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東南アジア各国と持続可能な農業生産等の共同文書合意=農相

2021年7月20日

 野上浩太郎農相は19日、東南アジア各国閣僚との「持続可能な農業生産及び食料システムに関する共同文書」に合意した。日本を含むアジア7か国の農業担当大臣が、今月26~28日開催の国連食料システムプレサミットを機に、持続可能な農業生産及び食料システムを達成することの重要性を共同で認識するとしたもの。

 合意した共同文書は、▼アジア・モンスーン地域に属する国々として、農業生産に関して地域の特殊性を共有し、持続可能な農業生産及び食料システム、並びにSDGsという目標達成に努力を払う、▼その目標に至るために万能(one-size-fits-all)な解決策はなく各国の状況にあわせて取り組むべきものであることを共有、▼農業及び関連分野において、イノベーションが持続可能な農業生産及び食料システムにとって重要であることを共有、▼国際的な協力が重要であるとし、生産性と環境保護のバランスをとるため、共同研究プロジェクトや既存の二国間及び複数国間の枠組みを通じた協力を促進し深化させることとした、ことを盛り込んだ内容となっている。

 同日、合意会合がテレビ会議形式で行われ、野上農相が出席し、共同文書を踏まえ、各国の協力関係を深化させていくことなどを確認した。野上農相は、概要以下のように挨拶した。

 「日本は今年5月、調達・生産・加工・流通・消費までのサプライチェーンの各段階の行動変容とイノベーションにより食料・農林水産業の生産性向上と持続性の両立を実現する『みどりの食料システム戦略』を策定した。アジア、モンスーン地域は欧米と比較して、温暖・湿潤な気候であること、稲作が食料政策の基本であること、小規模な生産者が多いという特徴があり、農業生産力向上と、持続性の両立は特に重要な課題となっている。この戦略は気候変動などを危惧、多様な課題をイノベーションによって解決していくことを目指しており、アジア・モンスーン地域に適用可能な持続可能な食料システムの取組モデルになる。もちろん、持続可能な農業生産及び食料システムの目標に至るための万能な解決策はなく、各国の状況に合わせて取り組むものだ。今回、国連食料システムサミットのプレサミットを機会に捉え、同様の気候条件等を共有するアジアモンスーンの各国ともに持続可能な農業生産および食料システムに関するこの共同文書について、今回の合意に至った。大変嬉しく思っている。この共同文書をアジア・モンスーン地域の声としてプレサミットの機会に表明していきたい」。

持続可能な農業生産及び食料システムに関する共同文書

 我々、カンボジア、日本、ラオス、マレーシア、フィリピン、シンガポール、ベトナムの農業担当大臣は、国連食料システムプレサミットの場において、持続可能な農業生産及び食料システムを達成することの重要性を共同で認識する。

 アジア・モンスーン地域に属する国々として、我々は、農業生産に関して、高温多湿の気候条件、水田主体の農業、中小規模農家の割合の高さといった地域の特殊性を共有している。

 これらの地域の特殊性を考慮し、我々は、持続可能な農業生産及び食料システム、並びにSDGsという目標を達成するために最大限の努力を払うつもりである。一方、化学農薬及び化学肥料の使用量の削減方策を含め、その目標に至るための万能(one-size-fits-all)な解決策はないことを認識する。

 我々は、農業及び関連産業の分野において、特に中小零細農家にとって、イノベーションが持続可能な農業生産及び食料システムへの鍵であり、イノベーションを強化するためには民間部門の投資を促進する必要があることを確信している。

 また、デジタルツール、機械化及び病害虫管理体系のような革新的・持続的な農業慣行や農業技術を導入するために国際的な協力は重要であり、我々は、生産性と環境保護のバランスをとるため、共同研究プロジェクトや既存の二国間及び複数国間の枠組みを通じた協力を促進し深化させることとした。

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