政府は5月28日、「農林水産物・食品の輸出拡大のための輸入国規制への対応等に関する関係閣僚会議」を開き、輸出の新たな方針を決定した。
輸出額目標(2030年までに5兆円)の実現に向け、政府が昨年11月にまとめた農林水産物・食品の輸出拡大実行戦略において、「令和3年夏を目途に結論を得る」とされている検討事項を中心に、事業者ヒアリングや、関係者との意見交換を行い、現場が抱える問題意識や要望、課題、それに対する具体的な対応策について、取りまとめたもの。「専門人材を活用し、計画的にマーケットインの輸出に取り組む産地・事業者を育成」「生産から海外での販売に至る事業者を包括する『品目団体』を組織化し、規格統一やナショナルブランド化を推進」など12項目の対策で構成している。今後、制度面の見直しも含め早急に具体化するとともに、官民一体となって速やかに実行していくことで、「マーケットイン」の発想に立って改革を更に進め、輸出額目標の達成に向けて強力に取り組んでいく、としている。
具体的には、「輸出産地・事業者の育成」に関わっては、▼輸出事業計画に基づき取り組む産地・事業者を重点的に支援、▼専門人材を「輸出産地サポーター」として採用し、伴走型で支援。「品目団体の組織化」では、品目団体を法制化し、▼ナショナルブランドや輸出に資する規格・基準を定める業務規程の制定、▼業界全体での販路開拓、ターゲット国調査、▼会員を対象とするチェックオフなど自主財源の増加、を実施する。「輸出先国における専門的・継続的な支援体制の強化」については、「農産品輸出支援プラットフォーム」(仮称)により、▼在外公館、ジェトロ海外事務所が連携し、ニーズ調査や外国政府への働きかけを現地で実施、▼専門人材を輸出アドバイザーとして活用し、輸出先国で専門的・継続的に支援する。これらの取組みを実現するため、「輸出促進法」を改正する〔この他、主な対策と概要は次頁枠内〕。
内閣官房によれば、同会議で菅首相は、「日本の強みである27の重点品目について約1300の産地・事業者をリストアップしており、輸出にチャレンジする事業者を重点的に支援していく。例えば、箱や瓶の大きさなど、輸出の際の様々な規格を定めたり、日本産の産品のブランド化を行ったりするため、品目ごとの団体を法律で定め、オールジャパンで輸出を促進する体制を作る。地方の港湾からも輸出できるように低温倉庫を整備したり、日本企業が海外で販売・製造を行う際の資金供給を支援する。こうした対策を実施するため、輸出促進法の改正の検討を進める」「日本産食品に対する輸入規制については、先日のシンガポールとの首脳会談において、リー・シェンロン首相から、福島県の農産品に残されていた規制の全面的な撤廃が表明された。震災から今年で10年となるが、いまだに14の国・地域で規制が維持されている。茂木大臣、野上大臣を中心に、政府一体となって、各国・地域への働きかけを更に強化してもらいたい」「農業を地域の成長産業として、地方の所得を引き上げるために、政府一体となって今後も全力を挙げていく」と語った。
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