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NECとカゴメがAIを活用した加工用トマトの営農支援事業を開始

2020年4月3日

 NECとカゴメは共同で4月から、主に欧州のトマト一次原料加工メーカーにむけて、AIを活用した営農支援事業を開始する。それに伴い両社は戦略的パートナーシップ契約を締結した。

 この営農支援事業は、NECの農業ICTプラットフォームCropScope(クロップスコープ)を使い、センサーや衛星写真によりトマトの生育状況や土壌の状態を可視化するサービスとAIを活用した営農アドバイスサービスを販売するもの。熟練栽培者のノウハウを習得したAIが、水や肥料の最適な量と投入時期を指示してくれるので、導入した農家にとって栽培の巧拙にかかわらず、収穫量の安定化と栽培コストの低減を実現できるとともに、地球環境に優しい持続可能な農業を実践できるという。

 トマト一次加工品メーカーは、このサービスを活用することで、自社圃場や契約農家の圃場におけるトマトの生育状況を網羅的に把握することができるため、客観的なデータに基づいた全体最適な収穫調整が可能となり、生産性の向上が図ることができるとしている。加工用トマトの生産は、新興国を中心とした人口増加や経済成長に伴い今後も拡大が見込まれるが、持続可能なトマトの栽培には、生産者の減少や環境負荷低減への対応など様々な課題に取り組む必要がある。NECとカゴメは2015年から営農アドバイスの検証を開始し、2019年までにポルトガル、オーストラリア、アメリカなど様々な地域で実証に取り組んできた。2019年にポルトガルの圃場で行ったAI営農実証試験では、窒素肥料は一般平均量の約マイナス20%の投入量で、ポルトガル全農家の平均収量の約1・3倍となる、ヘクタール当たり127tの収穫量となり、熟練栽培者の栽培とほぼ同等の結果となった。同サービスの事業化の目処がたったことから、この4月にカゴメ社内に「スマートアグリ事業部」を新設、欧州の顧客にむけて事業を展開する。将来的には日本市場での実用化も視野に入れており、2020年は国内のいくつかの産地で本事業展開の検証を実施する予定。両社からのコメントは以下の通り。

 カゴメ・中田健吾スマートアグリ事業部長「当社は、グローバルでの加工用トマトの栽培において、環境に優しく収益性の高い営農の実現を目指して、2015年からNECと共同でビッグデータを活用した営農支援技術を開発してきた。カゴメの営農ノウハウとNECのAI技術を掛け合わせることで、サステイナブルな農業を実現する」

 NEC・北瀬聖光コーポレート事業開発本部長「NECはカゴメと戦略的パートナーシップ契約を締結し、加工用トマト市場向けに共同でAIを活用した営農支援事業を共同で開始できることを光栄に思う。NECは農業のデジタル化を加速することで、地球規模で広がる気候変動や食の安全をめぐる社会課題に対し、柔軟に対応するサステイナブルな農業を実現する」

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