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「ラウンドアップ問題を考える」テーマに緊急セミナー

2019年10月24日

 ㈱農業技術通信社(昆吉則社長)と食品安全情報ネットワークは21日、都内で「緊急セミナー『ラウンドアップ問題』を考える」を開催し、農業生産者や農薬業界、マスコミ関係者など約120名が参集した。米国カリフォルニア州で、ガンとの関連性をめぐる訴訟が続き、国内でも風評被害が懸念されつつある除草剤「ラウンドアップ(有効成分グリホサート)」について、農薬の専門家や農業経営者を招いて科学的な視点と農業現場の観点からラウンドアップ問題の真相に迫った。

 セミナーのテーマは「農薬の安全性とラウンドアップの風評被害―科学を無視した世界規模の風評発生メカニズムを解く」。一般財団法人残留農薬研究所の青山博昭業務執行理事・毒性部長が「農薬の安全性はどのように確かめられているか」と題して、農薬登録に必要な膨大な安全性試験の詳細を、発ガン性を中心に解説。農薬は適正に使用される限り、安全性に問題はないと結論した。

 続いて、東京大学名誉教授、公益財団法人食の安全・安心財団の唐木英明理事長が「科学を無視した世界規模の風評発生メカニズムを解く」をテーマに講演。唐木氏は反遺伝子組換え農作物運動に巻き込まれる形で起きたグリホサートの安全性懸念について、その科学的裏付けとされているセラリーニ論文(2012年、ラウンドアップ耐性トウモロコシとラウンドアップにより、ラットの乳ガンが増加と発表。後、論文撤回)の科学的な誤りを明確に指摘した。

 また2015年に国際がん研究機関(IARC)がグリホサートをグループ2A(おそらく発がん性がある:赤肉、紫外線、熱い飲み物など82種)に分類したことの問題点に触れるとともに、これを契機に訴訟希望者を募集して始まった米国における裁判の経過と訴訟社会の実態を詳述。グリホサートについてはわが国の食品安全委員会をはじめ、Efsa(欧州食品安全機関)、FAO(国連食糧農業機関)、WHO(世界保健機関)、EPA(米国環境保護庁)など世界の規制機関がリスク評価をした上で安全性を認めている事実を踏まえ、風評被害は科学的な事実と反する、戦略的な多量の情報発信によるイメージ作りと世論作りによって生み出されると述べた。

 パネルディスカッションは食生活ジャーナリストの会の小島正美代表をコーディネーターに進行。講演者に加え、青森県弘前市の「あっぷるりんご園」の水木たける代表と農業ジャーナリストの浅川芳裕氏が登壇した。水木氏は、農薬を使用しないとアレルゲン物質が増えるという研究成果などを例にあげ、科学的かつ正しい情報の発信をマスコミに強く求めた。また、浅川氏は、公判記録を示しながら、米国の「訴訟ビジネスとしてのラウンドアップ裁判」の舞台裏を明らかにした。ネット社会では氾濫する情報・コンテンツの真偽をどう担保するのかが喫緊の課題となっている。作られたイメージや世論に惑わされることなく、「自らの頭で理解し、判断する」(唐木氏)ための教育や社会の構築が求められる。

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