日本農業の発展と農業経営の安定、農村・地域振興、安心・安全な食料の安定供給の視点にこだわった報道を追求します。

日本農民新聞 2024年11月5日号

2024年11月5日

〈本号の主な内容〉

■このひと
 JA共済の使命と方向
 JA共済連 代表理事理事長 村山美彦 氏

■かお
 JA全農 常務理事の 由井也 氏
 JA全農 常務理事の 金森正幸 氏

蔦谷栄一の異見私見「地消地産から地域自給圏づくりを」


 

このひと

 

JA共済の使命と方向

 

JA共済連
代表理事理事長

村山美彦 氏

 

 

 この7月末、JA共済連代表理事理事長に、村山美彦氏(代表理事専務)が就任した。第30回JA全国大会を踏まえ、JAグループにおけるJA共済事業の位置づけと役割、これからの取組み方向を新理事長に聞いた。


 

揺るぎのない共済事業の原点

就任の抱負から。

 新型コロナの感染拡大や国際情勢の悪化、各地での自然災害に加え、生産資材価格の高騰などが日本の農業を取り巻く環境に大きな影響を与え、JA共済の事業活動も大きな転換期を迎えている。そうした中で青江伯夫JA共済連経営管理委員会会長から「自分達がこれまで取組んできた共済事業の原点である相互扶助の理念は揺るがないのだから、自信をもってこれまで通り元気よく邁進してほしい」と励まされた。

 我々の使命は、組合員の期待と信頼に応え安心と満足を提供すること。我々は何を期待されているのか、信頼に応えるとはどういうことか、どんな安心や満足を提供するのか。もう一度原点に立ち返って我々の使命を具体化していく。

 最も大切なのはこれまで以上に「組合員・利用者本位」で業務運営に取組むということ。我々の目的は実績を積み上げることではなく、組合員に安心と満足を提供することであるということをしっかり意識して活動していきたい。

 また、そうした活動を通じて職員の皆さんが目を輝かせて仕事ができる環境づくりをしていきたい。JA共済で働くことができて本当によかった、みんなから喜ばれ感謝された。そういうやりがいをみんなで築き上げていくことを、理事長として進めていきたい。

 

新しい時代に合わせ変化に対応

JA共済事業を取り巻く環境は?

 ちょうど30年ほど前に、バブルがはじけてデフレの時代に入り、保障見直しや保障設計の自在性といったニーズが高まる中、JA共済もそうしたニーズに合わせて対応してきたが、今また世の中が変わりつつある。少子高齢化が顕在化しあらゆる職種で人手が不足している。そして金利のある世界となり、給料が少しずつ上がり全体的にインフレになっていくなど、これまでとは違う環境になりつつある。人々のニーズが変われば、安心と満足の中身も変わってくる。我々は新たな時代に合わせて変化するニーズを的確に捉え続けなければならない。

 ここ10年ほどの間、スマートフォンの急激な普及等により、デジタル社会が到来した。これに伴い、JA共済では、タブレット型端末機(Lablet’s)の導入やスマートフォン向けのアプリ開発、ペーパーレス、キャッシュレス対応等、社会の変化に応じて様々なデジタルサービスの拡充を行ってきた。

 今後も変化し続けるニーズを捉え続けるために、AI等最新のデジタル技術を積極的に取り入れ、的確な保障提供を行っていく必要がある。

 一方で組合員・利用者アンケートでは、共済加入を検討する際には、デジタルを活用し、情報収集を行うが、最後は職員と対面で会話をして加入を決めたい、というニーズが圧倒的に高い結果となった。そうしたことから、LAやスマイルサポーターといった専門性を持った職員は欠かせない。LA・スマイルサポーターの皆さんには、組合員・利用者本位の業務運営にかかるマインドを醸成し、より一層の知識・スキルの習得に励んでいただけるよう支援したい。

 

組合員の助け合い活動からの事業

JA全国大会決議で掲げられたテーマ「協同活動と総合事業の好循環」の受けとめは?

 協同組合はもともと、個々に頑張っても解決困難な問題をみんなで解決するために共通のニーズや願いを持った人同士が自発的に集まり、協同して運動を実施したところから始まった。そして、地域のみんなが安心して暮らせる地域をつくるために、みんなで助け合いの活動をしたことが事業の形となった。

 協同組合はまず第一に組合員の助け合いの活動があり、そのうえで事業が存在している。協同組合組織として欠かすことのできないこうした活動と共済事業の関係性を改めて掲げて取組みを進めていくことは非常に重要だ。

 

支店一体の〝チームづくり〟導入へ

JAの共済事業支援に向けた取組みは?

 まず、JA現場力の強化として、全契約者・組合員への寄り添う活動の実践へ、JAの実情に応じた支店一体となったチームづくり(協働体制)の導入・定着に取組む。

 かつてはJAにLAがたくさんいて、推進活動の大半を担っていたが近年LA数は減少している。一方で、組合員・利用者に納得して共済に加入いただくためには、JAの顔として専門的な知識を持つLAやスマイルサポーターのポジションは欠かせない。

 LA数は減少してもこれまで同様、ニーズのある方に対して的確な保障提供ができる体制づくりを構築する必要がある。

 JAにおいてみんなで集めた組合員・利用者のニーズをLAにつなぎ、LAは利用者・組合員本位の推進活動で満足のいく保障を提供する。こうした支店一体となったチームづくりを、AI等のデジタル技術を活用しながらより効果的・効率的に構築していきたい。

 

自助、公助だけではない〝共助〟を含めた世界へ

2025国際協同組合年に向けて、改めてJAグループが共済事業に取組む必要性を。

 2012年に続いて2回目の国際協同組合年がつくられた。よりよい世界を築くという普遍的な目標の実現において現在の世界情勢等を踏まえ、自助、公助だけではない〝共助〟を含めた世界をつくる必要性があることから協同組合に光が当たり、設けられた「国際協同組合年」だと受け止めている。

 こうした状況を好機と捉え、JAグループ一丸となって、協同組合についての理解醸成をはかっていく。

 JAの事業や経営を取り巻く環境は厳しさを加速しているが、このような時だからこそ、「相互扶助」の理念のもと、組合員・利用者への「安心のための〝お守り〟」を届けていくJA共済事業の役割・使命をしっかり果たしていく。

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