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〈蔦谷栄一の異見私見〉映画「ワーカーズ 被災地に起つ」の自主上映の輪を広げよう

2019年11月12日

 あなたは映画「ワーカーズ 被災地に起つ」について小耳にはさんだことはないだろうか。これは日本労働者協同組合連合会、通称ワーカーズコープが、東日本大震災で甚大な被害を受けた東北を舞台に、復興に向けて地域で協働しながら奮闘する人々の姿を追ったドキュメンタリーで、厚生労働省の推薦映画にもなっている。昨年10月に東京のポレポレ東中野で劇場公開されたのを皮切りに、全国各地で自主上映の運動が展開されつつある。
 その流れに呼応して、この10月17日、小金井市にある宮地楽器大ホールでその上映会が開催された。これは翌18日に行われた川崎平右衛門研究会の前夜祭的位置づけも兼ねて上映されたもので、川崎平右衛門顕彰会・研究会とワーカーズコープとの共催による。蛇足にはなるが、川崎平右衛門は武蔵野新田開発を成功に導いた一番の功労者である。その後、美濃三川の治水工事、石見銀山の復興にもあたり、いずれもそこで働く者たちの協同の力を引き出すことによって成功させた。二宮尊徳よりもほぼ100年前に、偉大なる功績を上げながらも知る人は少ない。顕彰会・研究会は、平右衛門を世に広く知らしめるとともに、協同についての理解促進と協同活動の活性化をめざして、3年前に立ち上げたものである。
 映画は16年2月から17年12月の22カ月にわたって、被災者たちがワーカーズコープに加わって、被災地での仕事おこし、まちづくりに取り組む活動を丹念に追いかける。岩手県大槌町での地域共生ホームを開所しての、通所介護や学童保育、お茶っこサロン、菓子工房の展開。宮城県気仙沼市での共生型福祉施設を開所しての、生活困窮者自立相談支援事業、通所介護、デイサービス等の展開。宮城県亘理町での直売所を開所しての、地元農海産物の販売、弁当製造、食堂等の展開。宮城県登米市での廃園した幼稚園を活用しての通所介護、障害者就労支援事業、林業や農カフェ等の展開。いずれも被災地での「ひとり一人の願いと困った」から始まった仕事おこしである。お年寄りや放課後の子どもたちの居場所づくりや、誰でも集える町の拠点としての産直づくりを、「自分らしく生きていく場」「障害のある人や失業者が自信をもって働く場」とし、「目の前の『困った』をどうにかしようと、ともに動くなかで、いつしか支える側・支えられる側という枠は消え、そのつながり・かかわりによるコミュニティが育まれていく」姿が描かれる。
 森庸行監督は、震災復興への取組みをつうじて、自分たちの生きている時代を見つめ直し、「震災後を生きる」ために、協同労働によって「一人ひとりが文字通り基本的人権を持った人間として働き、生きていく」ことを訴える。「一人にしない、させない」「作っちゃおうよ」をはじめとする苦闘する中で紡ぎ出された珠玉のような言葉がいつまでも心に響く。
 協同労働法の成立も間近だとされる。労働者、経営者、出資者を一体化したものが協同労働である。情勢は農協運動に協同労働を協同組合内協同として“接ぎ木”していくことを求めている。農協が各地で組合員を巻き込んで自主上映していくことを強くおすすめしたい。
(農的社会デザイン研究所代表)

日本農民新聞 2019年11月5日号掲載

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