生活協同組合コープこうべ 情報・物流推進部 インターネット・デジタル推進統括 浜地研一氏
組合員171万世帯。兵庫県を中心とした活動エリア世帯の約半分が組合員である。宅配事業利用は49万人でコロナ禍で宅配注文が増えネットでの申し込みも急増するなか、スマートフォンアプリの開発に取り組んでいる。
組合員の高齢化が進むなかで、子育てなどに忙しい30代前後の若い女性が、便利に買い物ができる仕組みをめざした。注文忘れをカバーする仕組みやAIを使った献立提案もある。若い人たちがイベントへの参加や地域活動に参加しやすいよう、現場でQRコードをかざすとポイントがもらえる仕組みも開発した。
今日の生協には、若い人がなかなか運営に参加しないという課題がある。このため、オンライン上に書き込まれた商品の口コミを、カタログに掲載したり店舗に掲示したりすることで横のつながりを広めている。
口コミを書いてくれた人にはポイントを付ける機能も開発中である。アプリで世代を越えて交流が始まり職員も含めてつながることが出来ればと思っている。
最近、持続的繁栄や協力を好み利益は加入者で分け合う、〝プラットフォーム協同組合主義〟のような新しい概念が世界に出始め、協同組合が見直される流れが出てきている。
コープこうべは来年設立100周年を迎えるが、出資・利用・運営参加の協同組合3原則のうちの運営参加の部分が希薄化してきている。
そこで、運営参加に興味を引くような、〝ちょっと触ってみたいな〟と思われるような「コープTOUCH」というアプリ機能を設け、強いつながり方ではなく〝ほどよいつながり〟の実現をめざしている。
商品を投票する「投票でTOUCH」コンテンツには、毎週3千~1万5千人が参加しているが、生協のイベントや活動に参加していない人が約7割。そのぶんだけ参加が見込める組合員がいる。また、ZOOMで毎週アプリ開発会議を行なっているが、組合員にもダイレクトに参加してもらい意見を聞いている。
「助け合いTOUCH」は、36年前から行っているコープこうべの「助け合いの会」の仕組みを引き継いでいる。今のインターネットのシェアリングエコノミー的な考え方で行われてきたが、利用する側も助ける側も高齢化してきた。
困った気持ちを表した時に、それを誰かが受け止め地域全体で解決することは必要だ。その困った気持ちを可視化し、デジタルな人もアナログな人も参加できる取組みを考えた。
具体的には、困っている人にカタログを配布。例えばゴミ出し等、センターで援助の依頼を受けるとそれが一覧化され、アプリのプッシュ通知で近所の組合員に届き、可能な人に手を挙げてもらう。実際に助けた人はもちろん、手を挙げただけの人もポイントがもらえるという仕組みで〝参画感〟を出すようにした。
生協の宅配やネットでの注文で培われた信頼関係の流れにのって、商品や活動を並列してデータ化できればと考えている。〝ほんの感謝の気持ち〟〝ありがとう〟を可視化するためにポイントを流通させ、「助けたい」と「助けられたい」をマッチングしながらよりよい地域にしていきたい。100周年を機にこの取組みを深化させることで、生協の新しい形、助け合いのプラットフォームを進めていきたい。