日本協同組合連携機構(JCA)と東大大学院の水越研究室は21・22の両日、東大本郷キャンパスでシンポジウム「プラットフォーム協同組合主義の現在」を開催した。「プラットフォーム協同組合主義」とは、プラットフォーム上で情報を共有して価値を生み出している利用者こそが、プラットフォームを協同組合的に所有して利益を得るべきとする考え方。シンポジウムは、この考えの提唱者であるトレバー・ショルツ氏(米国・ニュースクール大准教授)の来日にあわせて開催された。
1日目はJCA主催で「プラットフォーム協同組合主義とはなにか?~デジタル経済における協同組合の可能性を探る」が行われ、協同組合関係者や大学関係者ら約100名が参加した。水越研究室が協力、農中総研、AgVenture Lab等が協賛した。トレバー氏による講演、JCA協同組合連携部長の前田健喜氏司会のもと、水越伸(東大大学院情報学環教授)・浜地研一(生活協同組合コープこうべ)・中野理(JCA協同組合連携部研究員/日本労協連理事)各氏、トレバー氏をパネリストとしたパネルディスカッション、等が行われた。
講演の中でトレバー氏は、「プラットフォーム協同組合主義」を解説。一般ドライバーが自家用車を使ってタクシーのようなサービスを提供するアプリを例に、実際に働く労働者の賃金は安く、企業が利益を総取りしている状況を説明、同様のサービスを協同組合が提供することで労働者が賃金を多く得、尊厳のある仕事を提供することができる、と考えを示した。
パネルディスカッションで浜地氏はコープこうべにおけるアプリを活用した買物支援の事例とともに、買物ボランティアなどへのアプリの利用など今後の方向性を紹介、「GAFAのようなデジタルプラットフォームではなく、我々の助け合いのプラットフォームのようなものになれたらよい」と述べた。
また、水越氏はプラットフォームについて、かつては道路や鉄道などの社会的資本、現在はフェイスブックやGoogleなどのデジタルプラットフォームを指していると概要を説明。コミュニケーションを行うための媒介となる方法の一つがプラットフォームであること、新しいプラットフォームの在り方を想像・クリエイトするためには自分たちが利用しているプラットフォームがどのようなもので、どのように利用しているかを捉え直すことが必要であることを論じた。
JCA専務の馬場利彦氏は『プラットフォーム協同組合主義』についての概念や、ICA(国際協同組合同盟)の17年の総会で同主義を支援することが決議されていることなどを話し、「本日は世界の動向、『プラットフォーム協同組合主義』の動向を踏まえながら日本における取組の必要性や課題について、質疑・意見をいただき、少しでもイメージを描くことができれば」と語った。
22日には水越研究室主催で「インフラリテラシーの道具箱」をテーマに国際セミナーが行われた。
*GAFA=米国に本拠を置く、Google、アマゾン等の4つの主要IT企業。