水田政策の見直しが進行している。4月21日に農水省は基本的考え方案を自民党の農業構造改善転換推進委員会に示したことが報じられており、この新たな水田政策の基本的枠組みは骨太方針に反映させる、とされる。新たな水田政策は、昨年4月に閣議決定した食料・農業・農村基本計画に基づき、農業構造転換集中対策を講じつつ、生産面・需要面の双方を強化することをねらいだとする。そしてその見直しの方向性は、基本法が、「生産性向上」と「付加価値向上」により、将来にわたり国民への米をはじめとする食料の安定供給を確保し、「食料安全保障の確立」を図ることにしているとし、水田政策の見直しは、作物ごとの単収向上等による生産性向上を図っていくとともに、その他の支援策で引き続き付加価値向上も図っていくこととされている。具体的には、〈水田活用の直接支払交付金の抜本的見直し〉については、➀非主食用米・業務用米の生産性向上、②麦・大豆・飼料作物等の作物ごとの生産性向上、➂産地交付金の見直し(施策効果の検証、配分方法の改善)を図る。また、〈コメ・コメ加工品の輸出拡大〉〈米粉の需要創出等の国内外の需要拡大〉〈中山間地域等直接支払・多面的機能支払の見直し〉〈新たな環境支払の創設〉が盛り込まれている。
一方、高市政権が掲げる農政の看板メニューは「食料安全保障」「田畑フル活用」「需要に応じた生産」「適正な価格形成」であるが、これらは水田政策の見直しと深く関連するとして、新たな水田政策の基本的考え方は「生産性の向上」に軸足を置く。4月21日付の日本農業新聞によれば、高市政権は「食料安全保障の強化を「危機管理投資」に位置付け、植物工場の推進や米粉に輸出拡大に意欲も示すなど独自色もにじませる。」としており、「経済政策の司令塔として立ち上げた「日本成長戦略会議」では、官民投資優先的に支援する製品・技術のうち、先行分野の一つに植物工場を掲げた。2040年に世界シェア3割を占める姿を描く。」とある。
こうした動きには、正直、唖然とするばかりだ。この、現場の実態・感覚とあまりに大きすぎるギャップ。違和感というレベルをはるかに超えるものがある。令和の米騒動があり、令和の百姓一揆が立ち上がることによって、農地と担い手が激減する実態とともに、米価低迷に苦しんできた米農家の経営実情が少しは理解されるようになってきたかと思われないでもなかったが、期待は完全に裏切られた。しかもトランプによる戦後秩序の破壊と半ば戦争経済への突入、そして温暖化・異常気象の中、農業を競争原理にさらすのではなく、社会的共通資本として国が責任をもって守っていくべきこの局面で、国際的には常識化しつつある所得補償を論外とし、生産性向上、投資対象として位置付けるマヒした政治感覚。2025年農林業センサスでの、農業経営体数はこの5年で22.3%、10年では39.3%もの減少に対し、「農林水産統計」の概要での「農業経営体の減少が続く中、法人経営体は…増加…規模拡大が進展」との、規模拡大を評価するばかりのコメントにもあきれ返るばかりだ。もはや日本農業の現状は土俵を割りつつある。とにかく何よりもまずは現場を直視してほしい。
(農的社会デザイン研究所代表)
日本農民新聞 2026年5月5日号掲載


