日本農業の発展と農業経営の安定、農村・地域振興、安心・安全な食料の安定供給の視点にこだわった報道を追求します。

〈行友弥の食農再論〉「ふるさと」を応援するなら

2026年6月25日

 「ふるさと納税」は納税ではなく寄付だが、その額が税控除の上限額以内なら実質2000円の負担で返礼品が手に入る、お得な制度だ。ネットの仲介サイトには豪華商品が並び、さながら「官製ネット通販」の様相を示す。片山善博・大正大学特任教授(元総務相)ら専門家は税の公平性や応益負担の原則を損なういびつな制度と批判し、筆者もそう考えていた。

 しかし、3月まで地域おこし協力隊として活動した福島県飯舘村では、地元産のエゴマ油をふるさと納税の返礼品にすることになった。役場と相談しながら国への申請と仲介サイトへの登録や発送業務などを担当。注文は月1、2件程度だったが、多少の地元貢献にはなったと思う。

 内心、葛藤はあった。ただ、地場産品の販路拡大も協力隊の任務だ。役場の担当者は「飯舘村に寄付する人は返礼品目当てより、本当に村を応援したい人が多い」と話した。商品に同封する礼状には、押し付けがましくならないよう気を付けながら地域の実情と住民の思いをつづった。

 だが村を離れた今、ふるさと納税にはやはり問題が多いと感じている。先日公表された会計検査院の報告によると、この制度のために2024年度に863億円、23年度は1060億円の歳入減が全国の自治体で生じた。寄付額から住民税の控除額と経費(返礼品の代金・送料、仲介業者への手数料など)を引くと、それだけの差損が出たのだ。

 寄付者に税の控除をした上で返礼品を調達し、仲介業者にも手数料を払うのだから、赤字になるのは当然だ。個別に見れば黒字の自治体はあっても、全体では「ゼロサム」ですらない「マイナスサムゲーム」に陥っている。

 税源が東京など大都市圏に偏在する中、不均衡を是正する財政調整(再分配)は必要だ。しかし、それは自治体間の不毛な「分捕り合戦」ではなく、地方交付税などの制度で公正に行うべきだろう。

 どうしてもふるさと納税がいいというなら返礼品の提供を禁止すればいい。そうすれば純粋に地域を応援したい人だけが寄付するようになり、地方財政全体への悪影響もなくなる。もっとも、それなら元々ある寄付金の控除制度だけで十分な気もするが。

(農中総研・客員研究員)

日本農民新聞 2026年6月25日号掲載

keyboard_arrow_left トップへ戻る