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九産大が「食品微生物制御CT」開設、食品業界横断的なデータベースを構築

2021年6月16日

 九州産業大学はこのほど、「食品微生物制御センター」を開設、賞味期限を延長し食品ロスを低減するため、レーザー光を利用して同定した微生物の成分をデータベース化して食品業界に広く展開するための取り組みを開始した。

 MALDI-TOFMS(*)と呼ばれる成分分析法を用いて同定した、細菌や酵母などの食品関連微生物の成分データを食品各社で相互利用することで、健康被害や食品の品質低下のもととなる問題菌とその混入経路を迅速に特定して、食品事故の早期解決や賞味期限の延長に資する、微生物制御対策に役立てる。

 九州産業大は、保有するMALDI-TOFMSで得られた食品微生物データを業界で共有することで、食の安全・安心、食品ロスの低減に貢献できると考え2019年6月に企業間のデータ共有化のための組織「MALDI-MS微生物同定コンソーシアム」を設立。現在、調味料、菓子、冷凍食品、乳製品、飲料、食肉・水産加工品など幅広い分野の食品企業、研究機関など14の企業・団体が趣旨に賛同しコンソーシアムでデータを共有している(参加企業・団体一覧は別掲)。

 「食品微生物制御センター」はこの活動を更に進め、菌株や成分データベースの拡充による同定精度の向上と、各社がデータベースを効率的に共有できるシステムを開発し、食品業界横断的な微生物データベースの構築を目指す新たな研究施設。コンソーシアム活動と並行して、現在確立されていない食品関連カビの同定法の研究を行い2025年のデータベース化を目指すとともに、福岡県工業技術センター生物食品研究所と協力して地域の食品産業の微生物制御の支援を行う。

【コンソーシアム参加企業・団体】
キユーピー/マルハニチロ/明治/カゴメ/やまやコミュニケーションズ/日本コカ・コーラ/コカ・コーラ ボトラーズジャパン/ニチレイ/日清製粉グループ本社/日本ハム/東京都健康安全研究センター/日本食品分析センター/日本生協連/九州産業大学

*MALDI-TOFMS…「飛行時間型マトリックス支援レーザー脱離イオン化分析法」の略。マトリックスと呼ばれる混合物を加えた試料に窒素レーザーを照射し、気化・イオン化した成分の質量の違いによる電極までの飛行時間の差によって成分を同定する分析法およびその分析装置を指す。遺伝子解析による同定法と比べ、迅速な成分特定が可能であるとともに、専門的な技術を必要としないという利点があり、食中毒や感染症検査などの医療分野での導入に続き、食品業界で10年ほど前から利用されはじめ、全国の医薬食品分野で現在約200台が稼働している。九州産業大学では2011年3月総合機器センターに導入、生物化学分野の研究に利用してしている。

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