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JA・JFマリンバンク、農林中金が郵政民営化委員会に意見提出

2021年1月27日

ゆうちょ銀行の個人向け貸付業務等の新規業務認可申請で

 JAバンク、JFマリンバンク、農林中央金庫は22日、郵政民営化委員会の意見募集(令和2年12月25日付)に対し、以下の内容の意見を提出したと発表した。

「ゆうちょ銀行の口座貸越による貸付業務に係る信用保証業務を行う子会社の保有及びゆうちょ銀行の個人向け貸付業務等に関する郵政民営化委員会の調査審議に向けた意見募集」に対する意見

 私どもはかねてより、間接的な政府出資が残るゆうちょ銀行が新規業務に参入するに当たっては、まずは完全民営化への道筋が具体的に示され、その確実な実行が担保されることが最低限必要であり、そのうえで、個別業務ごとの新規参入の是非については、公正な競争条件の確保、利用者保護、地域との共存等の観点を総合的に検討し、その可否を判断する必要があると主張してまいりました。
 こうした私どもの考えが十分に踏まえられるとともに、その前提として既存業務も含めて顧客本位の業務運営が徹底されるための十分な体制整備が行われることが必要と考えます。
昨年11月に日本郵政が公表した「日本郵政グループ中期経営計画(2021~2025)の基本的考え方」において、日本郵政が保有するゆうちょ銀行株式をできる限り早期に処分する方針及びまずは保有割合を50%程度まで引き下げる方針が示されました。しかしながら、それを実行に移す具体的な計画は未だ示されていないとともに、依然としてゆうちょ銀行の完全民営化への道筋は示されておらず、民間金融機関との間での公正な競争条件が確保されていない状況が続いております。
 今般の個人向け貸付業務等に関する調査審議に当たっては、こうした状況も踏まえて検討が行われるべきであると考えます。
今回認可申請された信用保証業務を行う子会社の保有は、平成29年6月に郵政民営化法にもとづき認可が行われた、ゆうちょ銀行の口座貸越による貸付業務を実施するためのものとされております。
 この実施の前提として、貴委員会が平成29年6月に公表した「株式会社ゆうちょ銀行の新規業務(口座貸越による貸付業務、資産運用関係業務及びその他の銀行業に付随する業務等)に関する郵政民営化委員会の意見」において、「業務を実施する場合の留意事項」として指摘された、業務遂行能力・業務運営態勢の実効性の確保について、ゆうちょ銀行が確実に取組み、その成果を具体的に示すべきであると考えます。また、実施に当たっては、利用者利便の向上に資するよう、利用者への分かりやすく丁寧な説明や適正な利用のサポート、必要な注意喚起を行う態勢の確保について、十分な対応を図ることが必要であり、そのうえで、業務の実施状況等の適切な情報開示が必要です。
次にフラット35の直接取扱いについては、平成29年6月の口座貸越サービス等の認可取得の際に、同時に個人向け貸付け業務の認可申請を取り下げた経緯も踏まえるべきであると考えます。また、直接の貸付業務は、これまでゆうちょ銀行が行ってきた業務とは異なるリスク管理が求められることから、厳格な融資審査の実施態勢等の必要な態勢整備を十分に行うことが不可欠です。
 さらに、人口の減少・高齢化、低金利環境に加えてコロナ禍を受けた信用リスクの高まりにより民間金融機関が厳しい経営環境にあるなかで、ゆうちょ銀行が民間金融機関との間での公正な競争条件が確保されていない状況のまま、住宅ローン市場に参入することは、民業圧迫に繋がり得るものであり、ゆうちょ銀行がこうした姿勢を示すことで、これまで着実に醸成されてきた両者の相互信頼関係が損なわれ、連携・協働の動きが止まることになりかねないと懸念します。
 貴委員会における調査審議に当たっては、これらの私どもの主張を十分踏まえていただくほか、ゆうちょ銀行の業務遂行能力・業務運営態勢、利用者保護やリスク管理の取組みについて、真に実効性のあるものとなっているかを慎重に確認いただくことを期待いたします。また、仮に申請が認可されるようなことがあった場合でも、ゆうちょ銀行の各種管理態勢が業務実施後においても適切に機能しているか、新規業務のみならず既存業務も含めて顧客本位の業務運営が徹底されるための十分な体制整備がなされているか、関係当局や貴委員会において、継続的にモニタリングいただくべきと考えます。
 JAバンク・JFマリンバンクは日本全国の農山漁村に広く店舗を展開しており、農業者や漁業者等への金融サービスの提供を通じて、わが国の農林水産業や地域社会・経済を支えております。このため、全国ネットワークを通じて各地域で幅広いサービスを提供している郵便局とは、農林水産業の成長産業化や地域社会の維持・発展に向け、連携・協調できる部分が存在すると考えます。
 こうした連携・協調が実を結ぶには、ゆうちょ銀行と私ども民間金融機関が公正な競争条件の下で共存し、安定した地域の金融システムを維持することを通じて、地方経済・地域社会を発展させていくことが重要と認識しておりますので、今回の認可申請については、こうした点を踏まえて慎重に検討されることを強く要望いたします。

 令和2年12月23日、㈱ゆうちょ銀行から内閣総理大臣(金融庁長官)及び総務大臣に対して、同行の口座貸越による貸付業務に係る信用保証業務を行う子会社の保有及び同行の個人向け貸付業務等を内容とする新規業務について、認可申請された。

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