日本農業の発展と農業経営の安定、農村・地域振興、安心・安全な食料の安定供給の視点にこだわった報道を追求します。

〈蔦谷栄一の異見私見〉〝失われた25年〟から脱却の年に

2026年1月5日

 新年あけましておめでとうございます。この年が、崖っぷちに追い込まれた日本農業の、再生にむけたスタートラインとなることを切に祈りたい。

 今後の農政スケジュールは、昨年末の補正予算も踏まえて、基本計画の目標年度となる2030年度に向けて構造転換集中対策が加速されることになる。➀農地の大区画化、②共同利用施設の再編・集約化、➂スマート農業技術・新品種の開発・実装、➃輸出産地の育成、が柱となる。あわせて27年度からの新たな水田政策に向けての見直しが予定されており、➀水活交付金の抜本的見直しによる作物ごとの生産性向上等への支援増強、②不安なく増産に取り組めるような新たな政策への転換、を目指そうとしている。

 ここでしっかりと確認しておきたいのが、食料・農業・農村基本計画の策定にともない衆参両院の農林水産委員会で、27年度からの水田政策の見直しについての重ねられてきた議論を踏まえて、25年の3月25日に与野党の全会一致で採択された基本計画にともなう決議である。その前文では「農業就業者数および農地の減少に歯止めがかからず、農村人口の減少が進む中で生産基盤が弱体化」「農村の中には集落機能の維持さえ懸念される所もあり」「食料自給率は一度も目標が達成されたことがない」との率直な反省が明記された。そしてこれを受け〈水田政策の見直し(飼料用米など意欲を損なわない制度を設計、納税者の理解を図りつつ直接支払制度を設計、多面的機能を念頭に水田面積を維持等)〉〈中山間地域等直接支払い交付金の支援拡大〉〈米輸出2030年に35万tの目標達成へ、国際競争力の高い産地の育成〉〈食料の価格形成で実効性ある仕組みを構築〉〈食料自給率向上へ農地集積、多様な農業者の取り組み促進〉〈日本型直接支払制度の在り方を検討〉〈既存予算の他に別枠予算を措置〉等が明記されている。米輸出の拡大等について異論はあるが、水田政策の見直しについて生産者が意欲を損なわない制度設計、直接支払制度、多面的機能の重視、水田面積の維持が明確にされており、あわせて中山間地域等直接支払拡大等が強調されているなど、今後の見直しの方向がクリアに整理されている。まさに令和の米騒動を踏まえて、食料安全保障の確立に向けて必要とされる基本メニューは整理済であり、しかも与野党の全会一致で既に決議されている。

 そもそも1993年のガットウルグアイラウンド合意を受けて農産物貿易の自由化に対処していくために食料・農業・農村基本法は作られ、直接支払制度そして農村政策・社会政策も動員して日本農業を守っていくことが宣言されている。それから既に25年余が経過したが、規模拡大と生産性向上に偏重し、これらの本格展開を避けてきたツケが、今日の担い手および農地の急減であり食料自給率の低迷である。

 本命の直接支払制度と農村政策・社会政策の両輪での政策展開を実現していくために、政府も民間も全力投球の時だ。JAグループも、財務省を動かしていくだけの市民・消費者を含めて国民運動を展開していくとともに、地域自給圏づくりをリードし、現場の取組事例づくりを重ねていくことが必須だ。時間は乏しく、これがラストチャンスかもしれない。

(農的社会デザイン研究所代表)

日本農民新聞 2026年1月5日号掲載

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