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農林中金等が養蜂業を通じて里山再生に取組む農業法人に「復興ファンド」出資

2020年7月20日

 農林中央金庫は、農業法人向け投資育成ファンドを運営するアグリビジネス投資育成㈱(アグリ社)と連携し、㈱ONE DROP FARM(千葉県市原市、豊増洋右代表取締役)に対して、2019年度台風15号等を対象とした「復興ファンド」を通じた出資を行った(出資額10百万円)。

 出資先のONE DROP FARMは、「養蜂で里山を再生する」というコンセプトのもと、農業生産の条件不利な中山間地域における循環型農業の実現を目指し、地域と連携しながら養蜂や有機野菜の生産・販売等を行っている。耕作放棄地や離農農地は有機野菜の生産圃場への転換を、生産条件がより厳しい山林等は、地域の協力を得ながら「蜜源」としての土地整備を行い養蜂業を成立。すでに2・1haで有機JAS認証を取得している。また、里山の景観を生かした森林・蜜源散策のような体験学習や、企業研修等の需要に応じるための拠点の整備だけでなく、蜂蜜関連の加工品開発を手掛けており、農業の条件が不利であっても地域の特性やネットワークを活かすことで、高い付加価値を付けた製品の製造・販売にも着手している。こうしたなか、2019年9月以降の台風や大雨等によって、農業用ハウスや養蜂の巣箱への被害、また道路寸断等による来訪者向け催事の中止など大きな影響を受けた。

 こうした事情を背景に、農林中金は、ONE DROP FARMの取組みが中山間地域での循環型農業の新しいモデルになりうるものと評価し、アグリ社と連携のうえ出資を実施。同社の「台風災害を受けた農業用ハウスの再建費用および営農再開にかかる運転資金」「地域の特性を活かした農産加工品の開発・販売のための資金」に充てられる。

 農林中金では今回の出資について、「ONE DROP FARMの循環型農業の実現に向けた理念に共感し、今回の出資に至った。復興ファンドによる資金供給を通じ、ONE DROP FARMの中長期的な財務基盤の安定化と台風被害からの復興をサポートすることで、循環型農業の実現、地域の特性を活かした農産加工品の開発・販売等の後押しを目指している」と説明。今後も「事業性評価による経営課題の見える化・ソリューション提案や販路拡大の支援、あるいは持てる機能の提供等を通じて、ONE DROP FARMの事業をサポートしていきたい」とコメントしている。

 農林中金では、2012年2月から「復興ファンド」の取扱いを開始。東日本大震災等で被害にあった農業法人等を対象に、出資により金融支援を実施している。また、昨今の度重なる自然災害等による農林水産業の生産基盤に対しての甚大な被害状況に鑑み、2020年1月から、自然災害も対象としている。

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