JA共済連は、農作業事故の未然防止を目的に、当事者の視点から農作業中の事故を疑似体験できる「農作業事故体験VR」を開発した。農作業事故に特化したVR(バーチャル・リアリティ)映像は国内初で、農研機構が監修した。
専用のヘッドセットを着用することでVR映像を視聴でき、またネットワークに接続することで、複数の受講者が一斉に映像を視聴できる。4月から各地のJAが主催する研修会やイベントでの体験会で活用していく。通常、安全研修を開催する場合、講師の経験や知識が必要になるが、VR映像によって農業者に事故当時者の視点を疑似体験してもらい、リスクの〝自分ごと化〟を促すことで、講師のスキル等に依存しない講習を行うことが可能となった。
また、指定のアプリケーションとVR映像をスマートフォンにダウンロードし、簡易VRグラスを使用することで、簡便にVR体験ができるため、各JAの共済担当者等が組合員・農業者を訪問した際に活用していく方針。
農水省の報告書によると、毎年約300人が農作業中の事故で亡くなっており、またJA共済連の推測では年間7万件の農作業事故が発生している。このような背景から、農業者が安心して農業を続けることができるように、重大事故につながりやすい農業機械の事故に注目して、①乗用型農機の転倒、②歩行型農機の制御、③さまざまな農機との接触(▼巻き込まれ編=コンバイン、▼挟まれ編=スピードスプレーヤー、▼刃との接触編=刈払機)の3テーマで、5つのVR映像を作成した。これに加え、事故の発生原因や安全対策に係る全3編の「学習動画」をあわせて製作した。
JA共済連では、「『農作業事故の未然防止』と『保障提供』を車の両輪と位置付け、今後も農業者のリスク軽減・回避につながる活動に取り組んでいく」とコメントしている。