労働者協同組合は、「働く人がみんなで出資し、一人一人の意見を反映して運営を行い、よい仕事や地域づくりを目指してともに働く、協同労働の協同組合」であり、ワーカーズコープの通称で随分と知られるようになってきた。戦後の失業対策事業を皮切りに事業の展開を重ね、2020年12月4日には労働者協同組合法が成立し、法的にも協同組合としての位置づけを獲得して現在に至っている。組合の設立は3人以上の発起人により、届け出だけで設立が可能だ。本法第一条の目的に明記されているように、「地域における多様な需要に応じた事業が行われることを促進し、もって持続可能で活力ある地域社会の実現に資することを目的」としており、時代の流れに対応した、市民レベルでの小規模かつ地域の実情に対応した協同組合として、弾力的な活動が期待されている。
長らくワーカーズコープを牽引し昨年亡くなられた永戸祐三さん(元労働者協同組合連合会理事長)は、日本の現状を憂い、特に農業をはじめとする第一産業に危機感を強くしており、「10年先、第一次産業はワーカーズコープの仕事の柱の一つ」にしていかなければならない、と協同の力による第一次産業の復興・再生の必要性を力説していた。
前置きが長くなったが、ワーカーズコープグループのシンクタンクである(一社)協同組合総合研究所が発行する機関誌「協同の発見」の2026年6・7月号が届いた。今回特集のテーマは「持続可能な地域づくり1―コモンズとしての食と農」で、食と農、すなわち「今こそ、私たちの生命(いのち)を支える「食」を商品として市場に委ねず、「農」を人々のつながりによって生産し分かち合う、「コモンズ」(みんなのもの)へと転換する思想と実践が求められている」としている。すなわち崖っぷちにある日本農業を効率化と大規模化で乗り越えようとする改正食料・農業・農村基本法では食料自給率の向上は困難であり、「コモンズ」のレベル、換言すれば市民・消費者の農への参画をベースとした農政の抜本的見直しとその実践が不可欠だ、を基本スタンスとする。
この思いを土台に、大きく①協同労働による小農・森林ネットワークの実践、②新たな労働者協同組合、③関連論考、の三つに分けて、多数の論文やレポートが並ぶ。①では、FEC自給圏構想の下で展開してきたワーカーズコープ自らによる「小農・森林ワーカーズプロジェクト」のスタート以降の活動展開の報告と今後の課題取りまとめ、そして各地域でのプロジェクトの実践報告、②では労働者協同組合法成立以降に設立された、新たな労働者協同組合の実践報告と課題、そして③では幾人もの気鋭の学者・研究者が論文・レポートを寄せており、なかなかの充実ぶり。この号だけで200頁近い大冊であり、読み応え十分であるのは勿論であるが、多様な農業・一次産業、多様な担い手が必要とされる時代に、「コモンズ」をベースにした実践も含めて、重要で貴重な問題提起がなされている。そしてワーカースコープからこうした農業論、担い手論が出されたことに拍手を送りたい。この特集は既存の協同組合陣営に対する問題提起でもあり、連携の呼びかけであることでもあることを、しっかりと肝に銘じて読まれることをおすすめしたい。
(農的社会デザイン研究所代表)
日本農民新聞 2026年9月5日号掲載



