日本農業の発展と農業経営の安定、農村・地域振興、安心・安全な食料の安定供給の視点にこだわった報道を追求します。

日本農民新聞 2021年9月15日

2021年9月15日

このひと

 

4Hクラブの活動方向

 

全国農業青年クラブ連絡協議会(4Hクラブ)

会長
宮本 健一 氏

 

「未来志向」で今を生きる
身近からの活動を積み重ねて

 

 全国農業青年クラブ連絡協議会(=全協、4Hクラブ)は、7月総会を開催し、新会長に宮本健一副会長(石川)を選任した。全国約1万人の若い農業者を中心に農業経営向上に向けて様々な活動を展開する同会のこれからを新会長に聞いた。


 

全国の目標となるような地域づくりから

自身と4Hクラブの出会いから。

 神戸で大学を卒業しホテルマンを3年間務めた。9年前に生家に戻り就農し、声をかけてもらい仲間をつくりたいという思いで4Hクラブに入会した。非常にモチベーションが高い会社で社会人経験を始めた自分にとって、4Hの活動はもっと情報発信すべきだし交流を活発化すべきだとの思いがあって積極的に取組んでいるうちに、徐々に組織に馴染んでいった。

 就農してこの地域を引っ張っていきたいという思いが湧いてきた。全国の目標となるような地区にしたいとビジョンを掲げ地元・小松能美地区農業青年グループの会長となり、全国段階の理事、副会長を務めてきた。

 地域のトップであった時は、商工会議所と連携しもっと販売につながるような活動や、豪雪被害の復旧支援などにも取組んだ。平成30年の大雪では地域のハウス700棟ほどが倒壊した。地域を支える活動を展開している組織として、クラウドファンティングで資金を集め電動ノコギリを購入し地元の3JAに寄付し、復旧に一役かった。その後ノコギリは、4Hクラブ同士で連絡を取り合い令和元年の台風で大きな被害を受けた千葉に貸与し、何百棟ものハウスの復旧に活用された。

 令和元年度からは、首藤元嘉会長のもとで全協の副会長を2期務めた。通常全国の役員の任期は1年だが、コロナ禍で活動に難しい判断が迫られているなか任期を継続し、全国農業者会議もオンラインで開催。4Hクラブのホームページを新しくつくり、賛助会員制度も創設するなど頑張ってきた。

 

「拡大から濃縮へ」ビジョンづくりで持続性を

今年度の活動のポイントは?

 スローガンは「未来志向~過去に学び、未来を考え、今を受け入れ、今を生きる~」。コロナ禍で当たり前が当たり前でなくなり、当たり前なことに大きな価値が生まれた。「会うこと」、これまで築いてきた絆が希薄にならないよう身近なところから動きだそう、という思いが込められている。将来に向け今出来ることにしっかり取り組む、未来に希望をもち現実を変えていきたい。

 全国としては大きなイベントの開催は引き続き難しいと思うが、地区クラブや県単位なら何か出来るかもしれない。その小さな取り組みを続ける行動が、未来の4Hを創ると信じている。こちらからも全国リーダー研修会やオンラインセミナー等で積極的に情報を発信していく。今年は創立66周年。「拡大から濃縮へ」。クラブ員・各県の満足度を上げることで、参加する意味のある組織にしたい。

 創立70周年に向けたビジョンの策定にも取り組む。今後の若手農家・農業経済にとってどのような存在である必要があるのか。4Hとしての理想の姿からバックキャスティング手法で作成し、全協としての指針を示すことで連続性のある活動を展開し、組織として成長し持続性・自主性のある団体を目指したい。

 

よりレベルの高い学びの場の提供を

これからの農業や活動をどのように捉えるか?

 我々若手農業者世代がどのような革新的な農業に取り組めるかが一つの課題となるだろう。過疎化が進む農村にあって、自分達が仲間内で楽しむような〝仲良しクラブ〟だけであってはならない。一昨年からは日本農業法人協会の大会にも参加しているが、よりレベルの高い学びの場を提供したいと思っている。

 法人等、雇用労働力を抱えるメンバーも多いが、そうした所で従業員が学べるような組織にもしていきたい。

 今の政策は、新規就農者の獲得が先行しているが、同時にこれらの人々に農業を継続してもらい離農率を下げる取り組みにも力を入れるべきだ。

 それより増して必要なのは、事業継承の課題だと感じている。これは組織として取組まなければ、なかなか若い世代が育たない。JAにはぜひそのつなぎ役の機能を発揮していただきたい。

 近年、異常気象により先を読んだ取組みが難しくなっているなかで、持続可能な農業は自分自身の課題でもある。農水省の「みどりの食料システム戦略」では化学肥料や農薬の削減等を目標にしているが、その前に骨格である土づくりなど見えない部分に注目していくことが大事だ。長い目で見てリスクに対応していくことで、量より質を確保していくこと、また価格も含めて消費者の意識も変えていくことが課題になると思う。

 JAの青年組織は、4Hの先輩組織であり、政策提言なども積極的に行っているが、農家数が減少しているなかで、単体で行うより農業法人協会の若手や我々など他の生産者組織と一緒に、声を届けていく工夫が必要ではないか。

 

農業が人をつなぐ手段になるような活動を

自身の営農のこれからは?

 とにかく地区が大好きで、地区の田んぼを守っていきたい。今は19haほどだが数年後には40haくらいの営農を想像している。

 販売面では、自分自身が成長していくためにも、今2割強の直売比率を3割強までもっていき、互いの顔が見える関係づくりがメインの農業をすすめていきたい。

 お客さん同士、農業と地域の人、自分とお客さん…人を繋げられる手段として農業があるような活動ができればいいな、と思っている。


〈本号の主な内容〉

■このひと 4Hクラブの活動方向
 全国農業青年クラブ連絡協議会
(4Hクラブ)会長
 宮本健一 氏

■JA全農 2021年度事業のポイント 畜産・酪農事業
 畜産総合対策部 高橋龍彦 部長
 畜産生産部 由井琢也 部長
 酪農部 深松聖也 部長

■家の光協会 ハッピー マイライフ『家の光』12・1月号普及活用全国特別運動

■かお 農林水産省 消費・安全局長に就任した 小川良介 さん

■かお 農林水産省 農産局長に就任した 平形雄策 さん

■クローズアップインタビュー
 共栄火災海上保険(株) 代表取締役社長
 石戸谷浩徳 氏

■農研機構のこれから 第5期中長期計画の推進方針(3)
 スマート生産システムの研究開発戦略(セグメントⅡ)
 農研機構 理事(研究推進Ⅱ担当)
 梅本雅 氏

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