日本農業の発展と農業経営の安定、農村・地域振興、安心・安全な食料の安定供給の視点にこだわった報道を追求します。

日本農民新聞 2025年7月5日号

2025年7月5日

〈本号の主な内容〉

■このひと
 JA女性組織の活動展開
 JA全国女性組織協議会 会長 西川久美 氏

■JA全農 令和7年度事業のポイント
 施設農住部 谷健太郎 部長

蔦谷栄一の異見私見「農協の存在意義と系統共販のあり方」


 

 

このひと

 

JA女性組織の活動展開

 

JA全国女性組織協議会
(JA全国女性協)

会長

西川久美 氏

 

 JA全国女性組織協議会(JA全国女性協)は5月22日に開催した通常総会で、令和7年度の活動計画を決定するとともに新役員を選任。新会長に西川久美氏(愛媛県・JAにしうわ)が就任した。西川新会長に抱負やJA女性組織のこれからの活動について聞いた。


 

フレミズ世代と女性組織の橋渡し役として

会長としての抱負を。

 今まで女性組織の先輩方が積み上げてきたレールを未来へつなげていくことが私の役割だと考えている。

 JA女性組織として取組むべき課題は年々増加している。女性組織の部員は増えるスピードを減るスピードが大きく上回り、近年は年2万人ほど減少している。特にコロナ禍は部員の減少に拍車をかけた「魔の3年間」だった。コロナ禍が収束し対面による活動ができるようになっても、女性組織の活動よりも家で自分の時間を過ごす方がいいと辞めていく部員もいた。でもコロナのせいばかりにはできない。

 今回の新しい役員体制では、50代前半の3人が理事として就任した。フレッシュミズ世代に近い年代の方が入ったので、期待している。フレッシュミズ組織の育成に力を入れていく。どのようにフレッシュミズの部員を増やすかは難しいところだが、活動に参加した女性からきっかけを得ることで、フレッシュミズ活動を広げる引き出しを増やしてほしい。

 そのためには、今所属している若い世代の部員の話を聞き、どうすれば女性組織が魅力的に見え、部員が入ってくれるかを一緒に考えること。そして新しい役員と意見交換し、各県の取組事例を集め、それぞれの県に合ったものを提供していくことが必要だと考えている。

 

「あい♡」を持った活動を展開し絆を深める

JA女性3ヵ年計画活動重点テーマについて。

 JA女性組織3カ年計画「『あい♡』からはじまる 『元気な地域』を みんなの力で」は、「助けあい♡」「学びあい♡」「育てあい♡」を活動重点テーマとして掲げている。食農教育やフレッシュミズ組織の設置・育成、仲間づくり、防災対策などの女性組織としての活動全ては、この活動重点テーマに含まれるものだ。

 「あい♡」は、女性の思いやりや愛情を表していると思っているので、愛情を持った活動を進めていきたい。

 

女性も当事者として取組む意識を

米問題や防災への認識は。

 ここ最近の米問題については、価格への認識が消費者と生産者の間に差があるように思う。また輸入米が今より増えると、国産米価格が暴落し、生産者がつくらなくなってしまう可能性がある。

 これらの諸課題は、食料安全保障はもちろん、生産者だけではなく、様々な消費者にも関わってくるものだ。女性を対象とした、生産者・消費者がともに声をあげることの重要性や、農家が再生産できる適正価格などを学ぶ勉強会も必要ではないかと考えている。

 防災は女性組織活動とは切り離せないもの。例えば、災害が起きた時の炊き出しは多くの女性組織が行ってきた。しかし災害が頻発する中、それだけではなく、災害時にすぐ動くことができる体制を構築することが重要な要素になる。家の光協会とも連動し、平時から防災について学んでいく。

 ここで焦点になるのは、JA運営への女性参画ではないかと思う。現状として、農業はまだまだ男性社会だ。意見を出したくても、家を空けられずにいる女性はたくさんいる。JAとしても、女性が役員として活躍できる仕組みを構築していただきたい。

 

JAグループとの連携で多様な活動を広げる

JAグループとの連携は。

 女性組織にとってJAグループはよりどころとなる大切な存在だ。生産者はもちろん、JAがあるからこそ活動ができる。

 JA全青協や青年組織は一緒に活動していく重要なパートナー。タッグを組み、様々な活動に取組んでいきたい。食農教育でも、女性は食育、男性は収穫等の実技など得意分野が分かれる。地元では、みかんの収穫体験は青年組織が行い、収穫したみかんのジュースやジャムへの加工は女性組織が担当することで連携が取れている。バランスを取りながら実施していきたい。

 全農とも、エーコープマーク品の率先購入はもちろん、情報交換し連携をすすめていきたい。

 

地元の取組みに全国の優良事例を取り入れる

女性組織としてどのように活動を伝えていくか。

 まずは情報発信が重要だ。

 JA全国女性協は通常総会時に、仲間づくりに関する表彰を行っている。表彰された女性組織の取組みを資料としてまとめ、各県の女性組織に配布している。

 各県や各地の女性組織では、取組めること、取組むべきことが異なる。そこで資料から自分たちの地域の課題に近い事例を見つけ、その事例の解決策を参考に課題の解決に取組んでもらいたい。またそこで良い事例があれば、全国の女性組織にも広げていきたい。

 SNSを活用した情報発信にも取組む。地元のフレッシュミズはチャットを使用した意見交換が盛んだ。今年は魚捌きを学ぶ料理講座など、4つのイベント・行事がチャットの意見交換で決定した。フレッシュミズの運営は若い世代に任せ、必要があれば助けていきたい。

 

子どもたちがみかんに関心を持ってもらう活動に

地元の女性組織の活動は。

 地元の農家はみかん農家が多く、どうしてもみかんに特化した活動になる。オレンジの輸入自由化を経て、傷がついたみかんなど規格外のものを女性組織で活用したことをきっかけに、活動を広げていった。規格外のみかんの加工をはじめ、みかんを使った料理コンテスト、保育園や小学校を対象にみかんに特化した食農教育を実施している。

 特に食農教育では、「みかんをあまり食べたことがない」という地元の子どもたちの声を受け、コロナ禍前まで「みかんツリー」に取組んでいた。子どもたちにみかんを食べてもらい、残った皮をクリスマスツリーに飾ってもらったことが印象に残っている。

 地元や県の女性組織の会長や全国の理事になったことは、ある意味タイミング、めぐり合わせだったと思う。全国の理事の方と話した経験は私の財産だと感じている。

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