〈本号の主な内容〉
■このひと
IYC2025を踏まえた
26年度の課題と取組み
(一社)日本協同組合連携機構(JCA)
代表理事専務
山下富徳 氏
■農薬危害防止・安全防除運動 展開中
「農薬危害防止運動について」
農林水産省 消費・安全局 農産安全管理課 農薬対策室長
宇井伸一 氏
「安全で安心な食の安定供給を目指して
~農薬の適正使用と社会との信頼構築~」
クロップライフジャパン 安全対策委員長 池本祐志 氏
「JAグループの安全防除運動について」
JA全農 耕種資材部 部長 住田明子 氏
「2026年度 農薬危害防止安全防除運動」
全国農薬協同組合 技術顧問 植草秀敏 氏
このひと
IYC2025を踏まえた26年度の課題と取組み
(一社)日本協同組合連携機構(JCA)
代表理事専務
山下富徳 氏
国連が定めた2025国際協同組合年(IYC2025)の昨年、日本協同組合連携機構(JCA)は各協同組合組織の要として、多彩な事業を推進した。その成果と課題を踏まえ、更なる協同組織の連携強化や社会発信等に、どう取組むのか。3月に代表理事専務に就任した山下富徳氏に聞いた。
協同組織以外に輪が広がる20超の大学に協同組合講座
■就任の抱負から。
JCAとしてIYC2025の経験が、やはり一番大きいです。多くの成果が出た一方で、課題も明確になりました。限られた準備期間の中で、このチャンスを最大限活かそうと、協同組合の認知度や理解の向上に精いっぱい努めたものの、そう簡単には進まないことも痛感しました。
国連で10年毎にIYCが設けられることになりました。次回2035年を見据え、引き続き腰を据えて、長い目で、粘り強く取組んでいきます。協同組合の理念を「学び」「実践し」「発信する」取組みをしっかりと継続・発展させていきたいと思います。
■25年度を振り返っての成果と課題は?
JCAとしては、一にも二にもIYCに全力投球しました。IYC2025全国実行委員会には、協同組合組織だけでなく、全国社会福祉協議会や日本農福連携協会、SDGs市民社会ネットワーク、全国こども食堂支援センター・むすびえなど、賛同する10組織の代表者にも実行委員会に参加いただきました。
国連地域開発センター(UNCRD)、国際労働機関(ILO)駐日事務所も賛助会員に加わっていただきました。
協同組合の輪をちょっとだけ外へ広げることができ、JCAの活動の幅も拡大したと考えています。
常設の事務局としてJCAが存在したこと自体、前回のIYCとの大きな違いです。前回は各協同組合全国組織から兼務・非常勤で要員を出し、事務局を構成しましたが、今回は専任の事務局体制を整えることができました。それによって活動が質・量ともに充実し、協同組織以外の団体とも一緒に、SDGsに関する9つのテーマでシンポジウムを企画するなど、IYCの取組みが広がったと思います。ただ、より広い外部の一般の方々への働きかけや、活動への参加促進は弱く、反省点として残りました。
また、今回は21都道府県にIYC実行委が設置され、他も既存の協同組合連携組織によって県域でのIYC2025実行委による認定事業、後援事業が計192件に上るなど、活発に取組まれました。
特筆されるのは、大学での協同組合に関する講座が、2回のIYCを経て、全国の20を超える大学に拡大したことです。昨年は宮崎大学や明治大学など5大学で開講し、26年度も新たに大阪大学など2大学で開講予定です。若い世代に協同組合への理解を深めてもらうだけでなく、就職の対象として協同組合を検討してもらう機会にもなっており、実際に就職につながった実績も出ています。
国会で「協同組合振興」決議
「学び」「つながる」役割果たす
■JCA2030ビジョン「協同をひろげて、日本を変える―『学ぶ』と『つながる』プラットフォームとして―」に向けては。
協同、すなわち人々が力を合わせる社会に変えていくことで、よりよい社会を実現したい、日本を変えたいというのが、ビジョンで打ち出した願いです。JCAとしては、協同組合や社会課題についての「学び」を出発点に、協同組合間で、また地域の多様な関係者と「つながる」ことで「協同のプラットフォーム」としての役割を果たしたい。これは徐々に広げていくことが大切で、IYCもその良い機会になったと思います。今後も歩みを止めず、少しずつ前に進めていきます。
■政策提言や社会的発信については。
各協同組合組織は、個別の法律によって存立が定められ、所管官庁も異なっています。政策提言・制度要望などもセクターごとに、全中や日本生協連といった全国組織が行うのが基本ですが、JCAでは協同組合税制などのセクター横断的に共通するテーマで情報交換する場を随時開催しています。
昨年5月には「国際協同組合年に当たり協同組合の振興を図る決議」が衆参両院で採択されました。「協同組合を地域づくりの重要な主体として位置付ける」「協同組合の施策を企画・実施する際は、協同組合の定義、価値、原則を尊重する」などとするものです。法的拘束力はなく、直ちに状況が変わるものではありませんが、今後の協同組合政策を前進させる足掛かりができました。そして何よりも関係者を勇気づけた意義は大きいと思います。
一方、JCAでは学識者による研究会から協同組合基本法(仮称)制定に向けての提言をいただき、これを受けて実務的な検討作業を進めています。ただ、実際に制定を求めるかどうかは別の判断となります。現在は実務的な研究の段階です。
将来に不安抱える若い世代
アプローチが今後10年の鍵
■変化の著しい社会の中で、協同組合の果たす役割とは。
社会が孤立化の様相を深め、目先の利己的な利益にとらわれる風潮が強まっていると言われますが、あまり悲観的には考えていません。おそらく他人と協同する機会が身近にないだけで、何かきっかけがあれば人々はつながることができると信じています。信頼して力を合わせることで課題解決につながる体験の場が、きちんと作られれば変わってくるのではないでしょうか。
昨年実施した「協同組合に関する全国意識調査2025」でも、「どのようなテーマの協同組合の活動に参加したいか」との問い(複数回答)に対し、35歳未満のヤング層では「お金の知識に関する活動」を選んだ人が47・9%と最も多く、35~54歳のミドル層でも44・1%と最も多いという結果が出ました。若い世代に、将来の収入・生活への不安が大きいことを示していると思います。「協同組合が力を入れるべきSDGsの項目」(3つ以内で選択)でも、「貧困をなくそう」を選んだ割合がヤング層で25・4%、ミドル層で28・6%と比較的高いです。
今年2月のJCA拡大代表者会議(JCA会員のうち、協同組合中央組織の代表者による会議)では、IYC2025に関して「一般の方を巻き込む力が弱く、若者へのアピールや理解を得る取組みも不足していた」、また認知度向上についても「協同組合を知らない若い世代へのアプローチが課題」とする評価の一方で、「若い世代は特定の分野(教育、ジェンダー、働きがい、パートナーシップ)に高い関心を示しており、そこに協同組合の将来的な発展の可能性がある」という前向きな意見も出ました。若い世代へのアプローチが、今後10年間の重要な取組みになると思います。
若者の活動参加が共通課題
県域連携も後押し
■IYCを踏まえた26年度の取組みは。
IYC2025記念事業として「協同組合による若者・こどものための大きな応援団」の取組みを進めます。これは、実行委に参加した村木厚子全国社会福祉協議会会長(元厚労事務次官)と皆川芳嗣日本農福連携協会会長(元農水事務次官)からの提案がきっかけです。 協同組織は若者の活動参加が各セクター共通の課題になっています。そうした中で、困難を抱える若者・こどもに対し、協同組合ができる支援を実施しようというのが「大きな応援団」です。6月を目途にJCA内に実行委を設置し、活動の具体化に着手します。今年度は、若者・こどもが置かれた状況や支援制度等について「土台となる学び」に重点を置いて取組みます。
他にも、協同組合の組合員・役職員が、協同組合についてきちんと学び直し、一人一人が自分の言葉で協同組合について語れるようにしたい。また、県域の協同組合連携組織は4月に山口、徳島両県で設立され、計44県域に達しました。残る3県も「できるところから」「ゆるやかに」「やってみる」をモットーに連携を後押ししていきます。



