〈本号の主な内容〉
■このひと
JA全農の新たな取組み
JA全農
経営管理委員会会長
吉見一弥 氏
■第26回 店舗戦略トップセミナー
全国Aコープ協同機構、(一社)農協流通研究所が開催
■かお
林野庁長官に就任した 長﨑屋圭太 氏
■蔦谷栄一の異見私見「農村政策との一体化、市民・消費者の参画・連携を」
このひと
JA全農の新たな取組み
JA全農
経営管理委員会会長
吉見一弥 氏
JA全農は7月30日に第50回通常総代会を開催。総代会後の経営管理委員会で、新たな経営管理委員会会長に吉見一弥氏(全農愛媛県本部運営委員会会長)を選任した。高齢化や担い手不足など地域社会を取り巻く環境が大きく変化する中で、全農はどのような役割を果たすべきか。吉見新会長に、直面する課題について聞いた。
誠心誠意、業務遂行に努力 単協の困りごとに応える
■就任して2か月余り。今の思いから。
全農という規模の大きな、世界を舞台に事業展開する組織を担う責任の重さを改めて感じています。
副会長の時は、会長がやりやすくなるようにサポートするという意識でしたが、今度は会長として自らが大きな責任を背中に負ったというのが正直な思いです。誠心誠意、職務の遂行に努めてまいります。
■「組合員の困りごとに即応し、期待を超える価値を届ける」との信条に込めたものは?
私は縁あってJAに入り、最初は2人だけの事業所からスタートした現場のたたき上げです。地区を担当し、軽トラックも入れないような狭い道を一輪車で配達するところから仕事が始まりました。当時は事業推進で毎晩、組合員の家を訪問するのが常で、そうした地区回りを通じて組合員の方々と親しくなり、本音の思いに応えることでJAの組織が成り立っていることが分かりました。
2年目からは地区で1人だけの営農担当になり、ミカンの選果場や養豚農家、段々畑のジャガイモ栽培農家を回りました。豚の出荷は週1回、早朝3時からあって、暴れる豚を豚舎から運び出す仕事もしたものです。農家とともに一緒に汗をかき、販売収入を得て喜んでもらった経験が身にしみ込んでいます。営農担当として得た農家の信頼は様々な事業推進にも結び付きました。
さまざまな経験をするなかで、単協だけでは対応が難しい課題について、県の連合会や全農がきちんと受け止め、困りごとに応えることによって、最終的に組合員にお返しができると知りました。
現場からのフィードバックをきちんと反映し、現場をバックアップすることが全農には求められています。そうした経験から、全農会長への就任にあたり、「現場の不安を希望に変える、最も身近なパートナー」を全農の役割として打ち出しました。時代に即応し、組合員の生の声を聞き、期待に応えるのが協同組合という組織です。心から信頼し、安心して利用していただける現場のパートナーであり続けたいと思います。
海外紛争、円安による影響大 協同組合の意義訴える必要も
■日本農業全体の課題認識は。
4年前に始まったロシアによるウクライナ侵攻以降、中東でも紛争が続き、肥料・飼料原料、資材、燃料、輸送費などの価格に大きく影響しています。資源のない日本にとっては、全てが農業者のコスト増につながるのが現実で、これが一番の課題です。円安も重なり、農業者からは生産コストを下げてほしいという切実な要望が、単協にも全農にも寄せられています。
全農はJAグループの経済事業を担っており、寄せられる声に対し、応えていく必要があります。まずは肥料・飼料原料、資材、燃料の安定調達が課題ですが、その実現には、背景として組合員の結集力が必要です。一定のシェアを確保しなければ強い交渉力は持てません。
全農が組合員の期待に全力で応えていくことは言うまでもありませんが、地政学リスクの高まりや、世界の人口増加により資源の獲得競争が激化しているという厳しい現実があり、安定調達のためには組合員の結集が必要であることを全農からきちんと説明する必要があります。企業とは異なる、互いに助け合うことを原点とする協同組合の存在意義を、組合員に訴えていかなければならないと思っています。
「なくてはならない全農」 「稼げる農業」実現へ事業展開
■所信表明で取組むべき5点を挙げたが、そのねらいを。
第1に掲げたのが、現場直結の「なくてはならない全農」へ、です。全農は単なる経済事業体ではなく、組合員が困った時に頼りになる「現場課題の解決機関」でなければなりません。そのためには情報をきめ細かく集め、現場起点でサービス・機能を再構築し、地域・組合員から「JAのおかげで助かった」「全農があるから成り立つ」と言ってもらえる事業を展開します。
第2に、次代へつなぐ「稼げる農業」の実現です。農業が、単に生活できるだけでなく、豊かな暮らしを可能にする「将来の職業として選ばれる産業」にならなければ、地域に人は戻らず、後継者も出てきません。収益性の向上はもちろん、地域特産品・ブランド商品の開発など、経営指導・相談を通じ、「努力すれば報われる農業」「次世代に誇れる農業」を実現します。
第3は、地域社会の「インフラ」としての全農です。農業と地域は不可分であり、災害時の支援体制を含め、行政や関係機関と連携して地域全体を支える役割を果たします。
第4は、環境変化に屈しない「強固な経営基盤」です。事業の選択と集中、デジタル化による業務効率化等を図り、持続可能な組織を目指します。
第5に、全農の未来を拓く「人材育成」です。若手職員の挑戦機会の創出、現場経験と専門性の両立等に努め、人材を育てることが全農自身の未来をつくるとの信念のもと、多様な人材が活躍できる職場環境を整備していきます。
適正価格に消費者の理解を 職員の力量発揮へサポート
■消費者理解については。
生産者が質の高い農畜産物を作るためにどれだけのコストを要するか、という点は、消費者の皆さんにぜひご理解いただきたいと思っています。理解醸成に向けては、農業やJAグループが果たす役割や機能についての情報発信も強化してまいります。
■経営に現場の声を、スピード感をもって反映させるには。
何事も、いかに実行に移すかが大事です。もちろん、私一人でできることではなく、経営管理委員、理事だけでもできません。全農には数多くの有能な職員がいますので、一人ひとりに各部門で力を発揮してもらえればスピード感が生まれ、課題は解決できると思います。
全農グループは、2030年のめざす姿として、「持続可能な農業と食の提供のために〝なくてはならない全農〟であり続ける」と掲げています。その実現に向かって、今ある体制をさらに磨き、経営者として職員の力量発揮をサポートしていきます。職員がそれぞれ夢を持ち、自らの職務が農家・組合員のためになるという意識で実行に当たれるよう、私自身、全力を尽くして取組んでまいります。



