学校給食や施設内食堂の事業を全国展開していた「ホーユー」(本社・広島市)が今月初めに営業を停止し、22都府県の百数十施設(学校以外の事業所も含む)に影響が広がった。「食材費や人件費が高騰したが、価格転嫁が難しかった」と会社側は説明し、裁判所に自己破産を申請する方向だという。コロナ禍による受注減や同業他社との価格競争も背景らしい。
帝国データバンクが今月8日に発表した調査結果によると、昨年度の利益動向が判明した全国の給食業者374社中127社が赤字だった。前年度より減益になったケースを含め、全体の6割超で業績が悪化していた。
ホーユーの受注先は学校給食法が適用されない高校などが中心だったので、これをもって全般的な「給食危機」を語るのは早計かも知れない。小中学校など義務教育の場合、食材費は保護者が負担すると同法で定めている。つまり、食材費の高騰分は給食費に転嫁するのが原則だ。
しかし、子育て世帯を直撃する給食費アップに悩む市区町村も多い。今年2月10日付「食品産業新聞」(ウェブ版)によると、何らかの形で保護者の負担軽減(予定を含む)を図る自治体は昨年7月末時点で8割以上に上る。
評価すべき動きだが、自治体の対応の違いが地域間格差を広げないかが心配だ。同じ記事には「22年から公立小中学校の給食費完全無償化を決めた主な自治体」として青森市、群馬県太田市、東京都葛飾区、千葉県市川市、大阪府高槻市の5市区が挙げられている。
青森市以外はすべて首都圏と近畿圏だ。教育や子育て支援に取り組む姿勢の違いもあるが、やはり財政に余裕のない自治体は、なかなか思い切った対策を取れないだろう。
給食を脅かす要素は食材費だけではない。調理員の人件費は自治体側の負担だが、地方ほど人手不足は深刻だ。マンパワーを確保するための賃上げや待遇改善という課題もある。
7月25日の当欄にも書いたが、やはり義務教育の給食は国が財政上の補てんをし、全国一律で無償化すべきではないか。「義務教育は、これを無償とする」。憲法26条にこううたわれていることを強調しておきたい。
(農中総研・客員研究員)
日本農民新聞 2023年9月25日号掲載