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農林中金が十文字丸善スープ(岩手)の工場建設に融資対応

2020年8月31日

原料製造から製品販売まで新たな食農バリューチェーン構築

 農林中央金庫は、今月に工場の操業を開始した㈱十文字丸善スープ(岩手県久慈市、十文字保雄代表取締役社長)の工場建設資金2653百万円の融資対応を行った。

 十文字丸善スープは鶏卵製品生産・販売で国内大手の㈱十文字チキンカンパニー(岩手県二戸市、十文字保雄代表取締役社長)と、天然調味料を製造する丸善食品工業㈱(東京都板橋区、竹本博則代表取締役社長)の共同出資により、2018年4月に設立されたスープ製造会社。同社設立は、十文字チキンカンパニーから鶏ガラの有効活用ニーズを農林中金が捕捉し、丸善食品を引き合わせたことを契機に検討が開始され、以降、農林中金では工場建設資金の対応など事業サポートを行っている。

 約11万羽/日の鶏肉を加工する十文字チキンカンパニー久慈工場から生じる鶏ガラ(約35t/日)を十文字丸善スープの工場でスープやエキス・オイル等に加工した後、大手食品メーカーやラーメンチェーン等に販売される。今後数年以内に年間製造量1500t、出荷額7億円を目指す。工場の稼働により、原料製造から製品販売にいたる新たな食農バリューチェーンが構築されるとともに、久慈工場で生じる新鮮な鶏ガラが有効活用される。また、利用後の鶏ガラは家禽の餌の原料にリサイクルされるため、食品ロス・食品廃棄物の削減につながるとみている。なお、同工場では地元・久慈市の住民24名を雇用し、地元での雇用創出を通じた震災復興および地域活性化にも貢献する。

 農林中金では今回の融資対応について「食品ロス・食品廃棄物の削減、地域雇用の創出を通じて、農林水産業の持続可能性確保にも貢献するものと考えている」、今後については「農林水産業の持続可能性確保に向けてサステナブル経営を推進するなか、生産者・産業界・消費者をつなぐ食農バリューチェーンの架け橋となって、総合的なソリューションを提供することを通じて、環境・社会課題の解決に貢献していく」「投融資などの事業活動を通じて、農林水産業や地域社会の持続的な発展を目指し、新たな価値創造に挑戦する企業をサポート・応援していく」とコメントしている。

「地元が誇る工場に」と十文字社長

 新工場は、十文字チキンカンパニー久慈工場に隣接。鉄骨造り2階建て、延べ床面積2525㎡、敷地面積6245㎡。工場建設について十文字丸善スープでは、2018年8月に久慈市と企業立地協定を結び、2019年2月には津波・原子力災害地域雇用創出企業立地補助金の交付が決定し、工事が進められてきた。

 このほど行われた竣工式で十文字社長は「新型コロナウイルスの影響で外食産業が落ち込んでいるが、必ずいい成果をあげられると信じている。地元が誇る工場になるよう努力をしていきたい」などと挨拶した。工場竣工にあたり遠藤譲一久慈市長は「原料の生産、加工、製造までの工程が地域内で行われる事業は、地域経済循環の視点、他の生産物における実現可能性としても地域内への波及が期待される事業モデルである。市としても様々なフォローアップにより事業を円滑に進めることができるよう、最大限の支援を継続していく」等と祝辞を寄せた。

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