日本農業の発展と農業経営の安定、農村・地域振興、安心・安全な食料の安定供給の視点にこだわった報道を追求します。

日本農民新聞 2025年3月31日(増刊)号

2025年3月31日

〈本号の主な内容〉

■アングル
 JA共済連の新3か年計画と令和7年度事業の基本方向
 JA共済連 代表理事専務 高橋一成 氏

■JA共済連が臨時総代会 JA共済3か年計画等決定
 「組合員・利用者とともに歩み続けるJA共済」スローガンに

■〈JA全農〉飼料用 子実とうもろこしを水田輪作に
 JA古川(宮城県)管内での栽培実証の成果と今後

■〈JA全農〉石油事業の現状と課題
 農家・組合員、利用者の燃料供給確保、生活インフラ機能を発揮
 環境配慮型SSの展開を通じJA-SSの環境対策をPR


アングル

 

JA共済連の新3か年計画と令和7年度事業の基本方向

 

JA共済連

代表理事専務
高橋一成 氏

 

 JA共済連は3月18日、臨時総代会を開き、令和7年度から9年度の「JA共済新3か年計画」と、令和7年度の事業計画を決定した。JA共済事業を巡る事業環境、課題と今後の方向、7年度事業のポイントを高橋一成専務に聞いた。


 

「寄り添い」、「届け」、「繋がる」を重点に

まず、今次3か年計画の達成状況を振り返って。

 令和4年度から6年度までのJA共済3か年計画では「新たな時代に、変わらぬ安心を~地域とともに、農とくらしの未来を支えるJA共済~」をスローガンに、組合員・利用者一人ひとりに寄り添った安心と満足の提供と、持続可能なJA経営基盤の確立・強化を実現することを基本的考え方として取り組みを進めてきました。

 今次3か年では、JAの顔として専門的な知識を有し、保障のご提案やアドバイスを行うLA(ライフアドバイザー)の数が減少したことに加え、農水省の監督指針の改正等もあり、LAとスマイルサポーターを中心にしたこれまでの推進体制を見直すことが必要になりました。

 そうしたなかで、JAの皆さんにもご尽力いただきながら「共済事業体制総点検運動」を展開し、事業活動の一つ一つを確認するとともに、あらためて組合員・利用者本位の業務運営を意識し、しっかりと組合員・利用者に「寄り添い」「届け」「繋がる」ことを目指してきた3か年でした。

 厳しい3か年でしたが、最終年度である6年度にはLA一人当たりの実績が向上しており、LAの育成研修や支援、職場づくりなど、取り組みの芽が少しずつ出てきていると感じているところです。

 

非対面手続きを強化、アプリ登録者増

この3か年で実施した特徴的な取り組みは?

 一つは非対面手続きの拡充です。JA共済アプリ、Webマイページの直近の登録件数はそれぞれ約100万件、230万件となり、着実に登録者を増やすことができました。特に、昨年10月にJA共済アプリをリニューアルした効果もあり、利用率が大幅に向上してきています。令和6年能登半島地震では、避難所生活が長期にわたる等して連絡が取りづらい状況下においても、WebマイページやJA共済アプリを活用いただいたことで、利用者の方からは「被災直後で慌てているなかでも、迷わず操作ができました」、「スピーディーに連絡が取れたので安心しました」といった感謝の声を多数いただきました。JA共済アプリは、災害時等いざというときの備えとして、今後もしっかり普及に努めていく必要があります。

 また、農業保障への取り組み強化においては、農業者賠償責任共済「ファーマスト」を新設し、農業者の方に想定される様々なリスクを認識してもらう活動を強化してきました。

 JA共済事業を取り巻く環境は、農業者の減少・高齢化、自然災害の多発・激甚化、社会全体のデジタル化の進展など、劇的に変化が生じています。組合員・利用者の生活スタイルやニーズも変化するなか、JA共済が組合員・利用者、地域にとってなくてはならない存在であり続けるため、全ての事業活動において、役職員一人ひとりがこれまで以上に組合員・利用者を第一に考えた事業活動に取り組む必要があると認識しています。

 今後も地域に根差したJAグループの一員として社会的責任を発揮するため、不祥事根絶に向けた体制を強化し、組合員・利用者本位の事業運営に継続的に取り組んでいくとともに、総合事業機能を発揮した組合員・利用者との関係強化・仲間づくりに取り組んでいきます。

 

組合員・利用者と歩み続け 協同の力で広げる安心の輪

新3か年計画と令和7年度事業の基本方針を。

 新3か年計画では、「組合員・利用者とともに歩み続けるJA共済~協同の力で広げる安心の輪~」をスローガンに、全ての活動において、組合員・利用者本位の事業運営を基調として取り組みを展開します。組合員・利用者との関係性強化・仲間づくりの実践を通じて、組合員・利用者の豊かなくらしと活力ある地域社会の実現に貢献し続けていきます。

 具体的には、以下の点に注力し、取り組みを実践していきます。

 まず、JA職員数・LA数の減少等に伴う、事業実施体制の立て直しです。組合員・利用者との接点部分に職員全体で取り組む必要があります。そうしたなか、JAの強みである「総合事業機能を発揮した接点創出・仲間づくり」、「デジタル技術の効果的活用」、推進者がさらに専門性を発揮するための「事業推進体制の再構築」に取り組んでいきます。

 次に、これらJAにおける取り組みを強固に支援するため、「個々のJAの課題に応じた伴走支援」、「大規模自然災害への適切な備え」、「今日的な仕組み・サービス・システム等の整備・提供」を通じて、JAと一体となった事業運営を展開します。

 さらに、高齢化や自然災害の多発等で弱体化している、農業生産基盤や生活基盤の持続性確保に積極的に貢献するため、「農業・地域社会の発展に資する活動の重点的な展開」、「農業・地域社会とJA共済双方の持続的発展に資する取り組みの検討・展開」に取り組んでいきます。

 昨年の第30回JA全国大会決議にも「くらしに寄り添う接点創出」や「組織基盤強化戦略(JA仲間づくり戦略)」が掲げられており、まさに新3か年計画はこうした取り組みと連動し、着実に実践していかなければなりません。

 また、令和7年度は全共連の創立75周年を迎える年度であるとともに、国連による2度目の国際協同組合年であることから、新たな四半世紀に向けた新展開のスタート年度と位置付け、3か年計画の着実な実践と、環境変化を踏まえた変革に着手し、組合員・利用者の生命と財産を守り、豊かなくらしと活力ある地域社会の実現に取り組んでいきます。

 

質の高い事業推進体制へ転換

7年度の重点取り組項目は?

 以下の3点を掲げています。
 1点目は「保障・サービス提供等の深化」です。JAグループ一体となった組合員・利用者との関係性強化・接点づくりに向けて、事業・部門の垣根を越えた対面による組合員への情報提供・ニーズ情報の把握に取り組むとともに、そこで把握したニーズ情報を活用し、専門性の高い事業・部門でニーズ対応を行う取り組みの浸透を進めていきます。

 2点目は「事業推進体制の再構築」です。事業推進担当者が推進活動に専念できるよう、LA・スマサポの役割明確化を踏まえた訪問体制・拠点相談体制の確立、収集したニーズ情報の適切な差配に資する情報活用機能の段階的導入などに取り組みます。また、AI等を活用し、情報活用の高度化、LAを中心とする推進活動の支援強化、およびLAトレーナー等の育成者・管理者による人材育成の支援強化を図ってまいります。具体的なAIの活用内容としては、担当者共通支援システム(コロンブス)に登録された利用者情報等のAI分析による見込度の高い訪問先の選定などに取り組んでまいります。

 さらにJAの取り組みを後押しする連合会のさらなる機能発揮に向けて、JA支援担当者の育成強化、県域・JAの状況に応じたJA支援体制の構築、JAの事務負荷軽減に向けた取り組強化に取り組みます。

 3点目は「農業・地域社会の持続的発展への貢献」です。組合員・地域住民との繋がり強化・仲間づくりに向けて、JA・連合会が一体となり、コンテンツの拡充等を通じた、魅力的なイベント展開に取り組むとともに、SNS等を活用した情報発信の強化等に取り組んでいきます。

 また、持続可能な社会の実現に向けて、社会課題解決に資する取り組みや、国際協同組合年を契機として、協同組合の役割や価値に対する理解醸成、認知度向上に向けた取り組みをすすめます。

 

協同組合の意義 情報発信を強化

国際協同組合年への対応は?

 IYC2025(2025国際協同組合年)に向けては、他の協同組合等との連携を図りながら、協同組合の役割や価値に対する理解醸成、認知度向上に取り組む必要があると考えています。

 JCA(日本協同組合連携機構)と協同で、協同組合の認知・理解の拡大やSDGsの貢献に資する取り組みをすすめるとともに、ICMIF(国際協同組合保険連合)など国際協同組合機関が主催する国際会議やプロジェクトへの参画・支援に取り組みます。また、協同組合運動の促進を含むサスティナビリティ・SDGsに関連する情報発信の強化に取り組んでいきます。

 あわせて、JAの顔として活躍するLAをはじめJA共済連役職員全体に、協同組合の意義をしっかり伝えていきます。IYC2025を、農業協同組合を積極的にアピールしていく絶好の機会と捉え、持続可能な地域社会をつくる協同組合の一員として、引き続き取り組んでいきます。

 

3か年計画の実践に向けて

持続可能なJA経営基盤の確立・強化に向けた共済事業の取り組みを。

 JA共済の理念である「相互扶助(助け合い)」により、組合員・利用者の安全と安心を守っていく重要性は高まっています。それは有事の際のみならず、防災・減災に向けた取り組みや、高齢化・過疎化する地域への対応など、協同組合の共助の役割が、ますます高まっています。

 共済事業として、保障提供という安心・安全の提供に加えて、更に幅広い取り組みによって地域のレジリエンスを高めていく必要があります。

 7年度からの新3か年計画においては、いかなる事業環境においても、協同組合組織としての社会的責任を発揮しJA共済事業の使命を果たすため、共済事業の全ての活動において「組合員・利用者本位の事業運営」を基調とした取り組みをすることを基本的な考え方に掲げています。

 この考え方に基づき、「保障・サービス提供等の深化」、「事業推進体制等の再構築」、「農業・地域社会の持続的発展への貢献」の3つの重点取り組の着実な実践を通じて、持続可能なJA経営基盤の確立・強化に取り組んでいきます。

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