日本農業の発展と農業経営の安定、農村・地域振興、安心・安全な食料の安定供給の視点にこだわった報道を追求します。

〈蔦谷栄一の異見私見〉直接支払制度の導入と国民運動の展開

2026年2月5日

 「物価高対策が最優先で解散は考えていない」と繰り返していた高市首相が、1月19日の記者会見で、23日召集の通常国会冒頭で衆院を解散し、27日に衆院選を公示、2月8日を投開票日とすることを表明した。当初予算を年度内に成立させたうえで、解散・総選挙に打って出るとの予想が外れ、これはこれはと思っているところに今度は立憲民主党と公明党による新党の結成。先の自民・公明の連立政権が自民・維新の連立政権に組み替えられ、自民・維新vs中道改革連合の構図による総選挙と情勢変化はめまぐるしい。

 政界の再編話はともかくとして、高市政権発足以降、急激に進行する国債価格の下落と長期金利の上昇、そして円安の進行がすさまじい。〝積極財政〟で日本の財政が破綻に向かいつつあるとの懸念が、これら相場を現出させている。この財政問題を踏まえた経済対策の構築と、この5年で基幹的農業従事者が25%も減少したことに象徴される、崖っぷちに追い込まれた日本農業の再生の二つが、目下、日本が直面する喫緊かつ最大の課題である。食料の安全保障をいかにして確保していくのか、米政策の見直しにとどまらず、日本農業全体への早急なるテコ入れが求められており、まさに待ったなしの状況だ。

 総選挙に向けて各政党は基本政策、公約を発表しつつあるが、ここでは農政に絞って筆者が考えているところを、短期対策、中長期対策、そして運動展開の三つに分けて述べておきたい。

 短期での対策として急がれるのが直接支払制度の導入である。農家が一定以上の努力を払えば農業経営の維持が可能な条件づくりは待ったなしだ。自由貿易時代に対処していくために、生産性の向上と並行して直接支払制度に農村政策・社会政策も動員して日本農業を守っていくことを目指して、1999年に食料・農業・農村基本法を成立させた。しかしながら規模拡大と生産性向上に偏重し、本格的な直接支払制度の導入を回避してきた。このツケが今日の担い手および農地の急減であり食料自給率の低迷だ。直接支払制度は、耕地面積が狭く起伏が多い日本農業にとって、国際的な価格競争の中で日本農業を維持していくための必須の条件である。〝失われた25年〟からの脱却だ。

 二つ目が中長期対策としての都市から農村への人口還流による担い手の確保である。都市化がすすむ中、農村で担い手を確保していくことはかなり困難となっている。関係人口の増大、二地域居住の促進等により田園回帰を促し、そうした中から新たな担い手を育成・確保していくしかなく、そのためにも農村が活気と魅力を取り戻していくことが不可欠である。都市住民が体験農園等やコミュニティー農業等で農に参画し、また農業スキルを身に付けていく仕組み作りが必要で、その条件整備として都市農地の保全が必須だ。

 三つ目は、上の二つを実現していくにあたっての最大関門は財務省であり、国民運動として働きかけ、盛り上げていくことなくして山を動かすことは不可能だ。その国民運動をJAグループが先鞭をつけて展開していくことを期待する。JAに参加するたくさんの准組合員の食料・農業・農村について理解獲得の働きかけを出発点に、都市部のJAは准組合員の農への参画にも注力しつつ、国民運動を拡げていこうではないか。(1月23日現在)

(農的社会デザイン研究所代表)

日本農民新聞 2026年2月5日号掲載

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