日本列島全体が本格的な梅雨に入ったが、このところの農業・農政の動向には梅雨空と同じく鬱陶しく感じることが多い。とりあえず二つの話しを。
改正食糧法案をめぐって6月22日、農民連主催による「食糧法改悪ストップ!院内集会」が参議院会館で開催され、ZOOMで参加した。リアル参加50人、オンライン参加125名と、それなりの盛り上がりを見せた。国会議員の挨拶に続いて参加者の意見表明が行われ、生産農家4名から、各地域の農業の現状等についての報告・発言があった。特に印象深かったのが山形県長井市の生産農家で、令和の百姓一揆の実行委員会代表である菅野芳秀さんの話しだ。「離農者が増加しており、これにともない放出される農地を大規模農家はフォローできていない。」「地元の水田風景は変わってしまった。畔道は若葉の季節でも、手が足りなくて除草剤を使わざるを得ない農家が増え、畔は赤茶けた色に。水田もやはり人手不足で殺鼠剤等農薬の利用を余儀なくされ、小動物が減少してしまった。」「今、残っている農家の多くを占めるのは団塊の世代。団塊の世代は70代の後半。80過ぎての米生産は難しく、あと何年農業ができるか。暮らしを中心とする家族農業だからこそ、苦しくても農業経営をここまで続けてくることができたが、このままでは、あと5年、いや3年で日本から家族農家はなくなってしまう。」
今一つは、本年3月に公表された農林業センサス結果(確定値)についての東大・安藤教授の分析結果で、6月16日の日本農業新聞の一面で報道されている。20ha以上の経営体が20ha未満の経営体の農地を受け入れた割合が、2025年度までの5年間で20%、15年前の4分の1に減少しており、中小農家が離農等で手放した農地について、大規模農家の受け入れ余力は急速に低下。「農家の減る中、既存農家の規模拡大だけで農地を維持することは困難で、農家数の維持・増加が欠かせない実態が浮き彫りになった。」と報じている。これに安藤教授は「農家の数が減少しても、生産性の高い大規模農家に農地を集めれば、全体の農地面積を維持できる段階ではなくなってきている。」「中小農家の減少に歯止めをかけ、農地の受け手となる若手農家を手厚く支援することが、日本農業を存続させる近道だ。」とのコメントを寄せている。
振返って、現在の農政動向を見れば、改正基本法の成立、基本計画の策定を踏まえて、水田政策の見直しとともに、食糧法の改正が図られた。改正食糧法案は?多様化する流通実態の把握強化(届出事業者の拡大、定期報告の義務化)、?備蓄制度の見直し(目的の見直し、民間備蓄制度の創設)、?需要に応じた生産の促進(生産調整方針の廃止、需要に応じた生産に係る責務既定の新設)、がその柱となっている。それなりに農水省も国会も頑張っていることは否定しないが、食料安全保障の柱の一つである備蓄をとっても、本来、国が責任をもって全面的に対応すべきもので、全体に民間任せ、市場任せの流れで、国は姿勢を後退させつつあるようにしか見えない。まして肝心の担い手の確保・育成の議論は欠落しており、現場との乖離は広がるばかり。もはや日本農業は後がないにも関わらずだ。
(農的社会デザイン研究所代表)
日本農民新聞 2026年7月5日号掲載



