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RPA×OCR活用による営農経済業務改善

2021年2月4日

JA山口県 総合企画部情報システム課担当課長 藤田竜也氏

JA山口県総合企画部情報システム課担当課長 藤田竜也氏 RPAとはパソコン上の業務をロボットに置き換える業務自動化ツール。OCRとは紙に書かれている文字をデータ化する仕組み。JAの様々な事業を抜本的に改革していくには、ITを活用した業務改革で経営基盤を確立・強化することが不可欠である。その中でも営農経済部門での業務改善は緊急性が高い。

 当JAは平成31年に県下12JAが合併し設立したが、合併前の旧JA下関では、営農経済業務の半分近くを占めていた入力作業をOCRに置き換え、集計・加工作業はRPAに置き換えることで作業時間を大幅に削減し、そのぶん組合員に出向く体制をつくった。導入に当たっては、様式を統一し単純作業を集約。対象者を特定した注文書へ切り替えた。これにより入力時間は50~70%削減され、昨年の利用実績の提供が可能になり、顧客満足度が高まった。対象者を特定した様式を配布することで回収チェックが必須となり、結果的に新規獲得へとつながった。全事業にIT化を展開していくため、「RPA×OCR活用プロジェクト」を立ち上げ、ボトムアップ型の業務改革を実施。RPAを使うことが目的とならないよう、業務に応じて最適なソリューションを活用している。提案時には業務単位で仕分けと棚卸を実施。この業務フローの見直しだけでも業務改善につながることが多い。その上で簡素化・定型化できるものは自動化に取組んだ。様式を変えることに組合員から抵抗がでるのでは、との懸念があったが、むしろ「JAが変わってきた」とプラスの意見が多かった。

 「統一様式の予約注文書」「資材購入状況提案書」「部会提案書」など、組合員目線の提案を行えるツールを作成し、ツールを活用した提案活動を展開。業務プロセスの改善による新たな価値が創出された。

 この改善モデルは合併後にJA山口県全体で導入することとなり、まずは2統括本部で実施。1年間検証し、令和2年6月から県全体で実施することとした「営農経済業務改善プロジェクト」を立ち上げ、改善モデルを定着させ業務改善の最大化を目指している。現在、各営農センターで紙ベース中心の業務のデジタル化を行っている。最終的には事務集中センターをつくり、業務の集約をめざす。県全体での実施により、業務手順の県統一化が図られた。様式統一によるOCR×RPA対応で削減効果は48%減。スキャナによる紙のデータ化対応で検索時間は80%減と大幅に改善された。収支改善システムによる回収管理の徹底で回収状況の見える化が図られ、未回収の理由に応じた提案体制を構築できるようになった。データを活用した訪問ツールの活用で、新人職員でも戦略的な活動が可能になった。

 今後は、単純業務の集約をさらに拡張して削減効果の最大化を図り、組合員への提案体制を充実し、組合員が主体となれるJAを目指す。デジタルの力でリアルを強化していきたい。

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