具体的な取組みは。

 引き続き、JA活動支援事業をゆるぎない基軸としつつ、「農」をキーワードに、農業・農村体験や食育等の教育旅行をはじめとする地域共創事業など、第1次産業と地域の活性化、課題解決に貢献する取組みに力を入れていく。

 農福連携の「アグリンピア事業®」は、大きな柱の一つとして重点的に推進していく。事業理念である「国内農業の発展と共生社会の実現」に向けて、強固な事業基盤を作るため、障がい者・サポーターのリクルート、人財の確保・育成、JAグループと連携した農福ポートの設置を進め、参画企業への提案を強化する。

 一方、JA援農支援隊(援農ボランティア)の実施や、大規模就農相談会の開催を含め、労働力応援に関連する公募事業案件の獲得にも注力していく。

コロナ禍越え観光の質向上へ インバウンドにも体験等提案

■農協観光はコロナ下での苦境から、業績回復への途上にある。

 私の地元の奈良県でもコロナ禍以降、団体旅行が激減し、観光事業の売り上げは大きく減少した。当社全体ではコロナ前約680億円あった売り上げが、今は約320億円だ。しかし、約680億円の売り上げがあった当時よりも事業の効率が良くなり、利益はむしろ今のほうが増えている。これは前任者をはじめ役員・社員が厳しい経営環境の中で身を削る思いで費用削減や業務の効率化に取組み、経営基盤を強化してきた成果である。

 旅行業界全体として量(旅行者数)から質(消費額や満足度)への転換が進む中で、当社も「観光の質的向上」や「高付加価値化」に積極的に取組んでいる。今後、6億円余りの累積赤字を早期に解消し、配当再開に向け、いっそうの事業基盤強化に努めていく。

■円安によるインバウンドへの対応は。

 外国人旅行者に日本を、より深く知ってもらう良いきっかけになると考えている。日本に関心を持って訪れる旅行者に対し、日本各地の魅力ある地域資源である「農」「食」「地域文化」に触れる体験を提案したい。ツアーを通じて日本の農業、地域、食の素晴らしさを発信するとともに、農泊、農業視察、体験等を目的とする団体旅行の獲得により、増収を図りたい。

 一方、日本からの海外旅行は、円安による価格上昇で、アジアなど近距離方面への需要が中心になっているが、ハワイや欧米などへの遠距離需要も、コスト面での制約を受けつつ、回復基調にある。「価格」から「質の高い体験」へと移行する旅行者の意識を的確につかむことが重要だ。

■全国農協観光協会も、援農・体験交流や「日本農業検定」など多彩な事業を手がけている。

 検定試験の受検者数はもっと増やしていきたい。近年はJA職員の中でも農業経験を持たない人の割合が増えている。もちろん、検定を受けるだけで農業が理解できるわけではないが、検定では農業全般から環境、食、栽培などの基礎的な知識が出題範囲となる。JA職員はもちろん、仕事や趣味、家庭菜園などを通して農業に関心を持つ方たちの受検を促す取組みを考えたい。

「農業の価値」前面に事業展開 国際園芸博を機に積極提案へ

■協同組合としての思いを。

 昨年あった国際協同組合年(IYC)が、今後は10年ごとに設定されることになるなど、世界的に協同組合の重要性が見直されている。JAグループも生協や森林組合などとの協同組合間連携に力を入れている。そうした中で「農」を基軸とした協同組合であるJAグループは、観光事業もそうだが、やはり農業の価値を前面に打ち出して事業活動を展開することが大切だと思う。

■来年3月に開幕する国際園芸博覧会に向けては。

 横浜市で開催される2027年国際園芸博覧会(GREEN×EXPO2027)には、親和性の高いJAグループとして参加・協力していく。当社としても「園芸博(横浜)から地域へ!」をスローガンとした交流人口の拡大や、JAグループパビリオンでのマルシェ運営に加え、視察旅行の提案などを積極的に進め、全国で5万名の販売目標を達成すべく取組む考えだ。

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