労働者協同組合法は2020年12月に成立したが、その施行をこの10月1日に控える。労働者協同組合(以下「ワーカーズコープ」)連合会のシンクタンクである協同総合研究所によれば、労働者協同組合法の成立にともなって、ワーカーズコープの設立・活用について、現場から400を超える相談が舞い込んでいるという。福祉、医療、住まい・宿泊・暮らし、学び(教育・学習)、文化・芸術等、多様な分野からの相談がある中に、食・農・環境についての相談も多く、マルシェ、共同売店、子ども食堂、カフェ等とともに、有機農業、里山再生、農福連携、さらには竹林整備、都市緑化等についての相談が寄せられている。
この労働者協同組合法の成立については、昨年10月に決議されたJA全国大会の決議の中で、「SDGsの理念が明文化された法律」であるとともに、「42年ぶりの協同組合に関する法律の成立という意味で画期的な意義を持」つものであると評価・位置づけされている。これを踏まえて、「組合員の協同労働で運営される多様な自主組織について、労働者協同組合と連携し、そのノウハウを活用した地域課題の解決や組織活動の活性化に向けて検討・取り組みをはか」ることとされている。
今、このJA大会決議で明示された課題への具体的な取組み展開が求められているが、その〝先駆け〟とすべく、6月の13、14日に、JA上伊那本所に、JA上伊那の営農と企画総務担当、全中・営農担い手対策部、ワーカーズコープ関係のセンター事業団・協同総研・労協ながの等が一堂に会して、労働者協同組合法についての勉強会とともに、集落営農の労協法人化等について協議・意見交換を行った。大きくは労協という法人形態を選択するメリット創出の課題が明らかにされる一方で、農業経営というよりは地域課題の解決にとって労協という法人形態に優位性があることを相互に確認することができた。
またワーカーズコープグループの日本社会連帯機構が事務局となって本年の2月3日には都市農業研究会が立ち上げられ、本研究会の事業のいっかんとして、JA東京みらいの協力も得て、この9月から西東京市で「農あるまちづくり講座」の開始が予定されている。一般市民を対象に、6カ月にわたって月2回、農についての座学・体験、農事や食文化について学びながら、まちづくりを目指し、講座修了生による〝協同農園〟づくりによる農業参画、援農組織づくり等を計画している。これに先立って、6月の23日には都市農業研究会の主要メンバーがJAはだのを訪問し、宮永組合長から都市農業や報徳思想に基づく協同活動の取組等について講義いただくとともに、体験農園の現場を見学し交流してきた。
JAも担い手の確保、准組合員の理解・支持の獲得、さらには弱体化する地域コミュニティの活性化等課題は多い。「働く人が自ら出資し、運営に携わる『協同労働』という新しい働き方」をJAも積極的に活用し、またワーカーズコープとの連携をはかることによって、JA自己改革のさらなる前進が加速していくことを熱望している。
(農的社会デザイン研究所代表)
日本農民新聞 2022年7月5日号掲載