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施設イチゴにおけるIPM防除について研修会を実施=JA全農

2021年8月24日

 JA全農は18日、イチゴIPM防除研修会をオンラインで開催した。イチゴ生産者やJA・JAグループの関係者のほか、関係メーカーなど約200名が参加した。今回はイチゴ害虫のハダニに焦点を当て、バンカーシート()の効果的な使い方を中心に、3名の講師がIPM(総合的病害虫管理)防除技術について解説した。

 研修では、農研機構東北農業研究センター野菜新作型グループの下田武志グループ長補佐が「天敵利用を核としたハダニIPM技術」のテーマで、施設イチゴにおけるハダニの特徴と、天敵のカブリダニ、バンカーシートについて説明した。JA全農耕種資材部農薬課の中島哲男氏は「ハダニピークのないイチゴ栽培を目指して」のテーマで、全農で実施しているいちごハダニゼロプロジェクトの成果報告に加え、化学農薬防除とミヤコバンカー設置を組み合わせたハダニ防除推奨プログラムを紹介した。また、JA全農営農技術センター農薬研究室の宮崎仁実氏が「イチゴ栽培における天敵資材の上手な使い方」を紹介した。天敵の成果を最大限に発揮するためのミヤコバンカーの設置方法として、ミヤコカブリダニやスワルスキーカブリダニに対する化学農薬の影響の強さを説明し、天敵放飼の前に薬剤の影響が出ないようにすることが重要だと話し、栽培後半に問題となるアザミウマの特徴と防除についても解説した。

 JA全農耕種総合対策部の宗和弘部長は開会挨拶で「施設イチゴは、病害虫防除が絶えず、防除の年間回数の多い作物だ。加えて薬剤の耐性菌や抵抗性害虫の発生事例も多い。それらの対策として化学農薬に加え天敵や耕種的防除を組み合わせて行う総合的病害虫管理、IPM防除がとても重要になる」「(農水省の)『みどりの食料システム戦略』では特に環境保全型農業の推進が謳われており、今後農業現場にはさらなる対応が求められると考えている。これに応えるためにも、IPMが中心的技術となることは間違いない」と話した。

*バンカーシート=農研機構・中央農業研究センターを中心とした農食事業で確立された実用化技術で、天敵パック製剤を耐水紙で包んだもの。気温・湿度の環境変化を和らげ、農薬や散水で天敵パックが濡れることを防ぎ、天敵が生存しやすい環境を整える。ハダニ類を捕食するミヤコカブリダニパック製剤を用いた「ミヤコバンカー」とコナジラミ類、アザミウマ類を捕食するスワルスキーカブリダニ製剤を用いた「スワルバンカー」があり、全農ではバンカーシートを活用したIPMの普及拡大を図っている。

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