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日本農民新聞 2019年3月12日号

2019年3月12日

このひと

農業法人が期待するJAグループ商談会

 

(株)HATAKEカンパニー
代表取締役社長

木村誠 氏

 

 

商談会は〝刺激〟の場
戦略的に準備し訴求力強化へ

 

 JA全農とJAバンクは3月12・13日の両日、第13回「JAグループ国産農畜産物商談会」を、東京・丸の内の東京国際フォーラムで開催する。全国の生産者、JA、県連・県本部等がバイヤーと地元の農畜産物・加工品の商談を行い、新たな販路の創出を図る。第1回目から出展し、ベビーリーフの生産からパッケージ・物流までを手掛ける茨城県の(株)HATAKEカンパニーの木村誠社長に同社の事業と商談会への期待を聞いた。


 

ベビーリーフ中心に年商10億超

農業経営の経過と概要は?
 有機農業がやりたくて平成10年4月に私と家内の2人で茨城県つくば市に面積50aの木村農園を立ち上げて農業を始めた。その後、販売部門の法人化、販売と生産を統合した農業生産法人の設立、近隣の農業生産法人との経営統合を経て、28年8月から現在の「(株)HATAKEカンパニー」に商号を変更して事業を行っている。
 会社は、つくば市を拠点に県内5か所・約90haの自社圃場を持ち、北海道から九州までの提携生産者とともにベビーリーフを中心にした野菜を生産、それを自社で商品にパッケージングして、自社の冷蔵トラックで市場や取引先まで365日配送している。ベビーリーフは一日平均1200kg出荷し、全体の売上げは3年前に10億円を超えた。
 取扱品目は、農業を始めた時から作っているベビーリーフ。ほかにはホウレンソウ、パクチー、ルッコラなど葉物野菜、それに経営統合した法人が生産していたカボチャ、馬鈴薯、葉ボタンもつくる。職員は全体で160名で、そのうち社員は60名、100名がパート。圃場で野菜をつくる農業生産部門と、収穫した野菜をパッケージして商品にする製造部門があり、それぞれ約半数ずつの職員が担当している。

 

商談会で繋がり拡大した取引先

国産農畜産物商談会との関わりは?
 第1回目の開催の時に全農から声を掛けていただき出展した。それから毎回欠かさずに出展している。当社の組織には営業を担当する部署がなく、このJAグループの商談会が唯一の営業の場面になる。現在の取引先は約150社あるが、商談会のお陰で取引が始まったというところが多く、商談会でつながった方に紹介されたお客さんや、商談会のホームページでベビーリーフを扱っているところを探して、当社に問い合わせてくれたお客さんもいる。
 1回目から3回目までは当社ブースの回りは人だかりだった。当時はベビーリーフを作っている農家の数が少なかったので〝飛ぶ鳥を落とす勢い〟というが、この間に取引先がどんどん拡がった。ほかのブースはほとんどがJAの出展だったので、法人が出展しているのも珍しく目立ったのだと思う。
 その後はベビーリーフの作り手が増えてきて落ち着いてきたが、圧倒的にこの商談会がきっかけで取引先が増えた。
 何よりもいろいろな産地と一緒に出展すること自体が大いに刺激になる。特にJAとぴあ浜松はすごい。あの訴求力を目指しているが、まだまだそこまでは届かない。もっと戦略的に計画的に準備をして、お客さんにアピールしたいと思っている。

 

髙い栄養価を再度アピール

ベビーリーフの特徴・商品性は?
 昔、サラダといえばキャベツとトマトとキュウリの3点セットが定番だった。そこに洋菜の玉レタスが加わって、それ以降は次第に多様化が進んだ。ベビーリーフはその多様化の走りで、いろいろな種類の野菜の葉がブレンドされていて、味も色も香りも、一度に楽しめる。そして野菜の幼葉なので栄養価が高いことが一番のセールスポイント。
 当社では、栽培している8~9種類から、美味しそうな彩りで栄養価が高くなるように5~6種類をブレンドし、パッケージしている。量目が異なる商品、JAS有機認証の商品、リーフレタスとのミックス商品もラインナップする。
 ただし最近は、生産者・生産量が増えたので価格が下がってきたこともあり、カット野菜と変わらない位置づけになっていることは残念だ。ベビーリーフの関係者は、本来の価値である高い栄養価をアピールして、もう一度盛り上げなければならないと思う。

 

8割が量販店との契約販売

商品の販売先や販売方法は?
 農業を始めた時が加工業者との契約栽培だったので、当初から予め売り先を決めた契約栽培・契約販売を続けている。
 商談会で興味を示したお客さんには、期間はいつからいつまで、単価はいくらという話をして契約を交わす。ただ農産物の契約販売では契約書はなく、約束した量が間違いなく穫れるという保証もない。時期によっては生産できない野菜もある。お客さんから量を減らす指示があれば、出荷も少なくなる。そんなことを繰り返してきたが、最近は生産規模も取引先も増えて、やり繰りができるようになってきた。契約販売を続けてきて良かったと思う。
 販売先は農業を始めて3~4年目に量販店中心へシフトして、現在は8割が量販店になった。理由はパッケージ商品にして販売するのと業務用で出荷するのでは価格に大きな差があること、そして業務用は使われるメニューが終われば取引量も激減するが、量販店は量が多少増えたり減ったりしても、突然大きく変化することがないこと。
 しかし、量販店への販売が多くなってきた時には壁があった。

 

納期に対応し販売拡充

自社で物流を行う理由は?
 商品を自分で届けることは会社の近くしか出来ないので、取引が広がった時に物流会社へ配送をお願いした。まだ規模が小さく量も少ないため、近くの国道を走る便に途中で立ち寄ってもらい、一緒に運んでもらっていた。ある時、引き取りに立ち寄れないと言われ、20km離れた物流会社まで持ち込むように言われた。商談の最後でお客さんが希望する時間に納品する物流を組めず、取引が成立しないということも沢山経験した。
 そんなこともあり、取引を増やすには、できる限りお客さんの希望に応える必要があると感じて、3年前の経営統合を機に物流のプロを集めて事業を立ち上げた。
 いま納品で一番厳しい条件は、16時に注文を受けて20時までに栃木県に届けるというもの。自社の物流にしてからは、この注文にも対応出来るようになった。お客さんに任せられる産地だと認識してもらえば、長く安定した取引ができる。商談を一つ一つ勝ち取って販売を伸ばしてきた。物流は販売拡大のための大きな武器だと思う。

 

栽培担当者は同じ畑で同じ品目を
周年安産生産の工夫は?
 生産部門は、圃場のあるつくば・筑西・石岡・霞ヶ浦・小美玉の県内5か所のエリアに品目を割り振り、エリア長を配置して、担当の社員とパートで栽培する。生産現場は野菜と土と向き合って仕事をするので、担当者が変わると、初めからやり直すことと同じになる。
 農家は自分の畑と何年も向き合って作物を栽培している。何をすれば良いか解っている。努力すれば良い品物が穫れて量も安定する。
 過去には質と量が安定しない時期もあったが、しっかり腰を据えて、同じ人が同じ畑で同じ品目をしっかり栽培することが一番の近道と改善した。良品生産ができれば歩留まりも選別の手間も掛からず利益につながる。
 また、農業を始める前に勤めていたミネラルを扱う会社の営業先の農家で、土づくりをしっかりすれば病害は起きないということを学んだ。この基本からぶれずに、土づくりを重視した農業をしようと思ってやってきた。
 畑が1ha規模になった時、機械を買う余裕がなく、堆肥を散らすことに困った。畑が100ha規模になったいま、山に土地を借りて堆肥事業を行っている。十分に機能を発揮するまでに至ってないが、土づくりのベースになる堆肥をしっかり作り、提携する生産者にいつでも安価に散らしてあげられるようにしたいと、常に使える堆把を準備している。

 

全農が周年供給へ産地つなぐ支援を
JAグループとの関わりは?
 農業を始めるとき、どうして良いか分からず当時の豊里農協に行き、面倒を見てもらい、組合員になった。平成15年に全農いばらきが大規模農家・農業生産法人など担い手の経営支援・連携強化を図るアグリ開発課を設置し、当社は農協の推薦を受けて県本部の担当者と相談や提案のやりとりが始まった。その中では、大量に播種するベビーリーフの種子購入の提案が、どこよりも安かったので、以来、種はJAをメインに購入している。トヨタ自動車との勉強会を契機にしたパッキングのライン化のカイゼンで、製造効率が1.5倍になり会社の成長につながった。出資の提案もあり、15%未満の出資でゆるい繋がりを続けている。
 JAグループとの関係で一番有り難いのは情報。経営拡大するため農地を探している時は、全農が直ぐに調べて農地を紹介してもらった。販売でもVFステーションから紹介されたお客さんとは今でもJA経由の取引を続けている。
 大分の農場を立ち上げたとき全農大分とつなげてくれたことは、とても助かり、今でもいろいろと支援してくれている。
 また、当社はパッキング部門を自前で持ったが、こうした農家のためになる農業者に共通する大きな枠の事業を是非JAにやって欲しい。

 

生産者のネットワーク作りにも
今回の商談会での提案は?
 ベビーリーフはもちろん、これからの柱にしたいと考えているリーフレタス、それとパクチーを中心に紹介する。当社はいま、生産者との連携強化をすすめているので、ネットワーク作りの場としても活用したい。

 

一番の目的は農業者の育成
これからの目標は?
 HATAKEカンパニーの一番の目的は、農業者の育成だと考えている。農業をやりたい人たちが集まっているので、それぞれが独立して農業経営者になってもらいたい。自分が農業を20年間やってきて、生産者を支援する体制がもう少しあればいいと感じていた。追肥、物流、これからは加工だと思っているが、生産者は畑で野菜と向き合い、一生懸命に良いものを作ることに専念し、当社はそれを買い取って販売を受け持ち、経営が成り立つように支援する。この機能で農業者がもっと増えてもらえば良いと思っている。


 

〈本号のおもな内容〉

■このひと 農業法人が期待するJAグループ商談会
 (株)HATAKEカンパニー 代表取締役社長 木村誠 氏

■第13回JAグループ国産農畜産物商談会 3月12~13日開催へ

■JA営農指導実践全国大会

■政党農業担当議員 2019年度農政を展望する
 自由民主党 農林部会長 野村哲郎 氏

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