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〈蔦谷栄一の異見私見〉JAグループ京都の准組合員問題対策

2019年4月5日

 先ごろ、ある新聞記事に思わず目が釘付けとなってしまった。1面のトップ記事ではなく、少し後ろの5面だったかと思うが、京都府内のJAが「正・准の組合員」区分をなくし、すべて「組合員」の呼称に統一するために組合員資格の見直しを進めているとの記事である(3月20日付日本農業新聞)。すでにこの3月までに府内4JAが定款変更のための臨時総代会を開いてこれを可決しているという。この先陣を切ったのがJA京都で、5万人を超える組合員宅を個別に訪問し、組合員の資格確認調査を進めており、「農業経営や農業従事者、用水路や溝の清掃、草刈り、農道の整備などの農業関連作業、市民農園・家庭菜園などでの農産物の栽培、農業塾などへの参加など、農業に関わる多岐の活動を点数化し、議決権のある組合員と、そうでない組合員との区分を進めている」とされる。
 あらためて述べるまでもないが、2016年4月の農協法改正にあたっての論議で最大の争点になったのが准組合員への規制導入の問題である。結局は法施行から5年間、正・准組合員の事業の利用状況や、農家の所得増に向けた改革の実施状況についての調査を行った上で「検討を加えて、結論を得る」こととされた。これにともなってさまざまな検討がすすめられているが、総じて准組合員のJAへの意思反映や運営参画促進を中心にしたものがほとんどを占めているように受け止められる。
 これに対して京都の動きで驚かされるのが、正・准の組合員区分自体をなくしてしまうという斬新な発想による整理であり、しかも今の時点で対策を打ち出すというタイミングの早さである。あわせて注目しておきたいのが、すでにこの1月時点でJAグループ京都は京都府内農畜産物販売促進協議会を設立しており、これへの加入促進を併行して進めているということである。
 筆者の勝手な理解となるが、ここで軸として置かれているのは、市民・消費者の農業参画をも含めた担い手の多様化と、消費者との連携強化による地産地消の推進ではないか。すなわち市民農園や家庭菜園、また援農や農作業等によって消費者の生産への参画を促し、これによって必要となる農産物販売の受け皿を地産地消によって拡大・確保していくことによって、准組合員問題の根本的解決を図ろうとしているように理解される。キーワードとなるのが“国民皆農”と“地産地消”であり、准組合員問題の解決を、地域農業の活路を切り開いての日本農業の生き残り策と一体化させたところにその妙味はある。
 京都の取組みの是非については、さまざまな見方・論議があってしかるべきである。しかしながら先にJA全国大会は開催されたが、今回はこれに先立って多くの県域で既に大会決議がなされていることが象徴するように、全国一律、あるいは全中の仕切りがなくては動かない、という時代ではなくなりつつある。その意味でも准組合員問題において、独自策を打ち出したJAグループ京都の決断と行動力には深く敬意を表しておきたいと思う。
(農的社会デザイン研究所代表)

日本農民新聞 2019年4月5日号掲載

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