先日のバレンタインデーでチョコレートを渡した女性、受け取った男性はどれだけいるだろう。いわゆる義理チョコを含め、女性が男性に贈る習慣はすたれつつあるようだ。ある企業の調査では、バレンタインデーで誰かにチョコを渡す予定が「ない」とする女性は年々増え、昨年は4割を超えたという。
原料価格の高騰もチョコ離れの一因だろう。カカオ豆の先物取引価格は2023年秋から急騰し、24年末にはニューヨーク市場で1トンあたり1万2000ドルを超える史上最高値をつけた。その後は下落に転じたが、最近も以前の数倍の水準が続いている。
日本の菓子メーカーは関連商品の値上げを余儀なくされているが、カカオ由来の原料が少ない「準チョコレート」に切り替えるなど工夫している。最近はヒマワリの種やゴボウなどを使った「代替チョコ」も登場しているという。食料自給率の向上や長距離輸送に伴う温室効果ガス排出の削減につながるかも知れない。
だが、値上がりの背景にも目を向けたい。日本が輸入するカカオ豆の8割近くはガーナ産で、隣国コートジボワールと合わせた西アフリカが世界的にも主産地になっている。この地域が地球温暖化による異常気象と病害虫に見舞われたことが「カカオ・ショック」の主因だ。「50年にはチョコが食べられなくなる」と予測する専門家もいる。
児童労働の根絶に取り組む特定非営利活動法人ACE(東京)によると、ガーナでは違法な金採掘の被害も広がっている。カカオの木が無断で伐採され、金の抽出に使う水銀などによる健康被害や農地汚染も深刻だ。ACEはカカオ農場の児童労働をなくす活動に取り組んできたが、金の採掘現場にも子どもたちが動員されているという。
違法採掘の横行は米国発の「トランプ・ショック」で世界経済が混乱し、安全資産として金の需要が高まっていることも背景だ。違法採掘に直接手を染めるのは失業した若者など貧しい人々だが、背後に外国資本の存在があるとも言われている。
甘いチョコレートと輝く金。値上がりを嘆くだけでなく、その裏にある苦く暗い現実も知っておく必要があるだろう。
(飯舘村地域おこし協力隊/農中総研・客員研究員)
日本農民新聞 2026年2月25日号掲載


