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データ駆動型農業の地域実装に向けた協働プロジェクトを開始

2020年2月22日

NTT東、NTTアグリテクノロジー、農研機構が連携協定を締結

 NTT東日本、NTTアグリテクノロジー、国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構)は19日、「農業の生産性向上や生産者の所得向上を目的に、データ駆動型農業の地域実装を協力して推進するために連携協定を締結した」と発表した。

 19日に都内で行われた記者発表会では、久間和生農研機構理事長、澁谷直樹NTT東日本代表取締役副社長、酒井大雅NTTアグリテクノロジー代表取締役社長が出席した。

 酒井NTTアグリテクノロジー社長が「3社は、農研機構が保有する農産物栽培マニュアルをデジタル化してクラウドに格納し、圃場にあるIoTセンシング機器で取得する環境データと自動的に連動する仕組みを日本で初めて実現する」「これにより農業生産者がIoT等の技術を手軽に活用し、省力化や失敗のない栽培などにつなげることで、農業が地域産業として維持・成長することをめざす」「対象作物は栽培マニュアルデジタル化のニーズが高いシャインマスカットを選定した。岩手・群馬・山梨・長野各県の公設農業試験研究機関と地元農家の協力を得て計12圃場で今年3月よりフィージビリティスタディを開始する」と説明した。

 記者会見の際には、この取組みの協力農家の一人である本澤農園の本澤政幸氏(長野県須坂市)と中継を結び農家の声が紹介された。本澤氏は「自らの経験がデジタル化され農業経営が効率化されれば、失敗の少ない農業が出来、高収益化につながる」と期待の声を寄せた。

 今後の展開として、①農研機構は「ふじ(りんご)」「幸水(なし)」など約100種類におよぶ育種を行い、栽培ノウハウを保有していることから、生産者や地域の要望等を踏まえ、農産物の種類やエリアの拡大を検討する。②気象データ等のパブリックデータをデジタル化した栽培マニュアルに反映させブラッシュアップを図る、③APIでの展開を検討し、様々な企業と協力してデータ駆動型農業の実装を推進、④収集したデータを農産物収量予測や病害虫診断等、その他分野にも活用していく。3社は生産者や地域のニーズや要望を踏まえて今後も取り組みの拡大を図っていく。

【データ駆動型農業の実践】
 日本では少子高齢化により農業従事者が減少する中、担い手農家の負担増加や遊休農地拡大等の課題に対処すべく、省力化や生産性向上を実現するスマート農業への関心が高まっている。 また、政府は経済発展と社会的課題の解決を両立する「Society5.0」の実現に向け、AIやIoTを活用した「データ駆動型社会」を提唱している。農業分野においても「2025年までに農家の担い手のほぼすべてがデータを活用した農業を実践」することを目標に掲げているが、一方で「データを活用した農業の実践」に向けては、生産者や地域の利益につながる仕組みが求められている。

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