日本農業の発展と農業経営の安定、農村・地域振興、安心・安全な食料の安定供給の視点にこだわった報道を追求します。

日本農民新聞 2022年5月25日号

2022年5月25日

このひと

 

JA青年組織活動のこれから

 

全国農協青年組織協議会
会長

佐藤崇史 氏

 

 

 全国農協青年組織協議会(JA全青協)が5月19日開いた通常総会で、令和4年度の新会長に佐藤崇史氏(JA全青協副会長、岩手県農協青年組織協議会会長)が就任した。佐藤会長に、抱負や青年組織活動に対する思いを聞いた。


 

次世代につなげる 中期活動目標策定に力

就任しての抱負を。

 コロナ禍において多様な活動が制限されている。地元の単組青年組織をはじめ、県域、全国域でも青年部の盟友は、少なからず活動に悩みを抱えている部分があるだろう。

 しかしながら、この情勢の中でも、可能な範囲で青年組織活動を継続することは、次世代の農業界に向けて必要なことだと感じている。青年組織活動を通じて若手農業者が各青年組織で成長できる場を作り、成長したという実感を得る経験を重ねることで、各地の盟友たちに農業界のリーダーとなってもらいたい。

 今年度はJA全青協中期活動目標(令和5~7年)を立案する年だ。人口や農業者の減少等の現状を一度立ち止まって精査し、次世代に向けた目標の設定を行いたい。全青協として何ができるのか、今年1年かけて皆さんと話し合って、目標案を構築していく予定だ。また、今すぐに全青協の力を必要とする事柄があれば、率先して活動を進めていきたい。

 青年組織活動の主役は地元の盟友の皆さんだ。全青協では各地域の青年組織活動が活性化していけるように手助けしていきたい。

 

発信した意見を行動で形に

1年を振り返り、青年組織活動で感じたことは?

 令和3年度を振り返って、一番印象的な出来事は昨年10月の第29回JA全国大会だ。全青協として意見を出した多くの内容を採択いただき、盟友の意見が一つの形となった。大会ではJAグループの今後の形が示されたが、それを行動に移していかなければならない。

 例えば、将来の産地の担い手を計画的に確保する「次世代総点検運動」等、青年組織の盟友が主人公となって実践しなければならないことが決議されている。主役である各地の盟友・青年農業者が今後何をすべきなのか議論が進んでいくだろう。ぜひそこに我々の声と力をどんどん入れてきたい。

 「活動指針」であり「政策提言集」でもあるJA全青協のポリシーブックでは、改訂の際に農水省やJAグループ等に対して提言を行っている。今回の改訂でもJA全青協の政策提言をポリシーブックに連動させ、しっかりと形作ることができた。

 第68回JA全国青年大会は、新型コロナウイルス感染拡大の状況を鑑みて2年続けてウェブで配信を行った。叶うなら実開催で、盟友たちと対面したかったが、ウェブでも我々の情熱やエネルギーをしっかり届けられるように準備し、開催することができたと感じている。

 ウェブ開催の経験も、積み重ねることで将来必ず役に立つ。コロナ禍以前に取り組んでいなかった事柄を経験できた、とプラスに考え、今後も取組みを進めていきたい。

 

国民との相互理解に「みどり戦略」

「みどりの食料システム戦略」等、農業を取り巻く情勢転換について受け止めを。

 第29回JA全国大会でJAグループのめざす10年後の姿に「持続可能な農業の実現」が掲げられた。農水省の「みどりの食料システム戦略」の考え方は、国民との相互理解を図る上で、農業界も環境や未来についての考え方を持っている、と示すことにつながるものだと考えている。今後農業を営む上で必要な考え方になっていくだろう。

 全青協でも取り組めるところはしっかりと取り組みつつ、戦略の目指す目標に対して現場では今いかにアプローチできるのか、手法についてリアリティをもって考える必要があるだろう。

 

盟友の存在は災害から 再起する際の〝原動力〟

自然災害が頻発する中で、青年組織の役割は?

 大雨や地震等の自然災害が近年続いている。私の地元は岩手県奥州市の江刺で、2008年の岩手・宮城内陸地震、2011年の東日本大震災と、大きな地震を身近で2度経験している。

 災害から復旧する際、地域の青年組織は、盟友同士が連携し尽力する〝マンパワー〟として役割を発揮するほか、行政に「こういう支援が欲しい」と伝えていくことが有事における責務だと考えている。

 災害時はどうしても孤独感を感じてしまうものだ。地域や全国に支えあえる盟友や仲間がいると、自分は1人ではないことを実感できるし、再び地域で立ち上がっていくための勇気を得ることにもつながる。その意味でも、地域の青年組織の存在意義は大きく、重要なものだと感じている。

 一方で、現在のウクライナ情勢等により、肥料や穀物、燃料等が高騰しており、これは自助や共助で対応できる範疇を既に超えていると感じる。

 我々もこれまで学習を積み重ねてきたが、解決策は見えづらい。まずはウクライナとロシア、諸外国の関係性や現状をしっかり認識することが重要だろう。ウェブ上には多様な情報が流れていて、事実とフェイクが入り混じっている可能性もある。情報の整理をしっかりと行う必要があるだろう。

 引き続き、自助・共助でもできる限りの努力は続けていくが、次世代の営農に直結していく課題だと行政にしっかりと訴えていく必要がある。JAグループや各県域等と連携し、同じ視点を共有しながら発信していきたい。


〈本号の主な内容〉

■このひと JA青年組織活動のこれから
 全国農協青年組織協議会 会長 佐藤崇史 氏

■JA全農 緑肥利用セミナー
 用途や時期に応じた緑肥の上手な利用方法
 〇農研機構中日本農業研究センター
  温暖地野菜研究領域 有機・環境保全型栽培グループ
  グループ長補佐 唐澤敏彦 氏
 〇雪印種苗㈱
  植物機能性研究Ⅱグループ
  係長 和田美由紀 氏

■野菜栽培における 最近の病虫害防除
 農研機構 植物防疫研究部門 作物病害虫防除研究領域長
 長坂幸吉 氏

■クローズアップインタビュー
 農林中央金庫 理事兼常務執行役員に就任した
 福田浩昭 氏

行友弥の食農再論「給食を『学び』の場に」

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