日本農業の発展と農業経営の安定、農村・地域振興、安心・安全な食料の安定供給の視点にこだわった報道を追求します。

日本農民新聞 2026年7月5日号

2026年7月5日

〈本号の主な内容〉

■このひと
 施設園芸の将来展望
 (一社)日本施設園芸協会
 会長 安岡澄人 氏

■施設園芸・植物工場展 GPEC 2026
 7月15~17日 東京ビッグサイトで開催へ

■蔦谷栄一の異見私見「あと3年? それとも5年?」


このひと

 

施設園芸の将来展望

 

(一社)日本施設園芸協会
会長
安岡澄人 氏

 

 (一社)日本施設園芸協会は6月5日の定時会員総会・理事会で、新会長に元農水省消費・安全局長の安岡澄人氏を選任した。施設園芸の面積や農家数は減少し、足元ではコスト高が経営を圧迫している。一方で、環境制御技術の導入などで施設園芸は転換期にあり、成長の可能性も広がる。将来をどのように展望するか、安岡会長に聞いた。

 

農家の稼ぎとビジネス 好循環へ努力

会長就任の抱負から。

 第1に私のやるべき仕事は、施設園芸業界の皆さんの声を聞き、実情や課題をよく知ったうえで、業界の役に立つサービスを展開していくことだ。この業界に身を置いてきた者でも、ビジネスをやってきた者でもないので、地域セミナーなどの機会を捉えて、よく話を聞いていきたい。

 肝要なのは、施設園芸の農家にきっちりと稼いでいただくこと。そのうえで、施設園芸に関わる様々なソリューションを提供する企業のビジネスも発展していく。両方がうまく循環するように、つまりソリューションが農家の稼ぎにつながり、稼げるからこそソリューションビジネスにも還元されるという好循環が可能になるよう努めたい。

 当協会ができることに限りはあるが、個別企業だけでは取組めないこと、関係者の連携によって初めて可能になることもある。力を合わせて目標とする将来像を定め、成長の種を育て、芽を伸ばす方向へ、微力ながら実質的な役割を果たせればと思っている。

施設園芸の農家数も面積も減っている。

 私たちの暮らしで、1年じゅう野菜が食卓に並ばない日はなく、花が飾られない日もない。施設園芸の重要性は全く変わらない。にもかかわらず、重要さが社会一般に十分認識されているとは言い難い。この認識をもっと高めていかなければならない。

 確かに、施設園芸をめぐる現状は厳しく、強い危機感を持っている。全国の施設園芸面積は、ピークだった1999年の5万3000haに対し、現在は3万7000haとなっている。施設園芸の農家数も2005年の21万戸から25年には12・8万戸へと減少した(データは農水省)。背景には、施設整備や生産に要する資材など、あらゆるコストの上昇があり、施設園芸の収益性を低減させている。そうした構造的課題の上に、さらに中東情勢による原油高というダブルパンチを受け、状況は非常に厳しい。

 とはいえ、施設園芸には可能性も大いにある。この10年、環境制御をはじめとする技術が国内でも本格的に導入され、次の新しい展開に向かう転換期にある。

 日本の施設園芸には成長のポテンシャルがあり、海外と比べ生産性向上の余地もある。新たな課題があるからこそ、解決することによってピンチはチャンスに変えられると考える。こうした可能性を見出し、協会として事業を推進したい。

コスト高と生産性 個別にきめ細かく対処

5年後、10年後を展望するうえで、施設園芸発展の重点は。

 一つは、中東情勢もあって、エネルギー等のコスト高の問題が大きい。現今は「次の加温シーズンの前に燃料等の価格低下を」というのが農家の切なる願いだ。同時に、施設園芸にとってエネルギー問題は中長期的な課題でもある。いかに低コストで脱化石燃料の方向に進めていくか。これに対応する次世代型のソリューションを考えていく必要がある。一つの特効薬はないかもしれないが、様々な取組みを組み合わせることなどで新たな解決策を見出す努力は、施設園芸の将来にとってきわめて重要になる。

 もう一つは生産性の向上だ。オランダや韓国、イスラエルといった先進的な国々に学びつつ、日本もこの10年ほどでかなり生産性を上げてきた。ただ、まだまだ生産性向上の余地があり、そのソリューションを提供し続けることが関係業界には求められる。

 また、大規模な生産者だけでなく、小規模農家を含む多様な生産者に向けて、それぞれに応じた解決策を提供することが大切になる。

 施設園芸には地域性や品目、収穫期など様々な違いがある。夏の高温、冬の低温への対応もそれぞれ異なる。施設というシステムで対処する面もあれば、高温耐性など品種自体で対処する面もある。各種の技術をパッケージにして対応することも重要だ。単一の決まった対処法があるわけではなく、生産者の成長の仕方も多様な中で、個別に、より収量が上がり、コストが下がる対策をきめ細かく講じ、農家の収益を増やさねばならない。

施設園芸の現場に行き農家を巻き込む

会員の声、現場の農家の声をどのように聞いていくか。

 当協会では、会員企業が実際に協会の運営に積極的に関わっている。これは素晴らしいことで、引き続き会員の声が届きやすい協会でありたい。もちろん、施設園芸の現場にも可能な限りうかがいたいと思っている。農家の方々を巻き込むことは、協会として必須の課題であり、施設園芸農家が稼げなければ業界全体の発展はない。これまで以上に現場の農家の声を聞いて支援等を進め、協会に関わってもらえるようにしたい。

 7月15日から17日までの3日間、東京・有明の東京ビッグサイト(南1・2ホール)で協会主催の「施設園芸・植物工場展 GPEC 2026」が開催される。施設園芸関係者が一堂に会する機会であり、私自身、多くの方々と直接お話しして率直なご意見を聞きたい。

 我が国の施設園芸に関わる最新の技術のショーケースのようなイベントでもあり、関係者への情報発信にも努めたい。主催者としての展示では、協会は施設園芸・植物工場における喫緊の課題と、国・自治体をはじめとする各所での対応や新たな取組みについて、パネル・動画・実機等で紹介するコーナーを開設する。接ぎ木ロボットやリアルタイム光合成測定装置等の最先端技術を展示する将来像コンセプトコーナーも設ける。

7月開催の「GPEC」 次世代農業考える場に

GPECの注目点は。

 国内外から230を超える企業・団体が出展する。施設園芸が直面する様々な課題を、コンパクトな形で見渡せる貴重な機会だ。

 初日の15日に行うシンポジウムでは、次世代施設園芸をはじめとする大規模経営上の課題を議論する。16日のシンポジウムは「環境制御型農業生産の新時代へ」と題し、いわば環境制御型2・0の農業のあり方を探る。オランダ、韓国の先進的な取組みの紹介も行う。

 施設園芸を取り巻く情勢が厳しさを増しているいまだからこそ、ぜひGPECに足を運んでいただき、3日間、多様な視点から学び考える貴重な場として活用していただきたい。来場するだけで疑問の解消につながり、将来に向けてのヒントや成長のきっかけ、課題の解決策を発見できると思う。来て絶対に損はないはずだ。

施設園芸の海外展開 日本型技術で対抗

施設園芸の海外への展開については。

 海外展開は、施設園芸の将来にとって、間違いなく一つの大きなカギになる。先進的な国々の中には他国で様々な施設園芸のサービスを行っているところもある。日本の関係企業も、いかに海外にサービスを売っていくかが重要になる。農業機械や農薬など他の業界では、収益源をかなり海外に広げている企業があり、施設園芸も他国との競合を恐れず海外進出を図っていくべきだ。

 その際、他国に対抗できる日本型技術、日本特有のソリューションを武器に、業界として進出に取組むことが大事だと考える。ベースとなる研究開発では、各研究機関との連携も必要になる。

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