2月8日に投開票された衆議院選挙は、筆者にとってもまったく予想外の結果となった。自民党だけで316議席を獲得、維新を含めると352となり、定員465の75.7%を与党が占める圧倒的勝利となった。自民党の議席増加が118。中道の議席減少が同じ118。旧公明党は1議席の増であったことから、旧立憲の惨敗であったとしか言いようがない。サナエブームが大きかったと同時に、立憲が公明と組んだ中道改革連合に対する国民の違和感が同じほどに大きかったのかもしれない。
今回選挙に対する筆者の思い入れにはきわめて強いものがあった。2024年6月に改正食料・農業・農村基本法が成立し、食料安全保障を柱に改正が図られたが、担い手と農地が急減し、日本農業の崩壊を阻止していくための必要条件である所得補償を欠く。規模拡大と生産性向上に偏重し、所得補償に反対する自民党農政の転換を図っていくためには、もはや与野党を逆転させるしかない、という判断の下、これまで政治とは一定の距離を置いてきたが、野党の後押しに転換。24年10月の衆議院選挙は自民・公明政権の継続は阻止できなかったものの、与野党逆転を実現。25年7月の参議院選挙では、野党の大勝により非改選も含めて与野党が逆転。今回の衆議院選挙での政権交代を期していた。25年3月には食料・農業・農村基本計画の策定にともなう国会での議論を踏まえて、衆参両院農林水産委員会で与野党の全会一致で基本計画に関する決議を採択。ここでは水田政策の見直しの柱の一つとして「納税者の理解を図りつつ直接支払制度を設計」が明記されるなど、所得補償の実現に向けて着実に歩をすすめてきた。ところが、令和の米騒動が発生し、米価だけでなく、生産実態に対する国民の理解も進みつつあるように感じてきたものの、結局は日本農業の維持や所得補償は選挙での争点にもならなかった。
今回選挙での自民党圧勝についての諸々の論評等が行われているが、若い層の高い高市支持を見ると、絶対平和の理念に立つ日本国憲法をベースにした戦後リベラリズムの時代は終わった、という感慨を持つ。そしてトランプ政権によるアメリカ・ファーストによる世界秩序の破壊と、高市政権のトランプ政権への一体化の流れを踏まえると、アメリカからの農産物輸入圧力は強まることはあっても、弱まることはないのではないか。高市首相が食料自給率100%を目指すと言い、大規模化・生産性向上やスマート農業をいくら強調しても、日本農業は崩壊に向けて加速度を増していくことが危惧される。
今後、世界は戦前と同様に、アメリカや中国の両大国を中心にグループ化しながら不安定の度合いを増し、軍事的リスクを高めていくことは避けられず、一段と食料安全保障が重要性を増すことは必至であろう。ここまで日本農業の弱体化を招いてきた自民党農政にもはや期待することはできないとすれば、あらためて小農・家族経営との連携や交流、市民農園や体験農園、さらには援農も含めて、国民自ら農村・農家との関係づくりと、少しでも自給し、その度合いを高めていくことが残された最後の途ではないか。国民皆農を目指し、市民・消費者の意識改革と行動変容をリードしていくことが大課題となりそうだ。
(農的社会デザイン研究所代表)
日本農民新聞 2026年3月5日号掲載


