2030年度の生乳生産目標数量を全国775万~800万tに独自設定
Jミルク(会長=川村和夫明治ホールディングス㈱代表取締役社長)はこのほど、国内酪農乳業の将来のあるべき姿を実現するために、酪農乳業界の戦略視点と協働行動、期待される政策的支援の方向性を盛り込んだ「わが国酪農乳業の将来戦略ビジョン(提言)」をとりまとめた。
「提言」では、国内の酪農乳業の不安定な需給構造、多様化が進む牛乳乳製品消費、深刻化する世界の食料問題など、酪農乳業界が考慮すべき国内外における事業環境を踏まえた場合、今後の酪農乳業の持続可能な発展のために、「成長性」「強靭性」「社会性」の3つの共通の戦略視点に沿った対応が必要であると指摘。この戦略視点に基づいて、「業界で取組むこと」「国に要請すること」について整理している。
「提言」は、農水省が検討している新たな「酪農及び肉用牛生産の近代化を図るための基本方針」(酪肉近)の策定と、酪農乳業施策の推進にあたり、同提言の趣旨等が、十分に配慮されるよう求めている。さらに、「国民健康に貢献する酪農乳業の社会的責任、牛乳乳製品の国内自給率の向上、将来世代へ安心感を与え意欲を喚起するための業界の意思表明」として、生産目標数量を独自に設定。10年後(2030年度)において、確保されることが期待される国産原料乳の目安として、全国で775万~800万tを生乳生産の数量目標に掲げており、「新たな酪肉近の生産目標数量においてこの目標を尊重してほしい」としている。
Jミルクではこの生産目標数量の設定にあたり、▼国内の乳業工場の生乳処理能力が生産目標数量の受け皿として十分に確保・維持されること、▼国産牛乳乳製品市場が生乳換算で1200万t程度の需要を確保できること、▼廃業酪農家の生産量をカバーするために経営の規模拡大、後継者の確保・新規就農がこれまで以上に推進されること、等の条件や考え方がベースとなっていると説明している。生産目標数量は、予測される生乳生産数量の幅の中で、「業界と政府による取組みの効果が発揮され、都府県酪農においても生産の回復が図られる」ことを前提としたもの。
なお、「提言」の着実な実行を図るため、Jミルク内にプロジェクト型の推進体制を整備、行動計画の具体的な実行策の検討と推進、成果や課題に関する検証などの実行管理を行い、毎年度、理事会に報告。必要な対策の検討を行うとともに、その内容を公表するとしている。
10月23日、Jミルクの川村会長、砂金甚太郎副会長(全酪連代表理事会長)、前田浩史専務理事が記者会見を行い、同提言について説明。川村会長は「本提言は、酪農乳業を巡る事業環境が、グローバル競争の結果や地球規模での食料生産を巡る新たな諸課題などによって今後大きく変化することが見込まれる中で、我が国の酪農乳業の将来世代に展望ある持続可能な産業の未来を受け渡すために、今後目指すべき日本の酪農乳業のあるべき姿に連携して取り組むべき戦略視点・求められる協働行動や、政策支援の方向性等を明らかにする目的で策定した。この提言の考え方を、酪農乳業関係者のみならず、わが国のミルクバリューチェーンを構成するすべての関係者にご理解いただきたい」と述べた。
Jミルクは同日、農水省を訪れ同提言を江藤農相宛に提出、伊東副大臣が対応した。