県立広島大学の生物資源科学部(広島市庄原市)は、発光ダイオード(LED)と培養液を活用し、主に葉物類を屋内で育てる「人工光植物工場」をキャンパス内にオープンさせた。
大学のフィールド科学教育研究センターで牛舎として使われていた建物(約228㎡)を改装して植物工場としたもので、4月14日に開所式を行い、5月6日から本格稼働した。屋内には4段の棚に各6個の水耕棚を設置、サイズは各々、長さ6・4m、幅1m、高さが2・2m。LED照明で日照時間を調整、室内の温度や湿度、二酸化炭素濃度などを一定の条件に保ち、培養液を循環させて水素イオン濃度(pH)や養分量を示す電気伝導度(EC)を制御、生育をモニターで監視できる仕組みを整えた。葉物類ではベビーリーフが約20日、レタスが約40日で出荷可能で、1年間13万株の生産能力を有する。
庄原キャンパスのある備北地域は農地が点在する中山間地。年平均気温が仙台市とほぼ同じ寒冷地で、積雪のある冬季でも効率よく農作物を生産することが課題とされていた。庄原キャンパスでは2019年から水耕栽培を始め、これまでにも学生たちの実習の一環として葉物類やメロンなどを試験的に生産してきた。今後は植物工場を活用し、実践教育の機会として生産効率の改善や、学外での販売戦略の構築などを体系的に学ぶことなどにも活用する方針。
甲村浩之教授は「中山間地は農地の条件にも恵まれず、冬場の農業が厳しい。農業の6次産業化や地域課題解決も見据えて、生産コストの削減や販路の開拓に取り組みたい」とコメントしている。