農林中央金庫(奥和登代表理事理事長)、豪州政府系機関Clean Energy Finance Corporation(CEFC*1)は、豪州ノンバンクFirstmac Limited(Firstmac*2)が組成する豪州グリーン住宅ローン債権プールに対するファイナンス提供の契約を締結した(アレンジャーはj.p.Morgan Securities Australia Limited)。農林中金が25日発表した。
農林中金によれば、同案件は、上記三者が環境、社会、ガバナンス(以下ESG)関連の課題解決に向けて協議を重ねたうえで連携し、裏付資産の全てが環境配慮型住宅(*3)となる豪州初のファイナンス案件を組成するための共同の取組みとなる。当該契約に基づき、農林中金は最大637・5百万豪ドルのコミットメントラインを設定し、CEFCは108・5百万豪ドルを投資する。同案件の債権については、Climate Bonds Standards(CBS)のグリーンボンド発行前要件に準拠する、あるいは、国際資本市場協会が定めるグリーンボント原則2018に則ったFirstmacグリーンボンドフレームワークに準拠する形で構成される。また、Sustainalytics Australia Pty Ltd(*4)より、同案件がCBSのグリーンボンド発行前条件に準拠しているという発行前意見およびFirstmacグリーンボンドフレームワークに関する第三者評価の提供を受けている。
今回の契約締結について3者は概要以下のようにコメントしている。
《農林中央金庫》本案件を通じ、Firstmacが今後注力しようとしている環境配慮型住宅向け融資の取組みを資金面からサポートし、その進捗状況を継続的にフォローすることで、環境配慮型住宅の普及促進に貢献し、エネルギー消費および温室効果ガスの排出の削減を通じ、グローバルな気候変動対策へ貢献することを目指します。本案件は、当金庫が重視するSDGs課題への解決に向けて、本邦で初めてFirstmacやCEFCと共に世界に働きかける取組みとなります。また、本案件は国際分散投資を通じた安定的な収益の確保に資するとともに、当金庫の目指すサステナブル経営の理念にも合致するものと考えております。当金庫は、私たちの存在意義である「持てるすべてを「いのち」にむけて。~ステークホルダーのみなさまとともに、農林水産業をはぐくみ、豊かな食とくらしの未来をつくり、持続可能な地球環境に貢献していきます~」を念頭に、今後も様々な環境・社会課題の解決に貢献する投融資に取り組んでまいります。
《CEFC》本案件は、Firstmacによるグリーン住宅ローン商品の提供を通じて、CEFCがよりクリーンでグリーンな住宅を継続的にサポートしていくことを表明するものです。Firstmacは、豪州のノンバンク住宅ローンプロバイダーとして初めてCEFCファイナンスを利用し、適格な住宅購入者と住宅所有者に対し通常よりも低い金利を提供します。新しいFirstmacグリーン住宅ローンでは、Nationwide House Energy Rating Scheme(NatHERS)の証明書によって、住宅の熱効率が最低7つ星の評価を取得する必要があります。7つ星の評価は、現在の豪州国家建設法の最低基準を大幅に上回っており、この評価に基づいて建設された住宅は、冷暖房用のエネルギー消費量が大幅に削減されます。不動産セクターは豪州の温室ガス排出量の約23%を占めています(出典:Low Carbon high Performance-may 2016-ASBEC)。この排出量の約半分は住宅からのもので、主に暖房、換気、空調、照明および給湯システムによるものです。豪州の持続可能な建築環境評議会(ASBEC)とClimate Works Australiaは、新しい住宅の建物により高いクリーンエネルギー基準を採用することで、最大25%ものエネルギー節約の可能性を確認いたしました。
《Firstmac》豪州で初の100%グリーンRMBSの発行を通して、持続可能な未来への取組みを支援し、我々と同様の考えを持つ農林中央金庫やCEFCとの関係を深められることを嬉しく思います。Firstmacは以前より、低排出ガス車を選択するお客様に通常よりも低い金利でのグリーンカーファイナンスを提供してきました。当該プログラムの成功によって、今回の革新的なグリーン住宅ローン商品を開発するに至りました。環境に配慮しているお客様に対して、Firstmacはその資金ニーズに応えるための合理的な選択肢を提供することができます。本案件は、希少疾患の子供、青少年とその家族を支援するSteve Waugh Foundationや、家庭内暴力防止のための意識向上と資金を集めるために活動するDarkness to Daylightに対する慈善支援に加えて、FirstmacのESGに対する取組みを強化するものです。
*1【CEFC】豪州の排出量削減に向けての投資を増やすという独自の役割を持った政府系機関。豪州政府の支援を受けたマーケットリーダーとして、CEFCは農業、エネルギーの生成と貯蔵、インフラストラクチャー、不動産、輸送、廃棄物など、豪州で最も困難な排出問題に対処するため、商業的かつ厳格に運営されている。CEFCは、クリーンエネルギーイノベーションファンドを通じて豪州のクリーンテック起業家の支援や、Advancing Hydrogen Fundを通じて豪州の潜在的な水素開発に投資を行っている。また豪州政府によって拠出される100億ドルの資金を元に構成されるポートフォリオ運営によって、納税者にプラスの利益をもたらすように運営もされている。
*2【Firstmac】1988年に設立された、豪州で最大のノンバンク金融機関。創業以来、13万件の住宅ローンを提供し、豪州のRMBS市場で高い存在感を維持している。
*3【環境配慮型住宅】同案件で証券化された住宅ローンポートフォリオは、豪州の住宅用CBI低炭素住宅プロキシに準拠していると見なされる住宅またはNatHERS7以上の評価を達成した住宅への住宅ローンが裏付けとなる。
*4【Sustainalytics】1992年設立のESGパフォーマンス評価を実施する機関。既存のグリーンRMBS全てに対してオピニオンを付与しており、豪州RMBS市場においてもグリーンRMBSの外部評価機関として代表的な機関。