愛知県といえばトヨタ自動車、がすぐに頭に浮かぶように、自動車や機械等の製造業が盛んであるが、渥美半島の電照菊や施設園芸、名古屋コーチンがよく知られるように農畜産業も盛んで、農業産出額約4分の1を畜産が占める畜産大県でもある。
名古屋から西に名鉄電車を使って15分のあま市に、㈱堀田萬蔵商店を中心とする堀田グループの工場があり、友人からの誘いに乗って見学してきた。畜産物の資源リサイクルを業とするグループであるが、食用とならない不可食部位を食品原料・飼料・燃料等に再生利用するレンダリング事業、原皮・皮革事業、ペットフード事業の三つの事業からなる。
話しは一転するが、牛は概ね生体重量700kgで正肉となるのは290kg、その42%にすぎない。牛は58%が、豚、鶏は50%が畜産副産物となる。すなわち家畜の正肉を食べれば、それと同じか、それ以上の畜産副産物が必ず発生するわけで、もともと畜産業はこの畜産副産物の発生を必然としており、これを有効に生かして再利用していくことによって成り立っているもので、これ抜きには存在し得ない産業なのである。
畜産副産物は、内臓肉は関東ではモツ、関西ではホルモンと呼ばれ、副生物業界を通じて食品として利用・消費される。皮は原皮業界によって原皮とされ、革製品とされる。骨・脂肪等はレンダリング業界によって、クッカーと呼ばれる釜で加熱・攪拌・乾燥させたうえで、油脂と固形分に分離される。そして油脂は牛脂やラード等の食用油脂や、石けん、グリス等の工業用製品の原料として利用され、固形分については有機質肥料や飼料、ペットフード等の原料とされる。一部、焼却されるものもあるが、基本的にはほとんどが有効利用され、循環されている。レンダリングは完全に装置産業化されているだけでなく、脱臭技術も進歩しており、事前に抱いていたイメージとはずいぶんと違ったものであった。
話を聞くと、内臓肉は2001年のBSE発生にともない消費が落ち込み、その後微増傾向をたどってはいるものの、BSE前の水準とは大きな開きがあるという。また原皮はEU等でのアニマルウェルフェアの広がりにより合成皮革へのシフトが激しく、輸出が大きく落ち込んでいるだけでなく、価格も低落しており、ピークの2013年には牛・豚皮あわせて150億円を超えていた輸出額は21年では90億円を切るなど、経営環境は厳しい。さらには設備の老朽化もすすみ、設備の更新を迫られてもいるようだ。
言うまでもなく肉を食べるということは1頭丸ごと命をいただくということである。生きている間の命を尊重するアニマルウェルフェアも大事だが、副産物を有効活用して成仏させてやることはそれ以上に大事なことかもしれない。出てきた畜産物を全面的に、しかも早く受け入れて処理をしていく仕事は強い公共性を有してもいる。中京経済圏の中で、こうした仕事を通じて堀田グループは持続可能な「都市型地域循環型社会の構築」を目指している。肉を食べる消費者と行政は、是非ともこの構想を共有し、支援していってほしいものだ。
(農的社会デザイン研究所代表)
日本農民新聞 2022年12月5日号掲載