一般市民を対象に、「農業振興と緑地を含めた都市農地保全の取組や、都市農業経営の実情、市民の農への参画、地産地消の推進、持続可能で循環型の社会づくり、地元の歴史等を学ぶ」連続講座である「農あるまちづくり講座」の実施・展開に取組んでいる。開催地を特定しての、月2回、半年間にわたる連続講座だ。講師は地元で活躍している農業者や団体、自治体、JA等の登壇を基本にしてきた。その第1回を2022年9月に西東京市でスタートさせ、以降、世田谷区、所沢市、足立区、日野市の順で開催し、この10月には府中市で開講した。府中市の講座で6回目となり、いずれも定員20名で募集をしてきたが、これまでの受講者を累計すると144名になり、回によってデコボコがあり、定員オーバーで申込みをお断りしたものもあるが、平均すると定員を2割以上も上回る参加者を得て実施してきたことになる。いずれの講座も活発な質疑応答が展開されるなど、熱気にあふれ、都市農業や農ある暮らしに対する市民の関心の高さを実感させられている。
本講座は労働者協同組合(ワーカーズコープ)連合会(事務局はその地域活動を担っている日本社会連帯機構)と川崎平右衛門顕彰会が中心となって立ち上げた「都市農業研究会」が主催する形で開始したが、所沢市、日野市、そして府中市では、都市農業研究会は共催にとどめ、一般市民で講座実施のための実行委員会を立ち上げて主催しており、市民主導に切り替わりつつある。これは市民は受講するにとどまらず、都市農業に積極的に関わり、参画したいという思いを強くしている表れと受け止めている。
付言すれば、本講座の修了生が100名を超えたことから、各地域での講座開催と並行するかたちで、修了生と都市農業に関心を持つ人を対象に「農あるまちづくり講座のフォローアップ講座」をこの9月に開始した。Zoomによる講座で、隔月で開催、➀修了生とのコミュニケーション維持、②農への参画に関する活動についての情報提供・共有、③流域自給圏づくりや都市農地保全にかかる活動(運動)との連動・連携、をねらいとする。
以上、自らの活動を展開する中で、消費者・都市住民の都市農業についての理解醸成がすすみつつあることを紹介したが、農水省が24年11月に行った「都市農業に関する意向調査」もこれを裏付ける。「今後関わってみたい都市農業に関する取組」として「地場産の農産物の購入」36.9%がトップであるが、「自宅の庭やベランダでの野菜づくり」「市民農園の利用」が30%前後で続く。また都市農地については「是非残していくべき」30.2%、「どちらかといえば残していくべき」34.7%と、64.9%が保全すべきとしている。
これらを含め強く思うのは、都市農業政策は都市農家が担い手であることを基本にしてきたが、状況は大きく変わりつつあるということだ。農地を持たない市民が農業というよりは農というほうが適切であろうが、市民の農に参画したいとするニーズは高く、農に参画する権利を実現していくことが求められつつある。このように都市農地は私的所有ながらも公共性の確保が期待されている。これは関係人口の拡大の“ゆりかご”となるものでもあり、農村の振興、担い手確保にもつながる等、きわめて重要な課題であると考える。
(農的社会デザイン研究所代表)
日本農民新聞 2025年11月15日号掲載


