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〈蔦谷栄一の異見私見〉協同活動の原点を体現する「やねだん」の取組

2021年2月5日

 必ずしも発行が定期化はされていないようであるが、元鹿児島県信連常務の八幡正則さんから、『怠れば廃る塾』塾報が発行の都度、メールに添付して送られてくる。塾報は二宮尊徳の言葉を解き明かしたもので、この1月15日に届いた塾報は第200号とある。八幡さんは二宮尊徳の研究家でもあり、鹿児島大学で長らく講義を重ねてもこられたが、仮に毎月塾報を発行したとしても16~17年を要することになる。その研鑽のご努力と尊徳翁に対する熱い思いには敬服するばかりで、200号の発行を心からお祝い申し上げたい。

 八幡さん、そして二宮尊徳については、筆者の理解がもう少し深まるまで取り上げることはかなわないが、今回は塾報の送付にあたってのメールで触れておられる「やねだん」の話である。鹿児島県鹿屋市串良町にある柳谷集落のことを、現地では「やねだん」と呼ぶらしい。そのやねだんの地域活動をリードしてきたのが豊重哲郎さんで、八幡さんは豊重さんの郷土愛と集落起しを高く評価し、「今尊徳さん」の称号を与えたいとしている。その豊重さんの活動は、本『地域再生~行政に頼らない「村」おこし~』『日本への遺言~地域再生の神様<豊重哲郎>が起こした奇跡~』で詳細につづられており、教えられることばかりだ。

 やねだんは、110世帯253人(2019年現在)の中山間地域にある集落で、鹿児島市の中心部から車で2時間余りのところにある。豊重さんはこのやねだんで1996年から20年以上にわたって「自治公民館長」として活動してこられた。『地域再生』にある2004年までの活動記録をそのまま抜き出してみると、1997年:カライモ生産活動、わくわく運動遊園建設、まさかのときの緊急警報装置(介護)、2001年:噴水工事、土着菌製造スタート(借家)、2002年:まさかのときの緊急装置(煙感知器)、土着菌センター建設、お宝歴史館建設、2003年:まさかの時の緊急警報装置(防犯ベル・全戸)、2004年:焼酎やねだん開発、柳谷安全パトロール隊発足、柳谷未来館建設、手打ちそばスタート、と活動は多彩だ。これら活動に要する資金は、住民総出によるサツマイモの栽培・出荷や、このサツマイモを使っての芋焼酎(「やねだん」ブランド)、土着菌、トウガラシ等の加工品を生産・販売しての自主財源が充てられている。

 筆者が強く感銘を受けたところを三つに整理してみると、第一に「行政に頼らず、住民自治で地域を再生」を基本に置き、これを徹底していること。第二に人・物・金の地域資源を“発見”・活用し、地域循環を作り膨らませていること、第三に老若男女それぞれのエネルギーを引き出し、みんなで集落起しに取り組んでいること、となる。豊重さんのものの見方と行動力、これらを総合してのリーダーシップに学ぶところ大である。

 この話の肝心なことは、これら活動が自治公民館という集落レベルでの取組みであることだ。時代は変革を求めているが、まさに地域の基礎をなす集落レベルから変えていくところにこそ可能性は秘められているのではないか。自治、地域循環は協同活動の原点と重なる。

(農的社会デザイン研究所代表)

日本農民新聞 2021年2月5日号掲載

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