〈本号の主な内容〉
■このひと
「関係人口」の提唱者として
㈱雨風太陽 代表取締役社長 高橋博之 氏
■2025国際協同組合年全国実行委員会が開催
〝協同〟がよりよい世界を築く~連続シンポジウム・座談会
第9(最終)回「暮らしを支える医療・福祉」
■新春インタビュー
日本農業法人協会 会長 齋藤一志 氏
離農止める農業インフラ投資が課題
生産基地として、中山間地域に光を
このひと
「関係人口」の提唱者として
㈱雨風太陽
代表取締役社長
高橋博之 氏
地域外に拠点を置きつつ、様々な形で地域と継続的に関わる人々を指す「関係人口」。今や地方創生のキーワードとなったこの言葉を提唱し、地域の維持・活性化に必要不可欠なリーダーとして拡大に努めるのが、㈱雨風太陽の高橋博之社長だ。提唱のきっかけから、「関係人口」をめぐる政策や課題、農協への期待まで、幅広く語ってもらった。
365日そこにいなくても、やれることはいっぱいある
■「関係人口」提唱のきっかけは?
15年前に発生した東日本大震災にさかのぼる。岩手県では沿岸地域の人口減少が続き、沿岸振興は県政の重要課題だったが、そこに震災が起こり、一番弱いところが被災した。
もともと高かった高齢化率がさらに跳ね上がり、若い世代の流出が加速して、残る人々の力だけでは復興が難しい状況だった。しかし、地域の出身者や、ゆかりのある人で、継続的に復興の担い手として関わる人たちは増えた。
僕が通っていた大槌町の安渡地区では実際、ある町内会長から「高橋さんのように、ここを故郷みたいにして関わってくれる人が増えている。これからはそういう人たちと一緒に地域をつくっていく時代にしなければ」と言われた。なるほどと思った。しかも被災地だけでなく、日本全国の多くの地域が人手不足で困っているが、移住は思うように進まないし、移住して365日そこにいなくても、やれることはいっぱいある。そういう人を含めた「人口」を考えれば、人手をシェアできる。そういう関係性を都市とつなげたら被災地の復興も、過疎地が活力を維持していく道も開けるのではないか。そう思ったのがきっかけだ。
「関係人口」を育むうえで「食」がいい手掛かりに
■「関係人口」のイメージとは?
要は、人間にとっての友だち。人間も人生の各ステージで、いろんな友人やパートナーと出会い、時にぶつかり合ったり、あるいは自分の新しい可能性を相手に見つけてもらったりして、視野を広げ成長していく。地域も同じで、外と一切交わらない町だと成長しない。
地域課題というのは、そもそも住民だけでは解決できないから課題として残っているわけで、様々な外の人と交わることで、新しい担い手や新しい視座を獲得し、解決の可能性を模索できる。ただし、観光に来ただけなど1回きりの消費では関わりが生まれない。友人もそうだが、互いに相手を思い、大切にし、付き合いたいと思う人の声には耳を傾けたくなる。
「関係人口」を育むうえで「食」がいい手掛かりになると思ったのは、都会に食べる人が多くいて、地方に作る人がいて、作る力が豊かになれば食卓も豊かになるので、都会の人が関わりやすいと思ったからだ。平たくいうと「関係人口」は「友だち以上、恋人未満」だ。「継続的に関わりを持ち続けるが、いなくなることもある人」という意味で、いなくなる可能性があるから、その緊張感がいい(笑い)と思っている。
一番大事なのは「変革する意思」
■国の政策的な動き、推進の課題は?
既に「地方創生2.0」の基本計画が閣議決定され、高市首相も国会で2地域居住を推進すると発言した。住所地以外の地域に継続的に関わる人を登録できる「ふるさと住民登録制度」も制度設計が進み、早ければ2026年12月にスタートする見通しだ。2地域居住についても2024年、「広域的地域活性化のための基盤整備に関する法律」が施行されている。あとは粛々と進めるだけだ。
従来、定住を前提に社会の仕組みや制度が設計されてきたので、人が都市と地方を往来し、移動しながら生きることを当たり前にするには、全てを変えなくてはならない。
一番大事なのは「変革する意思」だと思う。考えてみると、日本は明治維新後の160年余りで、世界でもまれな東京一極集中の社会を作ってきた。それは、まさに日本人の意思で、強く豊かな国を作るための選択だった。
だから、都市と地方が人口をシェアする社会に変わるためには、まず、そういう社会にするのだという意思を官民ともに持つことだ。
具体的な課題としては、交通費の負担軽減が大きい。航空会社、鉄道会社を含めて議論が進められているが、対象者の特定に関しても「ふるさと住民登録制度」で対応することになる。
また、「関係人口」となるべき都市の人々、具体的には東京の大企業が働き方改革の文脈で議論に加わることがもう一つの大きな課題になる。「ふるさと住民登録制度」を使って、社員を1カ月のうち1週間は自分の望む地方で副業しながら自由に過ごしていい、という大企業が、まず1社出てきてほしい。
都市の強みで地方の課題を地方の強みで都市の課題を解決
■農協に期待する役割は?
「関係人口」の受け入れは、宿泊施設や現地での移動手段(二次交通)の確保など個人の農家では非常に手間がかかる。
農協は点でなく面で対応できる組織で、人手不足についても産地ごとにエリア単位で対策に取組んできたので、都市から来る人々と農家の間に入って調整するハブの役割を果たしてもらえるとありがたい。
既に我々も、㈱農協観光とは連携の話を進めている。農協観光も、観光に農業体験を入れるなど「関係人口」化や新規就農につなげたいという考えで、地方の農業の担い手不足を解決するという目指すところは同じだ。
都市と地方が連帯し、都市の強みで地方の課題を、地方の強みで都市の課題を解決したいというのが、「都市と地方をかきまぜる」という当社の理念に込めた思いだ。


